アーキテクチャ・ジャーナル 環境に優しいインフラストラクチャ設計 Lewis Curtis2009/09/08 |
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●プレゼンテーション層の最適化
プレゼンテーション層は、統合サーバーベースのユーザー エクスペリエンスを提供および管理するデータ センター サービスを表します(図 6)。従来であれば Web サーバーがこれに当たります。また、ワイヤレス アクセス プロトコル(WAP)ゲートウェイにアクセスする共通ポータルなども含まれます。サーバーの無秩序な増設が発生しやすいのは、この階層です。それは、スケーラビリティ向上のため拡張に対応できる領域を確保しようと、すぐにサーバーが追加されるためです。しかし最近では、多くのアーキテクトが統合を進め、マルチホスト環境(各サーバーが複数の Web サイト環境を管理する)を構築するようになっています。この統合によりエネルギー消費量が削減されるだけでなく、エネルギー効率に優れたサーバー構成の標準化(たとえば、Web サーバーの電源を 1 つに限定するなど)が推進されるようになっています。
図 6: プレゼンテーション層の例 |
●ビジネス層の最適化
ビジネス インフラストラクチャ層には、多くの名前(ビジネス、アプリケーション、あるいはトランザクション層)があります。この階層では、重要なアプリケーション ビジネス ルール、ワークフロー ルール、トランザクション管理、統合の調整が実行されます。この階層で複数のアプリケーションを統合するには、より複雑な作業が必要です。これには多くの場合、仮想化が含まれます。仮想化を実行することにより、ビジネス層のシステムで Separations of Concern(関心事の分離)を適切に実施し、アプリケーション間の干渉による影響を軽減することが可能になります(図 7 を参照)。ビジネス層やリソース層のアーキテクチャに関して企業がしばしば陥る間違いは、サーバー構成の物理リソースを過剰に備えるというものです。これは、余分なエネルギーを消費するだけで、実際のところ処理能力の向上にはつながりません。たとえば、多くの部門は、サーバーで実際に必要とされるリソースの量をはるかに上回るプロセッサ、メモリ、ディスク容量を購入します。これは、スケーラビリティのためというよりは、当面の資本予算上の理由によります。追加コンポーネントの購入は、エネルギーの無駄な消費につながるだけでなく、多くの場合、割増料金をも発生させます。そのため時間の経過を考慮に入れるなら、通常はアップグレードを待つ方がコストを低く抑えられます(資本支出の削減に加え、エネルギー消費も抑えられる)。しかし、企業の資本予算モデルでは、エンタープライズ市場におけるこのような資金の用い方は節約になるとはいえ推奨されないのが普通です。
図 7: 仮想化の例、ビジネス層 |
●情報リソース層の最適化
情報リソース層は、インフラストラクチャの重要なデータ管理システムを表します。一般的な例には、データベース、ディレクトリ、ファイル システム、フラット ファイルがあります。図 8 の例では、データベースを使用しています。
図 8: データベースの例 |
通常、情報リソース層の環境では、大量の I/O とメモリを消費するアクティビティが多く実行されます。Windows Server 2008 Active Directories、ファイル サーバー、SQL Server 2008 は、単一の物理環境でデータベースとディレクトリを統合できる機能を備えています。
●エネルギーと環境の転移
環境の転移では、クラウド アプリケーション リソースのソフトウェアやサービスを活用して、ソリューション リソースの最適化を実現することができます。
転移によって、企業は電力、処理能力、環境影響を他のエンティティに移すことができます。この方法を用いれば、コストや複雑さを低減し、環境への影響を削減できる(サービス プロバイダーの環境影響指標の値の方が企業の指標値よりも優れている場合)可能性があります。現在では、インフラストラクチャ アーキテクチャ ソリューションは、すべての階層でサービス プロバイダーが提供する転移戦略を利用できるようになっています。
近年、環境団体はソリューションの運用にかかわる環境コストに加えて、エネルギー/ 環境の総コストを算出することを推奨しています。総環境コストとは、特定のサービスまたは製品の製造に関係するすべてのコストを指します。総環境コストの計算精度はさらに向上すると考えられています。ライフ サイクル アセスメントの業界への浸透に伴い、総環境コストは今後さらに広く活用されることになるでしょう。
INDEX | ||
[アーキテクチャ・ジャーナル] | ||
環境に優しいインフラストラクチャ設計 | ||
1.ビジネス目標の認識/エネルギー消費と環境影響 | ||
2.包括的な設計アプローチ/インフラストラクチャ環境の分割 | ||
3.プレゼンテーション層/ビジネス層/情報リソース層の最適化 | ||
4.環境に優しいアーキテクチャ設計のベスト・プラクティス | ||
「アーキテクチャ・ジャーナル」 |
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