@IT勉強会レポート(2)
第2回 問題発見力勉強会より

ヒアリングにも不可欠、“理解する力がつく構造化力”

生井 俊
2005/12/8

  構造化は6種類を頭に入れておくと良い

 「人間は男性と女性の2種類の性別から構成されている」という文章があるとします。これを構造化すると、下の図のように描くことができます。「人間」「男性」「女性」という要素を取り出し、関連性のあるものを線で結んでいます。文章で書くよりも分かりやすいですよね。

文章を構造化するには……(勉強会資料より)

 要素間の関係にはいくつか種類があります。その中でも6つくらいを頭に入れておけば、実務的には足りるでしょう。その6種類ですが、2グループに分けることができます。

 1つは、「全体と部分の関係」「並列の関係」「同じ種類」のように、“線”で結ぶとよい関係です。もう1つは「原因と結果の関係」「時系列の関係」「対立の関係」など“矢線”で結ぶとよい関係です。これらの詳細は以前の連載の中で説明していますのでご覧ください。

  関連記事
  【“構造化スキル”を鍛えて、問題発見力を高めよう!】連載:問題発見能力を高める(7)(@IT情報マネジメント > 情報化戦略・投資)

 連載の中で説明を省略したのが「対立の関係」です。例えば、こんなケースのときに使います。“労働組合が7%のベア(ベースアップ)の要求をした。一方、経営陣からはベア0回答だった”とします。そのとき、労働組合と経営陣とを“矢線”で結び、対立していることを表します。ほかにこれを使うケースには、品質とコストのような相反する場合などがあります。それを解消するのが「ソリューション」と呼ばれていることが多いですね。

「対立の関係」(勉強会資料より)

  アンケート項目を構造化する

 さて、ここからは4人1組でグループを作っていただき、簡単な構造化スキルの実践をやっていきます。メガネ店のアンケートを用意しましたので、そのアンケート項目の設問がどのように組み立てられているか、6種類の構造を意識して図示してみてください。

──ここで秋池氏は、例題として“メガネ購入者に対するアンケート”を提示した。これは、(1)メガネのフレームが気に入ったか、(2)見え具合やかけ心地はどうか、(3)接客した店員の対応、(4)商品価格の妥当性、(5)次の購入時も来店したいか、の5項目からなり、これらを構造化するよう指示した。

早速各グループは、設問番号を示す(1)〜(5)を付箋(ふせん)紙に書き、議論を始めた。秋池氏は「ワナが仕掛けてありますから、注意してください」と意味深なことをいいながら、各グループをのぞいていく。模造紙に付箋紙を取りあえず貼り、それぞれが動かしてみるグループ、「多次元的な構造になっていそうだ」と相談から始めるグループなどさまざま。

「付箋紙を貼ったら、“線”で結んでください」と、秋池氏があらた指示を出し、ほぼ各グループの意見がまとまったところで、あるグループの模造紙をホワイトボードに貼り出し、問題解説を行った。

 このグループの答え、ドンピシャ(“正解の図”を表示)です。このアンケートは、設問(5)にある、“次も買ってくれるか”の指標を知りたいわけで、それを聞くために(1)〜(4)の設問で限定しているのです。

 このアンケートは、メガネという商品が「デザイン性」「実用性」「接客」「価格」の4つから構成されていることを認識して作られていることが分かります。メガネ購入者の意思決定プロセスの構造化がよくできていますし、「ギャップ」を見つけるのには正解です。

  構造化スキルを鍛えるトレーニング方法

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 それから構造化スキルのトレーニング方法です。アンケートだけではなく、長文も構造化できます。新聞の社説、雑誌のコラムなどを読み、重要だと思う個所にアンダーラインを引きます。抜け漏れがないように構造化するには、記事全体の約3割にアンダーラインが引けるでしょう。文章を構造化することで、短時間で内容を把握することができますし、相手の考えていることを理解する能力が飛躍的に向上します。

 付箋紙を使い、発言を構造化しながらミーティングするのも効果があります。会話だけの議論は空中戦になってしまう恐れがあります。それを、付箋紙やPowerPointを使って進めることで、会議が終わったときには構造化されたマップが完成し、参加者同士が共通認識を持つことができます。

 ほかには、ブレーンストーミングKJ法にも構造化を取り入れてみることです。KJ法もいいですが、一般に流布しているものは分類までで止まっています。カードや付箋紙を線で結ぶだけで理解度は随分違います。これが日常的にできると、強い組織になりますよ。

編集部から

 勉強会の感想として「構造化力と質問話法を上手に使うことで欲しい答えが求められそう」「構造化の種類を絞って例示してあり分かりやすかった」「グループでの演習を通じ、他社の人と仲良くなれた」といった意見が寄せられた。

 次回、12月13日(火)の第3回 問題発見力勉強会は、「発想力強化で問題を乗り切る」をテーマに、フレームワーク解説とチーム討議を中心に行う予定だ。

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@IT勉強会レポート:問題発見力勉強会(2)
 ヒアリングにも不可欠、“理解する力がつく構造化力”
  Page 1
相手の話を理解して聞く鍵は「構造化力」
構造化はポイントを押さえ、それらを関係付けること
Page 2
構造化は6種類を頭に入れておくと良い
アンケート項目を構造化する
構造化スキルを鍛えるトレーニング方法


■要約
相手の話を理解して聞く鍵は「構造化力」だ。ソリューション提供の中でいえば仮説の検証に「ヒアリングスキル」と「構造化スキル」が必要になる。これらは「質問する力」と「理解する力」のことで、表裏一体であって2つがないと成立しない。

構造化とは「話のポイントを押さえること」「各ポイントを関係付けること」で、物事を束ね、抽象度を高めていくものである。話のポイントを押さえ、各ポイントを関係付けながら相手の話を聞き、「いま、いったことは〜ということですね?」と相手の話を要約して、構造化していく。

ポイント間の関係にはいくつか種類がある。実務的には、6つくらいを頭に入れておけば足りる。6つとは「全体と部分の関係」「並列の関係」「同じ種類」(線で結ぶ)、そして「原因と結果の関係」「時系列の関係」「対立の関係」(矢線で結ぶ)だ。

そのトレーニングは、新聞の社説や雑誌のコラムなどを読み、重要だと思う個所にアンダーラインを引いて、それを線で結んで構造化する。会議の発言を付箋紙などに書き留め、マップを作れば、参加者同士が共通認識を持つことができる。

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profile
生井 俊(いくい しゅん)
1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。


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