「小型のAIデータセンター」初期費用は“たった3億円”から――なぜクラウドではなく敷地内にニーズ?:水冷GPUサーバも自社敷地内に設置
生成AIやAIエージェントの活用が本格化してくる中で、AIを動かすための基盤の選択肢も広がりつつある。初期費用3億円から、自社敷地内でGPU搭載のコンピューティング基盤を動かせる選択肢も登場した。どのようなニーズが高まっているのか。
生成AIやAIエージェントの活用が実証実験(PoC)から実業務へと広がれば、その取り組みを支えるコンピューティング基盤が必要になる。「GPU」を利用するインフラをどこでどう確保するかは、AI活用を進める企業がぶつかる課題の一つだ。
そうしたAI向けのコンピューティング基盤について、従来業務システムを動かしてきた一般的なサーバの調達や運用と同じように考えることはできない。求められる演算性能が異なるのはもちろんのこと、膨大な電力消費や、効率的なサーバ冷却も求められる。
選択肢の一つは、クラウドサービスやデータセンター事業者が提供する設備を利用することだ。一方で、AIで扱うデータや用途によっては、自社の管理下にコンピューティング基盤を持つことも選択肢になる。
そうした中、初期費用3億円から、自社敷地内にAI向けのデータセンターを構築できる選択肢も登場した。高性能なGPUを稼働させるために必要な設備をまとめて提供し、オンプレミスでAI基盤を構築できるようにするというものだ。
なぜAIインフラを「自社敷地」に設置? 3億円からの選択肢も
AI向けの小型データセンターを自社敷地内に設置できる選択肢としてこのほど発表されたのが、NTTPCコミュニケーションズ、ゲットワークス、フィックスターズの3社が2026年9月8日に提供を開始したオンプレミスAI基盤「水冷GPUコンテナDC-PKG」だ。
40フィートのコンテナ型データセンターに、水冷GPUサーバや冷却設備、ネットワークおよびセキュリティ機器などを収容する。サーバの性能可視化や統合監視、運用支援も組み合わせ、AI基盤の設計・構築から運用までをまとめて提供する。
クラウド上のGPUを利用する方法もあるが、なぜ自社の敷地にGPU基盤を構築する必要があるのか。3社は、背景として以下のような課題があると指摘する。
- 機密データの保護
- ネットワーク上の制約
- 大容量データを転送する際の通信コスト
- 遠隔地にある設備の運用負荷
想定する用途としては、機密データを外部に持ち出すことなくAIに活用することや、設計データや生産ラインの映像データを活用するなど製造業やフィジカルAIでの活用などが挙げられている。
NVIDIA GPU搭載、納期は最短8カ月から
水冷GPUコンテナDC-PKGは、水冷GPUサーバとコンテナ型データセンター設備、運用支援ソフトウェアがまとめて構成されている。コンテナ型データセンター内部には、水冷GPUを冷却するCDUチラー、空調設備、監視カメラなどを備える。
GPUサーバには、「NVIDIA HGX B300」を搭載した「HPE ProLiant Compute XD685」を含む構成を用意。ファイアウォールやUTM(統合脅威管理)、ネットワークスイッチなども組み合わせている。これらを統合的に監視し、異常の早期発見やGPUリソースの効率的な利用にもつなげるとしている。
参考価格は、GPUサーバ1台を搭載する「スモール構成」で初期料金が3億円から。月額料金は75万円から。納期は最短8カ月となっている。コンテナを設置するための建築・電源工事は含まれず、別途費用がかかるそうだ。
AI向けの「小型データセンター」、国内でも相次ぐ
AI向けのコンピューティング基盤を、コンテナ型やモジュール型のデータセンターとして構築する動きは、NTTPCらに限ったものではない。
インターネットイニシアティブ(IIJ)と河村電器産業は2026年3月17日、電源供給、冷却、ラックが一体化したオンプレミス向けAI基盤として、モジュール型エッジデータセンター「DX edge Cool Cube」の提供を開始。高発熱なGPUサーバを含むAIワークロード向けだという。製造業や研究開発拠点、医療機関など、機密データを外部に出さずにAIで活用する用途の他、低遅延が求められるエッジAIなどを想定する。
NTTドコモビジネスと東京電力パワーグリッドは2026年8月27日、首都圏での需要を見込み、東京23区内で液冷式のコンテナ型データセンターを複数設置できる「コンテナDCパーク」の展開を発表した。こちらは企業が自社敷地内にAI基盤を所有するものではない。だが短期間で構築、拡張できるコンテナ型を採用する点は共通している。従来の建屋型データセンターでは用地確保から建設、稼働までに時間がかかることや、AI処理に伴う電力確保などが課題として挙げられている。
クラウドだけではない、AI基盤の新たな選択肢
AI向けのコンピューティング基盤を確保する方法は、大規模なデータセンターやクラウドサービスだけではなくなりつつある。コンテナ型やモジュール型の設備であれば、用途や規模に応じて必要な場所にAI基盤を配置するという選択ができる。
必要なGPUの性能や導入コストだけでなく、「どこでAIを動かすのか」も重要な検討事項だ。クラウドや既存のデータセンターに加えて、自社の管理下に小規模なAIデータセンターを構築する方法も、今後AI活用を本格化させる企業にとっての選択肢になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「AI=GPU」がもはや昔の常識に 「CPU」に何が起きるのか
生成AIの急速な普及によって、存在感を高めている「GPU」。ではAI時代には、「CPU」の重要性は低下していくのだろうか。そうではないとArmは指摘する。
みずほFG、クラウドではなく「オンプレミスGPU」導入 AIエージェント活用も見据えた狙いとは?
みずほFGは、NVIDIAの製品と技術的知見を活用し、金融機関向けAI活用基盤の高度化に向けた検討を始めた。オンプレミスのGPU環境の強化と、AIエージェントを安全に実行・管理する仕組みの検証に取り組む。
キオクシアが「DRAMとSSDの間を埋める」新手法、メモリ不足をどう解消?
AI需要の高まりでメモリ需給が逼迫(ひっぱく)する中、メモリの容量不足やコスト増大の課題にアプローチする手法が注目を集めている。キオクシアが発表した技術も、メインメモリの使用効率を高める効果が期待される。
キオクシアが初の「SSDでも液冷」 GPUだけではないAI時代の“熱問題”
AI処理を担うサーバでは、消費電力の増大と同時により効率的に熱を取り除く手法が求められている。それはGPUのような大きな熱源だけではなく、周辺部品にも及び始めている。それを前提にした新たなSSDを、キオクシアが発表した。

