連載 | 企業システム戦略の基礎知識(1) |
IT投資を失敗させる“3つの落とし穴”
青島 弘幸2004/11/19
- | システムは「使ってナンボ」 |
大規模な投資をして、最新のITを導入したにもかかわらず、運用段階で十分に使いこなせず、当初の計画どおりの効果を上げられないケースがある。いくら全体最適化だ、経営の効率化だと格好をつけても、現場が受け入れないで使わないものは、どれほどお金を掛けてもシステムとしての価値は無に等しい。例えば、最近の新聞に次のような記事を見つけた。
「電子カルテ共有、26地域中10地域で完全休止 手間と費用に医師ら敬遠」 この事業は、経産省が00年度の補正予算で01年度に実施した「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」(通称・電子カルテの共有モデル事業)。地域の医療機関が、患者紹介の効率化などのため、ネットワークを作りカルテを共有するシステムの開発・運用に、合計約56億円を投入。モデル地域を全国公募し、26地域の医師会などが参加した。 事業終了後も続ける義務はないが、作ったシステムはそのまま使え、経産省も地域に根付くことを期待した。しかし、10地域で完全休止に追い込まれた。 (朝日新聞 2004/10/17)
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- | システムの成果を測る努力を |
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出力として得た情報を、どうやって利益につなぐのか。あるいは、利益を上げるためにはどんな情報が入出力されるべきか。ここのシナリオ・戦略をしっかり検証しておかないと、「ITは金食い虫でもうからない」という結論になってしまう。
ITを生かすも殺すも使い方次第である。にもかかわらず、ITが利益に直結しないという理由で軽視する向きがある。しかし、それで本当によいのだろうか。
樹木の生長に水は必須のものだ。水が根から吸い上げられ、葉で光合成が行われて、樹木は生長する。水が直接、果実にならないからといって軽視したのでは、樹木は立ち枯れてしまう。
ITの効果を、直接的な利益だけで測るのではなくバランスト・スコアカードの「財務・顧客・社内プロセス・学習と成長」の4視点から、多面的に評価してみてはいかがだろう。
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- | システムは「守・破・離」で育てよう |
【守】 | まず、形から入り、基本を、しっかり『守』って練習する |
【破】 | 次に、基本の殻を『破』り、応用動作を身に付ける |
【離】 | 最後に、独自の発想を得て、基本から『離』れ独り歩きする |
この考え方は、システム構築にも応用できる。「守・破・離」のステップを踏んで、最少の投資で、基本的なところから始め、成果を評価しつつ、段階的にシステムを強化していけば、結果として、ムダな投資を防ぎ、その効果を最大化できる。
いきなり奇をてらって「離」に走ったシステム構築をもくろんでも、基本がなってないので挫折する。何事も基礎は大切だ。かといって、いつまでも現状を「守」っていては、時代に取り残されていく。また、「破」は「守」の上に、「離」は「破」の上に積み上がって達成されるものである。
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■要約 IT活用では、業務プロセスの「自動化」を目指すことが多いが、実は大きな落とし穴がある。柔軟な対応ができなくなったり、内部統制が甘くなったりすることがあるのだ。 「ペーパーレス」も古くて新しいテーマだ。「紙」をなくすことは技術的には難しくなくなったが、現場の実情を知らず、あるいは無視してペーパーレス化を進めれば、現場に混乱をきたすことになる。 「統合業務システムの導入」という掛け声もよく聞かれる。しかし、全体最適化は裏返せば全体最悪に陥るリスクもあるということだ。また、業務別システムであれば機能や能力の追加・強化も、徐々に拡張していくというやり方が可能である。 システムは、次の「守・破・離」のステップを踏んで最小の投資で、基本的なところから始め、成果を評価しつつ、段階的に強化していくことが望ましい。 【守】 まず、形から入り、基本を、しっかり『守』って練習する 【破】 次に、基本の殻を『破』り、応用動作を身に付ける 【離】 最後に、独自の発想を得て、基本から『離』れ独歩きする |
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