ここがポイント! DBセキュリティの実装(4)

脆弱性評価ツールの有効性を知る

 

フォーティネットジャパン株式会社
セールスエンジニアリング部 シニアコンサルティングSE
成田泰彦
2010/5/27

幽霊アカウントや設定ミスを撲滅する

 データベース運用を開始する際にはアカウントやパスワード設定、権限設定などを行いますが、インストール時の設定のまま運用を続けるというケースがいまだに見受けられます。特に、部門で運用されているサブシステムなどでは、自分たちで利用する部分だけ設定変更を行い、それ以外はデフォルトのまま使用していることも多いのではないでしょうか。

【関連記事】
川口洋のセキュリティ・プライベート・アイズ(25)
実録・4大データベースへの直接攻撃
(@IT Security&Trust)
http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/column/kawaguchi/025.html

 取りあえず部門全員のアカウントを登録したものの、ほとんどのアカウントが使用されないままの状態だったり、あるいは人事異動や退職者があってもアカウントがそのまま残っていたり、ログインに失敗してアカウントがロックされた状態で長期間放置されているものもあるでしょう。このような“幽霊アカウント”が存在することは、セキュリティ上の大きなリスクといえます。

 データベースからの情報漏えい事件は、発生プロセスに“人間”が介在していることがほとんどです。データにアクセスする際の接点はデータベースアカウントであり、アカウントの不正利用によって情報漏えい事件が引き起こされています。それゆえ、アカウント設定や権限設定、認証設定は定期的に棚卸しをして、再評価する必要があります。

 脆弱性評価ツールを利用すると、各アカウント、職務、グループによってどのような権限を保持しているのかがすべてリストアップされ、セキュリティ上のリスクになる設定になっている個所があれば、それらもすべてピックアップして警告を発します。長期間使われていない状態のアカウントやロックされたままのアカウントの有無をチェックするなど、不必要なアカウントが登録されたままの状態になってしまう問題をなくすことができます。

 データベースアカウントやロールの設定などは業務の状況によって随時変更されるものです。従って、ツールによる定期的なチェックを実施して常にセキュリティコントロール下に置くことが重要です。こうしたアカウント管理は、内部統制や法制的にも必要であり、その視点でも脆弱性評価ツールの有効性は高いといえます。

権限設定・認証設定が
不十分な場合のリスク
脆弱性評価ツールによる解決
  • 使用されないアカウント、異動や退職したにもかかわらず放置されたアカウント、長期間ロックされたままのアカウントが存在する
  • パスワード設定ルールに脆弱性があるもの
  • 設定ミスにより必要以上の権限が付与されたアカウント
  • 登録されている全アカウントのリストと、パスワード設定や権限設定を抽出し、PDFやExcelなどでのレポート出力が可能
  • 全アカウントの棚卸が実施でき、幽霊アカウントの撲滅、業務権限以上の情報へのアクセス権限が付与されたアカウントの見直しなどが行える
  • すべてのアカウントの管理状況を可視化することで、内部の人間がかかわる漏えい事故や事件が発生するリスクを軽減できる

マルチデータベース環境で統一したセキュリティ基準を維持する

 企業では、多種多様なデータベースを用途に合わせて運用しているでしょう。例えば、基幹系はオラクル、大量のデータを扱う分析系はTeradata、外向けWebシステム用はSQL ServerやMySQLなど、それぞれデータの種類や用途によって使い分けています。

 こうしたマルチデータベース環境では、各データベースベンダやサポートしているSIパートナーごとに管理基準に違いがあったり、社内の管理担当者の意識やスキルの違いによって、データベースごとにセキュリティの実施状況がばらばらな状況になってしまいます。ある1カ所のデータベースに脆弱ポイントによって、全社的なセキュリティレベルが低下しないよう、すべてのデータベースで企業としてクリアすべき、一定のセキュリティ基準を常に維持する必要があります。

 脆弱性評価ツールには、データベース製品ごと、あるいはバージョンごとの最善のセキュリティ診断ポリシーが事前に備わっています。それぞれのデータベースに関して技術的に深く精通した専門エンジニアによるポリシーデザインをすることなく、脆弱性評価ツールによって、各データベースの現状がどのような状態であるのか走査でき、検出されたリスクにどう対処すべきか容易に知ることができます。

セキュリティレベルが
統一できない問題
脆弱性評価ツールによる解決
  • 企業内には、異機種・多数のデータベースインスタンスが混在している
  • 管理者のスキル、サポートベンダのサポートレベルの違いにより、統一したセキュリティレベルの実装が困難
  • セキュリティレベルの充足度の客観的判断基準がなく、現状の危険度を洗い出すことができない
  • 各データベースの深い知識がなくとも、異機種・複数のデータベースに対して統一的なセキュリティ診断を同時に行うことが可能
  • すべてのデータベースインスタンスの評価結果により、それぞれのインスタンスの現状がどのレベルであり、何をすべきかが明確になる

DBセキュリティの維持管理がしっかりできていることを証明する

 データべースのセキュリティ管理がしっかりとなされているかどうかは、保持されているデータにかかわるすべての人々にとって非常に重要な問題です。データの所有者・管理者・利用者・監査人などのそれぞれの立場から、データの管理状況を利害関係者に説明、証明する必要があります。主に説明、証明する立場にあるのは、データの所有者かつ管理責任者である「企業」ですが、企業は利用者・監査人・株主などに対してデータベースセキュリティの対応状況を、迅速かつ明確に証明する方法を用意しておくことが求められています。

 また、データベースの設定は運用していく中で、いろいろな状況に応じて変更が繰り返されたり、パッチを適用したり、バージョンアップを行ったりと、環境は絶えず変化します。バージョンアップによって機能が追加された場合には設定項目も増え、これまでになかった新たなリスクが発生することもあります。

 脆弱性評価ツールは、こうした状況に対応するために、定期的に自動で実施した脆弱性評価の結果を履歴として保持することが可能です。現在稼働中のデータベースにおけるセキュリティコントロールがどのように推移したか記録・保持されており、必要に応じてレポート出力することができます。それを利用して、利害関係者に対してセキュリティの取り組み状況を説明する必要が生じた場合、あるいは確実に管理されていることを証明する必要があるときは、すぐに対応することが可能になります。

セキュリティ管理状況の説明、
証明責任の問題
脆弱性評価ツールによる解決
  • 企業にとって最も重要なデータベースは利害関係者にとっても重要なデータあり、セキュリティ管理状況は最大の関心ごと
  • それぞれの立場において管理責任と説明責任があるが、実際のセキュリティ管理状況を明確に証明するための仕組みがない
  • 情報漏えいなどの重大事故が発生した場合に、迅速な原因解明を行う仕組みがない
  • ツールに事前に設定されている診断ポリシーに加え、企業独自のポリシーを自由に追加可能
  • ポリシーに基づいて診断をスケジューリングにより定期的に実行。結果ログによって過去からのセキュリティ対策の進ちょく状況をレポート出力でき、関係者に対し説明・証明することが可能
  • 新たに発見された脆弱性に対して、オンラインで新しい診断ポリシーが追加される機能持つ製品もある

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Index
脆弱性評価ツールの有効性を知る

Page 1
DBをセキュアに保つための管理プロセスを確立せよ
社内のすべてのデータベースを確実に掌握する
→
Page 2
幽霊アカウントや設定ミスを撲滅する
マルチデータベース環境で統一したセキュリティ基準を維持する
DBセキュリティの維持管理がしっかりできていることを証明する

Page 3
セキュリティサービスとしてのビジネス展開も可能

ここがポイント! DBセキュリティの実装


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