散在する“29万ファイル”をAmazon S3に集約、「AIに聞くだけ」で検索可能に――AWSはどう実現?:航空データを想定して実装
社内のさまざまなシステムに散在するデータを、AIで横断的に検索、分析できるようにするにはどうすればいいのか。AWSが航空業界を題材に、約29万ファイルを使ったレファレンス実装を公開した。
複数のシステムに散在するデータを、AIで横断的に利用できるようにするには、どのような仕組みが必要なのか。
Amazon Web Services(AWS)は2026年8月14日、航空業界を題材にしたオペレーション基盤のレファレンス実装のデモを公開した。オブジェクトストレージ「Amazon S3」(Amazon Simple Storage Service)を中心としたデータレイクに約29万ファイルを集約し、自然言語でデータを横断的に検索、分析できる仕組みを構築した。
複数システムに散在する29万ファイル、どう横断検索する?
航空業界向けの実装ではあるものの、AWSはこのアーキテクチャパターンを、製造業や物流、医療など、複数の業務システムにまたがるデータをAIで統合検索、分析したい業界にも応用できるとしている。具体的にはどのような仕組みなのか。
航空会社では日々、フライトスケジュール、フライトデータ、整備マニュアル、安全報告書、作業員の音声記録、ケータリング在庫、乗客情報など、膨大なデータが蓄積されている。これらは業務システムごとに個別管理されており、横断的な分析には人手と時間がかかる。
AWSは、航空会社がデータを活用する上で直面する課題として、次の3点を挙げる。
- 情報が複数のシステムに散在していること
- 蓄積したデータを分析や意思決定に生かし切れていないこと
- ベテランの知識が共有されにくいこと
今回のレファレンス実装は、航空データを集約してAIで検索できるデータレイクと、そのデータを実際の業務で利用するツールで構成する。ツールの一例として使われているのが、航空機の到着から次の出発までの地上作業を管理する「ターンアラウンド管理」だ。共通のAI検索基盤を利用することで、ターンアラウンド管理の作業画面から、整備マニュアルや過去のフライトデータなどに自然言語で質問できる。それぞれどのような仕組みなのか。
29万ファイルを集約 「30分以上」の作業を数秒に
データレイクでは、複数のシステムに散在する航空データを集約し、AIで横断検索できるようにした。自然言語で質問すると、AIが関連する情報を検索、統合して回答する。
AWSは、複数のシステムを開いて情報を突き合わせると30分以上かかる作業を、AIへの質問によって数秒で必要な情報を得られるとしている。
カテゴリー別のデータ量、ファイル数、最終更新日を一覧表示するダッシュボードも備え、データの偏りやカバレッジの不足を把握できる。
航空データは構造が多種多様だ。テキストだけでなく、航路データやフライトレコーダー、音声なども扱える。例えば、航路は地図上に表示し、作業員の音声記録は再生に加えてAIによる文字起こしや要約を確認できる。
ターンアラウンド管理 45〜90分の地上作業を可視化する
データレイク基盤の上に構築したツールの一例であるターンアラウンド管理では、清掃、給油、手荷物の積み降ろし、機体点検など、航空機の到着から次の出発までの45〜90分に実施する作業の進捗(しんちょく)を一元管理する。
管理画面では、運航便ごとの作業状況や機材情報、出発・到着時刻などを確認できる。作業員が無線機やスマートフォンから進捗を報告する他、無線通信の内容からAIが作業状況を判定し、管理画面に反映することもできる。蓄積したデータから、遅延しやすい作業や空港ごとのボトルネックを分析することも可能だ。
AIによる横断検索を実現した構成
38GB、約29万ファイルの航空データはAmazon S3に集約する。AIによる検索基盤を構築する「Amazon Bedrock ナレッジベース」を使って、これらのデータをAIが意味に基づいて検索できるようにベクトル化し、検索用のインデックスを作成する。なお、使用した航空データはAI開発ツール「Kiro」で生成した架空のデモデータとなっている。
AI検索基盤にアクセスする共通の窓口として「Amazon Bedrock AgentCore Gateway」を配置し、ターンアラウンド管理ツールなどの各業務アプリケーションから、同じAI検索基盤を利用できるようにした。
Amazon S3上のデータが追加、更新、削除された場合は、その変更を検知し、検索用のインデックスにも自動で反映する。
この他、音声データの文字起こしには「Amazon Transcribe」、地図や航路の表示には「Amazon Location Service」を利用する。AIによる分析や要約には、「Amazon Bedrock」上の「Claude Sonnet 4」と「Claude 3.5 Haiku」を利用するなど、扱うデータや用途に応じて複数のサービスを組み合わせた。
12のサブシステムの開発にもAIを活用
今回のレファレンス実装の開発には、Kiroを活用した。自然言語で定義した要件を基に、AIが設計や実装するタスクを整理し、コードの実装まで支援する「仕様駆動開発」を採用した。
AWSによると、12のサブシステムにわたる79個の仕様ファイルをKiroで管理し、24の要件を9つのフェーズに分けて実装したという。
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