「復旧作業が進まない」問題も――エンジニアの時間を削る“障害対応のジレンマ”:安定化まで3時間以上が半数、長引く原因は?
システム障害から迅速に復旧させる上では、技術的な問題への対処だけでなく運用体制にも課題が目立つ。運用担当者ら309人を対象とした調査から、復旧作業に当たるエンジニアの時間を奪う問題が浮かび上がった。
システム障害が発生した際、エンジニアには迅速な原因究明と復旧作業が求められる。しかし実際の対応現場では、障害を長引かせかねない付随業務に追われ、集中すべき作業に時間を十分に割けない状況も生じているようだ。
インシデント管理プラットフォームを提供するPagerDutyが2026年8月13〜18日に実施した調査から、障害対応の現場では必ずしも効率的に復旧作業に当たれていない現状が分かった。何が迅速な障害復旧を妨げているのか。
安定化まで3時間以上が半数、復旧を遅らせる要因は?
PagerDutyが実施した「大企業の重大システム障害・初動と『属人化』の実態調査」は、過去1年以内にシステム障害への対応に携わった309人を対象に、障害対応に要した時間や業務負担、属人化の実態などを調べた。回答者は、従業員1000人以上の企業でシステム運用・保守、SRE、セキュリティ運用に携わる責任者や担当者だ。
まず、過去1年以内で事業や顧客への影響が最も大きかったシステム障害について、異常を把握してからシステムやサービスが安定するまでにかかった時間では、「3時間以上」が51.5%と半数を超え、「6時間以上」も25.9%に上った(図1)。
異常を把握してから必要な担当者がそろい、実際の調査・復旧作業を開始するまでにかかった時間は、「30分以上」が65.4%、「1時間以上」が40.2%だった(図2)。これらには、最後まで必要な担当者がそろわなかったケースも含まれる。
復旧を妨げる「作業以外の負担」、約9割が繰り返し説明
復旧までの対応の中では、どの工程に時間がかかっているのか。最多は「原因の特定」の22.3%だった。次いで「対応する担当者の特定・招集」が18.1%、「特定の担当者しか分からない作業・判断の待ち」が15.2%と続いた。「復旧作業そのもの」は14.2%で、これらを下回った(図3)。
一方、復旧作業そのものよりも、社内外への説明・報告・調整に多くの時間を使ったと思うかという質問では、「非常にそう思う」が28.5%、「ややそう思う」が51.8%となり、合計80.3%に達した。
実際、障害対応中に同じ状況を異なる相手に何回説明し直したかを尋ねたところ、「2〜3回」が46.3%で最多だった。「4〜5回」が13.3%、「6回以上」が11.0%、「1回」が15.9%で、合計86.5%が少なくとも1回は説明し直していた(図4)。
障害対応中に状況の確認や操作、連絡のために行き来したツール・画面の数については、「3種類以上」が77.0%を占め、「7種類以上」も10.7%に上った。複数のツールや画面を使い分けながら、調査・復旧と関係者への情報共有を進めている実態がうかがえる。
障害対応を短縮するために必要なのは「人員増強」ではない?
こうした障害対応にかかる時間を短縮するために、現場では何が必要だと考えられているのか。最も多かったのは「障害対応の情報を一元的に共有する仕組み」で54.7%だった。次いで「対応手順やノウハウの文書化・共有」が40.1%、「対応全体を指揮する責任者の明確化」が37.5%、「必要な担当者に自動で連絡・招集する仕組み」が28.8%、「技術対応と報告・説明の役割分担」が28.5%と続いた(図5)。
人員を増やすことよりも、情報共有や役割分担など、障害対応の仕組みを整えることが重視されているようだ。
障害対応を長引かせる構造的な課題
PagerDutyは、調査結果から浮かび上がった課題として、障害対応の属人化や初動対応の遅れ、指揮役・役割分担の不明確さ、説明・報告業務への負担集中などを挙げている。
実際、障害対応が特定の担当者の知識や経験に依存していたかという質問では、88.7%が「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答した。また、障害対応を開始した時点で、対応全体の指揮役が「明確に決まっていた」との回答は27.2%にとどまった。
こうした課題への対策として、PagerDutyは、障害対応に関する情報の一元化、手順やノウハウの文書化、指揮役と役割分担の事前設定、担当者への連絡・招集の仕組み化などを挙げている。
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