SQL Server、OOWにIQ、盛りだくさんの4月
2012/4/20
MySQLの概要からトラブルシューティングまで
ところでOOWではOracle Databaseに関する新しい話は特にありませんでした。オラクル製品で「12c」と名の付くものはすでにあるので、Oracle Databaseもいつか……と気になるところです。でももう少し先になりそうです。
別のデータベースに目を向けましょう。OOW開催前日、4月3日にはオラクルはOTN MySQL User Forum Tokyoを開催しました。当日はあの「爆弾低気圧」が日本を襲った日でした。Q&Aを一部割愛し終了時間を前倒ししたこともあり、多くの参加者は最後まで熱心に話を聞き、終了後は早々と帰路に就きました。
MySQLの現行安定版は5.5です。基調講演に立った米オラクル VP, MySQL Engineering トーマス・ウリン氏は5.5を「Best Release Ever」と称するほど、最良のバージョンだと紹介しました。ポイントはパフォーマンスが大幅に改善されたこと、加えてInnoDBがデフォルトのストレージエンジンになったことなどが挙げられます。
次は5.6。現行の5.5をさらに改善したものとなります。昨年末にDMR(Development Milestone Release)の5.6.4がリリースされ、もうすぐ5.6.5が出るとのこと。特にオプティマイザー改善にはFile sort optimizations、Index Condition Pushdown、Batched Key Accessなどがあり、力が入っています。ほかにもInnoDBやレプリケーションにも改善が加わっています。
目を引くところでいえば、NotOnlySQLアクセスです。通常のMySQLクライアントからのSQLアクセスだけではなく、MemcachedプロトコルからのNoSQLアクセスも可能になります。
それから2012年2月に登場したMySQL Cluster 7.2(GA)。オラクルによると「1分間に10億クエリ」「パフォーマンスが70倍」となるほど改善されました。ネイティブのNoSQL memcached API、Oracle VMサポートなどが加わりました。
それからエンタープライズ版。MySQLにはコミュニティ版のほかにエンタープライズ版があります。後者はコミュニティ版にパフォーマンスを強化し、各種ツールやサポートが加わったもの。特に「MySQL Enterprise Backup」は強力です。かつて「InnoDB Hot Backup」と呼ばれ、別売りでしたがエンタープライズ版に組み込まれたものです。例として32GBのデータリストアで比較すると、mysqldumpでは2時間強、MySQL Enterprise Backupでは10分未満と差が出ます。この差は大きいです。
また管理ツール「MySQL Enterprise Monitor」は複数のサーバを一括監視したり、障害が発生する前に危険を通知するなど運用の大きな味方になります。中でも「Query Analyzer」は、パフォーマンスのグラフから一定の期間に実行されたSQL文を表示できるなど、問題のあるSQL文の発見と解析に役立ちます。
イベント終盤には「MySQL Cluster構築・運用バイブル 〜仕組みから
わかる 基礎と実践のノウハウ」著者でもあり、同社 MySQL Global Business Unitテクニカルアナリスト 奥野幹也氏(写真)が登場。「今日はここまでMySQLの濃い話が続いたのに、さらに濃い話をします」と会場を沸かせ、短時間にトラブルシューティングのツボを凝縮して解説していました。ここは今後別の機会に取りあげたいです。
冒頭のウリン氏による基調講演では最後にイベント参加者およびMySQLコミュニティメンバーに対して「MySQLへのフィードバックと貢献に感謝します」と謝辞を述べていました。セッション内容は技術的に高度でありながらも、休憩時間には登壇者らがイルカのぬいぐるみを抱えて写真を撮りあうなど、和やかな雰囲気でオープンソースらしい空気が流れているのが印象的でした。
インサイトテクノロジーがアプライアンス製品「IQ」を発表
3月2日、インサイトテクノロジーはオープンデータベース・アプライアンスとなる 「Insight Qube(以下、IQ)」を発表しました。
同社はソフトウェア、特にオラクル製品に強い企業というイメージです。なぜ今、ハードウェア一体型のアプライアンスを手掛けるようになったのでしょうか。同社 取締役 石川雅也氏(写真)が答えてくれました。
「近年ではハードウェアとソフトウェアを統合した製品が目立つようになりました。事例が次々と発表されるのを見て『数億円規模の投資をする会社が結構あるんだ』と気付かされました。また最近ではハードウェア、特にエンタープライズ向けのSSDの改善と低価格化が進み、『ソリューションとしてやれる』という確信が持てるようになりました」
製品開発に着手し、約3年のR&Dを経て製品をリリースしたそうです。石川氏は続けます。「数億円規模の他社製品を分析すると、そのうちハードウェアのコストが約1/4、残りはソフトウェアライセンスと見込んでいます。我々は、より性能の良いものを、よりリーズナブルな価格で提供したいと考えています。数億円規模の投資をできる会社は日本にそう多くはないですから」
IQのラインナップは3つ。松・竹・梅という分け方ではなく、東西の両横綱に開発用というイメージです。まずOLTP、DWH向けで高信頼性と性能を両立させたANACONDA、次にDWH専用で最先端技術を搭載し高パフォーマンス重視のCOBRA、加えて開発環境専用のPYTHONです。
どれも高パフォーマンスですが、中でもパフォーマンス重視のCOBRAはInfinibandが最新のFDR(56GB/s)です(ほかの2モデルはQDR《40GB/s》)。Infinibandだけ見ればCOBRAはオラクルのExaシリーズより先に進んでいます。それだけ最先端と高速性にこだわった製品です。
加えてPYTHONは開発環境専用ということで無料です。ハードウェア込みで無料というのには驚きました。ただし、いずれ本番環境に移行するときはANACONDAまたはCOBRAを使うとの前提ありきの試用版価格です。
なおPYTHONだけは「iPhoneにならって白と黒の両モデルをそろえました」(石川氏)とのこと(写真)。遊び心があっていいですね。Insight Qubeで使用できるデータベースはOracle Database、Vectorwise、MySQL Clusterの3種類から選べます。
同社 ビッグデータ・ソリューション開発部 新久保浩二氏(写真左)がパフォーマンスについて解説してくれました。IQのパフォーマンスに大きく寄与しているのがSSDとInfinibandです。HDDとSSDで比較すると、HDDだとI/O待ちでCPUが使い切れてないのに対し、SSDでは約10倍の性能が出ていて、CPUはフルに使っている状態です。
ある顧客の事例では、5年前に構築したシステムをANACONDAに移行してみたら60分かかった処理が3分で終了したとのこと。ここだけ単純に見れば20倍です。なお他社メーカーのハードウェアに載せ替えただけなら2倍の性能アップにとどまっていたそうです。
IQは最先端で高性能なハードウェアを搭載したマシンで、アプライアンスを何台も買うことがないようにしてコスト削減を狙っています。冒頭の石川氏の指摘のように、昨今ではハードウェアの進化により、相対的にソフトウェアのライセンス費用が割高になっています。アプライアンスの台数を減らせば、結果的にソフトウェア費用を削減できて、コスト削減効果が高くなるというわけです。
石川氏によるとIQが想定する顧客は2パターン。まずは従来のOracle Databaseなど企業の業務でデータベースを必要とする顧客と、これからYahoo!やFacebookなどのWebサービスを独自に作ろうとしている人たちだそうです。IQのコストパフォーマンスは中小企業や新興企業にも活用してもらいたいとのこと。
また6月にはIQをさらに高速化するData Cachingオプションをリリースする予定とのこと。
ではまた来月、お会いしましょう。過去記事もどうぞ!
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SQL Server、OOWにIQ、盛りだくさんの4月 | |
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