検索
ニュース

7割が「シャドーAI」未対策 Gartner提言・メルカリ事例に学ぶ、正攻法:もう一度読みたい「対策見直し」ニュース(3/3 ページ)

企業で生成AIやAIエージェントの活用が広がる一方、IT部門が把握していない「シャドーAI」のリスクが顕在化しています。経営層と現場の認識にはなぜズレが生じるのでしょうか。AI活用とガバナンスを両立させる方法を考えます。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

メルカリの実践事例に見る、シャドーAIを防ぐ「仕組み」

 「一律禁止ではなく、利用者や用途に応じて統制する」という思想を具現化したのがメルカリの実践事例です。同社の取り組みからは、ルールで縛るだけでなく「公式の安全な環境を使う方が便利」という状態を作る重要性が見えてきます。

属性やリテラシーに応じたAIツールの「出し分け」

 メルカリは2026年5月から「Claude Code」「Claude Cowork」の全社展開を開始しました。同社では、全社イベント「AI Agent Day」などで従業員教育を進める一方、全従業員に一律の権限を与えるのではなく、職種やリテラシーに応じた環境の「出し分け」をしています。

 原則として非エンジニアには、仮想環境(VM)上で動作し強力なガードレールを設定できる「Claude Cowork」や「Notion AI」を提供。一方、エンジニアやリテラシーの高い非エンジニアには「Claude Code」も利用できる柔軟な運用としています。

 この制御を支えるのが、MDM(モバイルデバイス管理)の「Jamf」とIdP(アイデンティティープロバイダー)の「Okta」です。端末利用者の属性情報を自動同期し、エンジニアには柔軟な設定、非エンジニアには強いセキュリティ設定を自動適用することで、ガバナンスと現場の利便性を両立させています。

「禁止」ではなく「安全で便利な利用経路」を作る

 メルカリのシャドーAI対策で特筆すべきは、現場の「日々登場する最新のAIを試したい」というニーズを遮断せず、安全なルートをインフラとして用意した点です。

 「さまざまなAIモデルを使いたい」というニーズに対し、同社ではOSS(オープンソースソフトウェア)の「LiteLLM」を活用した共通基盤を構築しました。一般的なAIプロバイダーのAPIキーには原則として有効期限がないというセキュリティ課題に対し、LiteLLMを中継させることで「一定期間で自動失効する短命なキー」でのアクセスを実現しています。

 開発者はプロバイダーごとの複雑な設定を意識せず「モデル名を指定するだけ」で安全なAI利用が可能となり、管理側にとっても利用予算の一元的な可視化・最適化ができるメリットが生まれているといいます。

まとめ:禁止から「責任分担」と「環境整備」へ

 経営層の「把握している」という過信と現場の実態ギャップを踏まえ、Gartnerの分業モデル提言やメルカリの実践事例を照らし合わせると、今後のシャドーAI対策で企業が取るべき方向性が見えてきます。

 AI時代において、申請手続きを煩雑にし、禁止事項を増やしてIT部門だけで統制し続ける従来の手法はもはや機能しません。シャドーAIを抑止しつつも、AI活用による事業成果を最大化するためには、以下の3つのアプローチが不可欠です。

  • 実態とリスクの可視化
    • 経営と現場の認知ギャップを直視し、通信監視や機能単位でのリスク評価を開始する
  • 責任の分担(分業モデル)
    • IT部門に過度な負担を集中させず、ユーザー部門やリテラシーの高い個人に役割と責任を委譲する
  • 公式ルートの利便性向上
    • 「使うな」と制限するのではなく、メルカリのように「安全で使いやすい共通基盤」を用意し、自発的に利用ルートを選ばせる

 シャドーAIの解消とは、現場からAIを遠ざけるための「高い壁」を作ることではありません。

 経営・IT部門・現場の三者がそれぞれの役割を果たしながら、現場が正しく安全にAIを使いこなせる「導線」を設計することが、AIガバナンスに求められる本質といえます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る