クラウドを使わず「生成AIを行政に」――宮崎県、ローカルLLM×RAGをどう実現?:「通常業務のデータを外部に漏らさない」が要件
宮崎県はオンプレミス型の生成AI基盤を導入し、通常業務にローカルLLMを活用する取り組みを進めている。同県は、生成AI活用を進める上での障壁となる機密データの流出リスクにどう向き合っているのか。
業務における生成AI活用が本格的に広がりつつある中で、機密情報や個人情報を扱う組織では、データの外部流出リスクが、導入障壁の一つになっている。生成AIの利便性を享受しながらも、データを組織内部にとどめるためのプライベートな環境構築への関心が高まりつつある。
そうした中で日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2026年4月23日、宮崎県が庁内専用のオンプレミス型生成AI基盤を構築し、行政業務での活用を開始したと発表した。インフラにはAI処理向けのNVIDIA製アクセラレーターを搭載したサーバを導入。ローカルLLM(大規模言語モデル)が組織内のデータを参照し、通常業務に生かす取り組みを進めている。
「データを外部に出さない」生成AI環境をどう実現したのか
宮崎県のプライベート生成AI基盤は、Sparticleが提供するプライベート版「GBase」を活用したローカルLLM環境として構築されている。NVIDIAの高性能アクセラレーターを搭載したサーバ「HPE ProLiant DL385 Gen11」を基盤にしている。GBaseは、LLMとRAG(検索拡張生成)機能を組み合わせ、組織内に蓄積された文書やナレッジを参照しながら回答を生成できる生成AIプラットフォームだ。
職員がチャットボットを通じてローカルLLMに問い合わせを行うと、ローカルLLMはRAGとエージェントの仕組みを活用して、問い合わせに関連する公式文書や業務マニュアルなどを都度参照し、それらの内容を基に回答を生成する。
この一連の仕組みにより、AIが独自に判断や学習を行うことなく、根拠となる行政情報に基づいた回答を提供できる設計としている。個人を特定できる情報はAIの処理対象とならないように管理しているという。
クラウド型ではなくオンプレミス型を採用
宮崎県は独自のデジタル化推進計画に基づき、DX(デジタルトランスフォーメーション)による行政サービスの高度化や業務効率化を進めている。その一方で、自治体業務では極めて機密性の高い情報を日常的に扱うため、外部へのデータ流出を伴わない設計と厳格な情報管理が求められる。データ流出のリスクを考慮した結果、同県ではクラウド型ではなくオンプレミス型の生成AI基盤を独自に構築することにした。
同県ではこうした仕組みを、給与、旅費、会計事務等の業務に活用する。仕組みの構築に当たっては、安全性を検証しながら、活用範囲を段階的に拡大する方針を取っている。
宮崎県の中西博仁氏(総合政策部 デジタル推進課 デジタル戦略推進担当 主幹)は、「書類点数が多く判断難度の高い申請内容のチェック業務において、担当者の専門的判断を下支えし、対応の迅速化と負荷軽減に寄与する」取り組みだとしている。
今後は医師からの問い合わせを支援する「AI薬剤師」や、災害対策本部における問い合わせ対応の自動化に向けた「災害対応職員向け災害対応AIチャットボット」のシステム拡張を進めるという。
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