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オープンソースカンファレンス2011.DBレポート

2大オープンソースRDBMSの近未来が見えた!


加山恵美
2011/11/15

実験版の機能が現実になるのが楽しみ! MySQL

 さて次はMySQL。2つめのセッションには日本MySQLユーザ会のとみたまさひろ氏写真)が登場。冒頭に「MySQLはOSSです/OSSであるメリットは/会社が買収されても大丈夫!」と大きく掲げて会場の笑いを誘った。もちろんこれは冗談だ。とみた氏はOSSのメリットとして「ソースコードを見られる」「改造できる」「開発版を使える」といった点を挙げた。

 そのまさに開発版となるのがMySQL 5.6。MySQLのDeveloper Zoneで開発者からの情報を読める。5.6ではInnoDBオプティマイザ統計情報の永続化、デッドロックをエラーログに出力するなど多くの点を改善する。中でも遅延レプリケーションには注目したい。これはマスターの更新を遅延させてスレーブに反映するもので、タイムラグを設けることで、操作ミスの直後なら回復できるようにしているのだ。

 開発版よりもさらに先端の情報に触れられるのがLabsでダウンロードできる実験版だ。その名の通り実験的なものである、初心者には少し敷居が高い。そこでセッションでは、とみた氏が注目の機能をピックアップして紹介した。

 最も話題になっている機能としてはInnoDBにMemcachedでアクセスできるMemcachedインターフェイスがある()。このように、MySQLはNoSQLの機能を利用し始めている。将来MySQLはRDBMSとNoSQLのハイブリッドなデータベースとなるかもしれない。

 そして新機能ではないが、氏がMySQLの大きな特徴として掲げるのがマルチストレージエンジン。氏は「おれおれストレージエンジン」と呼ぶ。これは、テーブル単位でストレージエンジンを指定できるというもの。MyISAM、InnoDB、Blackhole(データを受け入れても格納しないという不思議なもの)、CSV、NDB(MySQL Cluster)などから選べる。

 MySQLの良さは本体だけではなく、周辺技術の豊富さにもある。まずは「Q4M(Queue for MySQL)」。MySQLのストレージエンジンで機能するメッセージキューだ。現時点ではリリース番号が0.9.5と、正式リリースのようには見えないが、すでにDeNAやmixiなどが利用しているそうだ。またDBレイヤでシャーディング(複数のデータベースにデータを分散して格納する)する「Spider」や、縦方向にテーブルを分割する「Vertical Partitioning」などなど頼もしい機能がMySQLの周囲を固めているのが分かる。

 さらにとみた氏が強く推薦していたのが「Groonga」だ。こちらはカラムストア機能付き全文検索エンジンだ。最近、MariaDBに付属することが決まった。ちなみにMariaDBとはMySQLのフォーク、枝分かれと呼ばれるもの。11月29日に「全文検索エンジンgroongaを囲む夕べ」と題した勉強会が開催される。すでに定員オーバーだがUstream中継を実施する予定とのこと。

 30分という短いセッションの中、駆け足だったが、とみた氏はMySQLの将来の注目機能や関連技術を分かりやすく説明してくれた。今回紹介した関連技術は、紹介するページのドメインやURLがばらばらであるように、機能ごとに開発元が分かれている。よく見ると、日本人が開発の中心にいるものも多くある。日本人開発者たちの底力も感じられる。それだけ日本にもMySQLのファンが多いと言えるだろう。

ライバル同士も和気あいあい

 PostgreSQLはNoSQLではないものの、WALなしテーブルやカスケードレプリケーションなどNoSQLが持つ強みをPostgreSQLなりに実装してきている。一方、MySQLもMemcachedインターフェイスやSpiderなど、NoSQLを想像させる機能に開発が着々と進んでいる。どちらも、時代の変化を柔軟かつ迅速に取り込んで発展していくオープンソースソフトウェアらしい。

 今回紹介したPostgreSQLやMySQLに限らず、オープンソース製品のコミュニティはどれも寛容だ。誰かが作り上げた機能をコミュニティは受け入れていく。違う言い方をすれば、誰か熱意ある人が作り出した機能から実装されていく。いずれにしても、開発者の自主性や探求心、および寛容なコミュニティがあってこそ、オープンソース製品は成長を続けているのだろう。

 そしてオープンソースソフトウェアやデータベースが好きな者同士、違うコミュニティに属していてもイベントで集えば和気あいあいとした雰囲気となるのもオープンソース系イベントのいいところ。最後にパネルディスカッションの一枚を。左からFirebird日本ユーザー会の木村明治氏、日本Hadoopユーザー会の濱野賢一朗氏、日本MySQLユーザ会のとみたまさひろ氏、日本PostgreSQLユーザ会の永安悟史氏である。データベースの世界はいま、大きく動きつつある。その動きが垣間見られた。

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2大オープンソースRDBMSの近未来が見えた!
Page 1
7年ぶりのメジャーバージョンアップ
可用性の面でライバルよりも一歩先に出た!
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実験版の機能が現実になるのが楽しみ! MySQL
ライバル同士も和気あいあい



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