取手市が「脱VDI」 “高くて手間の掛かる仮想化”から逃れた先は、まさかの「物理」だった:従来方式では更改費用が激増、定期メンテナンスも負担に
仮想化ソフトウェアのライセンス高騰や定期メンテナンスの負担から、VDI方式の仮想デスクトップの見直しに着手した取手市。費用も運用負荷も抑えるために、仮想デスクトップの実現方式をどう変えたのか。
茨城県取手市は「三層分離」の下、1台の端末で複数のネットワークを利用できるようにするために、「VDI」(仮想デスクトップインフラ)方式の仮想デスクトップを採用してきた。三層分離は、庁内ネットワークをマイナンバー利用事務系とLGWAN(総合行政ネットワーク)接続系、インターネット接続系に分ける仕組みだ。
VDIを含む情報系サーバ全体の更改時期を迎えた取手市は、従来のVDI方式の仮想デスクトップの継続を前提に、更改に向けた設計・試算をしたところ、前回更改時の4倍以上の予算が必要になることが分かった。物価高騰に加えて、仮想化ソフトウェアのライセンス料金が上昇したことが要因だ。
運用面の負担も課題だった。VDIでは月に数回、水曜日の閉庁後に定期メンテナンスが必要だった。議会開催前の月末など、職員が残業するほど忙しい時期と重なることもあった。定期メンテナンス時には物理サーバの一部に負荷が集中してシステムが重くなったり、一時的にログインできなくなったりするトラブルも起きていたという。
“高くて手間の掛かる仮想化”から「物理」へ
こうした課題を解消するために、取手市はLGWAN接続系で利用する仮想デスクトップの実現方式を、従来のVDI方式から別の方式に切り替え、約半年で350台分の仮想デスクトップの移行を完了した。定期メンテナンスによるシステム停止もほぼなくなったという。どのような方式に切り替えたのか。
取手市が選択したのは、アセンテックのリモートアクセス製品「リモートPCアレイ100」だ(図)。リモートPCアレイは、1Uサイズの筐体(きょうたい)に複数の物理PCカートリッジや運用管理ツールなどを集約している。ハイパーバイザーを必要とせず、ユーザーは手元の端末から1つの物理PCカートリッジにリモートアクセスして利用する。
リモートPCアレイ100の導入対象は、LGWAN接続系で利用する350台だ。うち300台を通常業務やグループウェア用として、市民窓口や税関係、福祉など、住民情報を日常的に扱う部署に配備した。残る50台はテレワーク用だ。ただしセキュリティの観点から、マイナンバー関連事務はテレワークの対象外にした。
導入の2年前から、取手市はアセンテックからリモートPCアレイ100の実機を借りて検証を進めた。本稼働の約1カ月前には、取手市総務部情報管理課で動作検証し、その後15人でテスト運用して課題を洗い出した。共通のソフトウェアや設定を組み込んだ「マスターPC」を作成し、端末のセットアップを効率化した。
取手市は、シンプルに運用管理できることを重視してリモートPCアレイを選定した。筐体内に複数の物理PCカートリッジが並ぶ構造が、運用管理のしやすさにつながると判断した。仮想化ライセンスが不要でコストパフォーマンスに優れる点に加えて、県内の他の自治体の導入事例を視察し、安定稼働を確認できたことも採用を後押ししたという。
コストだけではない転換効果 メンテナンス負荷も軽減
リモートPCアレイ100の採用により、情報系サーバ全体の更改に要した費用は、前回更改時の1.7倍程度に収まった。物価高騰の影響があることから単純な過去比較は難しいものの、仮想化ソフトウェアの高額なライセンス料金が不要になった効果が大きかったという。移行も、ユーザーに簡単なマニュアルを配布するだけで済み、大きなトラブルなく完了した。
VDIで必要だった定期メンテナンス作業は限りなくゼロに近くなり、職員の業務継続性が高まった。物理PCカートリッジに不具合が発生した場合も、問題のあるカートリッジだけを特定して交換するだけで済むようになった。他のカートリッジを使うユーザーへの影響を抑えられるようになった他、原因の切り分けやシステム全体の再構築の手間も減ったという。
テレワーク用端末では、在宅勤務に加えて、専用ネットワークのない公民館などの出先機関でも、LGWAN接続系の内部事務ができるようになった。取手市は、自席を持たないフリーアドレス制の導入といった取り組みにも、リモートPCアレイを生かしたい考えだ。アセンテックが2026年8月18日、本事例を公開した。
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