AI導入で4割超が「逆に業務量が増えた」 テスト関連・定型コードから解放された開発者を待つ“新業務”のリアル:短期/複数プロジェクトの同時並行も増加
AI活用エンジニア108人を対象とした実態調査によると、9割近くが業務変化を「ポジティブ」に受容しているという。新たな業務領域が生まれ、エンジニアの役割そのものが変質しつつある実態も明らかになった。
ITエンジニア支援企業のTWOSTONE&Sonsは2026年5月21日、AIツールやAIエージェントを直近6カ月以内に開発業務で使用している開発エンジニア108人を対象とした「AIを活用する開発エンジニアの業務変容に関する実態調査」の結果を発表した。
調査はIDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー」の企画によるインターネット調査として、2026年5月7〜8日に実施された。有効回答は「GitHub Copilot」「Claude」「ChatGPT」といったAIツールまたはAIエージェントを直近6カ月以内に開発業務で使用している開発エンジニア108人。構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているので、合計しても必ずしも100%にはならないとしている。
AI導入で減少した業務、上位はテスト関連や定型コーディング
「AI導入後、開発業務の中で業務時間が減った・なくなったと感じるタスク」(複数回答、n=108)を尋ねたところ、「テスト実行・結果確認」が38.9%が最多、次いで「テストコードの作成」が38.0%、「定型的なコーディング(CRUD《Create、Read、Update、Delete》処理、フォーム実装など)」が38.0%という結果になった。
続いて、約3分の一が「コードレビュー、初期チェック段階」(36.1%)、「ドキュメント・仕様書の作成」(33.3%)、「バグの原因調査・デバッグ」(32.4%)とったタスクを挙げている。
AI導入後、7割以上のエンジニアに“新業務”が発生、その中身は?
「AI導入後、開発業務の中で新たに発生した、または増加した業務はあるかどうか」(n=108)を尋ねたところ、「ある」が72.2%、「ない」が25.9%となった。
新たに発生した業務、「プロンプトの設計・最適化」やコードの品質向上
「新たに発生した、または明らかに増加した業務」(複数回答、n=78)を尋ねたところ、「プロンプトの設計・最適化」が52.6%で最多となり、次いで、「AI生成コードの統合・リファクタリング」(41.0%)、「AI出力(コードやドキュメントなど)のレビュー・品質担保」(38.5%)、「AI生成コードの品質を担保するためのテスト設計・テスト戦略」(37.2%)と、コードの品質向上に関する業務が続いている。
業務変化の最大の影響、53.8%が「求められるスキルの幅が広がった」と回答
「新たに発生・増加した業務によって、業務にどのような変化があったか」(複数回答、n=78)を尋ねたところ、最多が「求められるスキルの幅が広がった」が53.8%で半数を超え、「業務量(タスク数・作業時間)が増えた」が46.2%、「意思決定や判断を求められる場面が増えた」が41.0%と続いた。
エンジニアが実感するプロジェクトの変化、「短期プロジェクトの増加」が約4割に上る
「AI導入後、プロジェクトの進め方にどのような変化があったか」(複数回答、n=108)を尋ねたところ、「短期プロジェクトが増加した」が38.0%、「プロジェクトの開発スピードが向上した」が36.1%、「同時に複数プロジェクトを進めるケースが増加した」が34.3%、「要件定義から開発着手までのリードタイムが短縮した」が25.0%と、効率化による効果が挙がった。
「小規模チーム編成でのプロジェクトが増加した」(33.3%)、「外部人材(フリーランスやSESなど)の活用が増加した」(27.8%)、「専門領域ごとに人材をピンポイントで投入するケースが増加した」(15.7%)といった、人材や組織体制の変化を実感する声も挙がっている。
約9割が業務変化を「ポジティブ」に受容、ネガティブ層は約1割にとどまる
「AI導入による自身の業務変化をどのように捉えているか」(n=108)を尋ねたところ、「非常にポジティブに捉えている」が30.6%、「ややポジティブに捉えている」が56.5%となり、ポジティブ層が合計87.1%に達した。
ポジティブに捉える理由、「単純作業・繰り返し作業からの解放」「生産性の向上」が上位
「ポジティブに捉えている」と回答した94人に「ポジティブに捉えている理由」(複数回答)を尋ねたところ、「単純作業や繰り返し作業から解放されたから」が59.6%で、「開発のスピードが上がり、生産性が向上したから」が54.3%で半数を超えた。次いで「本質的な開発業務に集中できるようになったから」(36.2%)、「自身の専門性やスキルがより生かせるようになったから」(29.8%)、「新しい技術やツールに触れる機会が増え、成長を実感できるから」(28.7%)と自身のスキルアップにつながる理由が続いている。
ネガティブに捉える理由、半数のエンジニアが「従来スキルの価値低下への不安」「新スキル習得が追い付かない」と実感
一方で「ネガティブに捉えている理由」(複数回答、n=12)を尋ねたところ、「新しいスキルの習得が追い付かないと感じるから」が50.0%、「自身の従来スキルの価値が下がるのではないかと不安だから」が50.0%と共に半数で最多となった。次いで「自分の仕事がいずれAIに置き換わるのではないかと感じるから」が41.7%という結果となり、「AIの活用度合いによってチーム内で評価に差が出そうだから」(25.0%)と共に、AIによる自身のスキルや業務の代替を懸念する声が多く上がっている。
「AI出力の確認・修正に想定以上の手間がかかるから」(25.0%)、「AIが生成するコードのセキュリティリスクが心配だから」(16.7%)、「AI出力の正確性や信頼性に不安があるから」(8.3%)といった、AI活用自体への不満やリスクもネガティブに捉える理由として一定数挙がっている。
エンジニアが考えるAI時代の必須スキル
「AI時代において、開発エンジニアに求められるようになるスキル」(上位3つまで回答可。n=108)を尋ねたところ、「AI出力の正確性を評価・検証するスキル」が60.2%となり、「AIツールやAIエージェントを使いこなすスキル」(39.8%)とともに、AI自体への深い理解を追求するスキルが上位に挙がった。
一方で、「上流工程の設計力(要件定義・アーキテクチャ設計など)」(43.5%)が2番目に多くなり、「AIでは代替しにくい領域の深い専門技術力」(26.9%)、「セキュリティ・倫理面のリスク判断力」(25.0%)、「チームマネジメントやプロジェクト推進力」(22.2%)含め、生成AIが広まる以前から重要視されていたスキルが改めて注目されている。
82.5%が、3年後の職種・役割について「変化していると思う」と予測
「3年後、自身の職種や役割はどのように変化していると思うか」を尋ねたところ、「大きく変化していると思う」が30.6%、「ある程度変化していると思う」が51.9%となり、合計82.5%が変化を予測した。
今後の企業競争力を左右する分水嶺
調査結果についてTWOSTONE&Sonsは、AIの導入はエンジニアの作業負荷を軽減する一方で、プロジェクト数の増加と開発スピードの加速をもたらしていると分析している。
AI前提の業務設計、プロンプト設計、AI出力の検証といった新たな業務領域が生まれ、エンジニアの役割そのものを変質させている。従来の「コードを書く人」から「AI出力を評価・統合し、品質を担保する人」へと、求められる能力の重心が移行しつつあるとも指摘。「企業にはAI出力のレビュー体制や品質基準の整備、上流工程を担える人材育成への投資が、今後の競争力を左右する分水嶺(れい)となる」と結論付けている。
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