第2回 rsyncを用いたコンテンツの分散

内間 圭介
株式会社Cuon

2008/10/16

画像保存先ディレクトリをどう指定するか

 前項のようにfile_columnのオプションを指定した場合、画像は、

RAILS_ROOT/public/store/モデル名/カラム名/id/ファイル名

に保存される。

 また、画像がアップロードされた直後、つまりモデルに画像が保存される前には、

RAILS_ROOT/public/store/モデル名/カラム名/tmp/ランダムなディレクトリ名/ファイル名

に一時画像が保存される。

 このように、file_columnはアップロードされたファイルを、Webアプリケーションサーバのローカルディレクトリに保存する。Webアプリケーションサーバが増えていくことを考えると、コンテンツ保存先ディレクトリに関しては、コンテンツサーバのマウントが期待されている。

 マウントしない場合についてはプラグイン側で考慮されていないので、そのようにしたい場合には、アプリケーション側で画像転送部分を自前実装する必要がある。

 さてここで、コンテンツサーバ側の画像保存先ディレクトリについて考えてみる。コンテンツサーバ上の画像は任意の場所に置くことができる。できれば後からの利用を考えてディレクトリ構成などを考えたい。

 ライフパレットでは、ユーザーがアップロードしたコンテンツのディスク使用量をduコマンドで手軽に求めたいという要求があった。そこで、コンテンツサーバ上の画像は「/contents/images/ユーザーID」のように、ユーザーIDごとにディレクトリを切って保存することにした。

 また、このコンテンツサーバ上のディレクトリに向けて、ユーザーごとにrsyncで画像を転送するため、Webアプリケーションサーバ上でも「RAILS_ROOT/public/store/ユーザーID」のように、ユーザーごとにディレクトリを分けて画像を保存する。

 ただし、ファイルアップロードの際にできる一時的なtmpディレクトリ(モデルに画像を保存する前にセッションが途中で終了した場合などに、このディレクトリがゴミとして残ることがある)については転送に含みたくないため、一時アップロード画像は、ユーザーごとのディレクトリではなく、file_columnのオプションに渡された通常のディレクトリに保存させる。

 つまり、画像アップロードから画像転送までの流れは以下のようになる。

  1. ユーザーが画像をアップロード
  2. 一時アップロードのファイルがtmpディレクトリに保存される
  3. モデルに画像を保存する際、RAILS_ROOT/public/store/ユーザーID以下に画像を保存
  4. rsyncで、ユーザーディレクトリごとコンテンツサーバに転送
  5. 3で作られた(Webアプリケーションサーバ上の)ローカルディレクトリを消す

 2、3、4の段階で、それぞれ画像保存先ディレクトリが異なる。これを実現するためには、file_columnで動的に画像パスを変更する必要がある。

file_columnによる動的な画像保存先変更

 file_columnで動的に画像保存先を変更するには、モデルに追加される「カラム名_options」という名前のハッシュ(実際にはメソッド)を利用する。例えば、file_columnのカラム名を「picture」とした場合、以下の項目を利用することで画像保存先を動的に変更できるようになる。

  • picture_options[:root_path] # 保存先ルートパス
  • picture_options[:store_dir] # 保存先ディレクトリ
  • picture_options[:base_url] # ベースURL(画像表示時に使用)

 まず、一時アップロードファイルをユーザーごとのディレクトリに保存させる。この保存先変更はモデルオブジェクトがsaveされる前に行う必要があるため、before_createにて行う。

 下記の例では、ルートパスを「RAILS_ROOT/public/store/ユーザーID」に、保存先ディレクトリを「RAILS_ROOT/public/store/ユーザーID/モデル名/カラム名」に変更している。

 モデル保存前の段階では、store_dirの変更だけで済むかもしれないが、この例では念のためroot_pathも変更している。

class Image < ActiveRecord::Base

# 中略

  # save前のパス変更
  def before_create
    # モデル名
    d = self.class.to_s.underscore
    # 画像保存先パスの生成
    root_path = "#{RAILS_ROOT}/public/store/#{self.user_id}"
    store_dir = "#{root_path}/#{d}/picture"
    # 保存先ディレクトリがなければ作る
    FileUtils.mkdir_p(store_dir) unless File.exist?(store_dir)
    # パス設定
    self.picture_options[:root_path] = root_path
    self.picture_options[:store_dir] = store_dir
  end
end

 同様に、画像転送後(コンテンツサーバ上)の各種パスも動的に設定する。これはafter_findで行う。コンテンツサーバに保存された画像を表示するため、今度は base_urlも設定している。

class Image < ActiveRecord::Base
  belongs_to :user

  # 中略

  def after_find
    # モデル名
    d = self.class.to_s.underscore
    # ユーザーごとにコンテンツサーバの情報を引き出す
    server = self.user.contents_server
    # 各種パス生成
    root_path = "#{server.dir}/#{self.user_id}"
    store_dir = "#{root_path}/#{d}/picture"
    base_url = "#{server.url}/#{self.user_id}/#{d}"
    # パス設定
    self.picture_options[:root_path] = root_path
    self.picture_options[:store_dir] = store_dir
    self.picture_options[:base_url] = base_url
  end
end

 このようにして、画像保存時・画像転送後のパスを動的に変更している。

2/3

Index
rsyncを用いたコンテンツの分散
  Page1
コンテンツサーバの分離
file_columnによる画像管理
Page2
画像保存先ディレクトリをどう指定するか
file_columnによる動的な画像保存先変更
  Page3
rsyncによる画像転送
実装コストを取るか、運用コストを取るか

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