連載:ASP.NET 4+“jQuery”でAjax開発

第2回 Visual Studio 2010とjQuery、これからのクライアントサイド開発

日本マイクロソフト 物江 修
2011/06/24
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ASP.NETにおける、これからのクライアントサイド開発

 現在のWebはさまざまな技術の集合によって支えられている。それぞれ作成元、仕組みが異なる技術同士が1つのシステムとして動作するには、標準化、一般化された仕様に従うことが肝要である。そしてそれは、時代の流れと技術の進歩の中で、着実に行われてきている。

Webクライアント開発の標準技術への流れ

 かつて、Webクライアントでは、アプリケーションとしての機能の不足を補うために、JavaアプレットやActiveXコントロールのようなプラグインの追加、独自のブラウザ拡張などが行われてきたが、W3Cの勧告するDOMや、JavaScriptのバージョンが上がるに従い、これらの独自の実装は減少し、標準化された技術を使用するのが主流となっていった。これにより製造元や使用技術の枠を越えた相互運用が可能になり、「Web API」や「マッシュアップ」というものが生まれてきたことは、まだ記憶に新しいところだろう。

 さらに今後、HTML5やCSS3が主流になり、標準の技術で、Webクライアントへの高度な機能実装が可能になってくると、プラグインや独自の実装というものはさらに不要になっていくだろう。この使用技術の一般化、標準化への流れは、かつて、マイクロソフトがASP.NET Ajax Libraryに行っていた投資をjQueryに切り替えたことからも明らかであり、今後はますます加速していくと考えられる。

Webクライアントの高機能化によるパラダイム

 Webクライアントに高度な機能実装が可能になるにつれ、アプリケーションとしての設計はサーバサイドからクライアントサイドにシフトしてくる可能性がある。

 例えば、jQueryのプラグインであるjQuery Templatesを使用すれば、サーバサイドから取得したJSONデータを、あらかじめ定義したデザインを適用し、動的に描画できるので、UI(ユーザー・インターフェイス)の生成をサーバサイドのロジックで行う必要はない。

 極端なことをいってしまえば、サーバサイドでRESTfulなAPIさえ提供しさえすれば、Webクライアント上でアプリケーションを作成できるのである。これは「MVCデザイン・パターンのViewの部分が切り離されて、静的なWebコンテンツ上に実装される」と考えても分かりやすいだろう。

 こういったサーバサイドの仕組みに依存しない、クライアントサイド主体のWebアプリケーションの開発方法を採用することで、コードの移植性は高まり、HTMLとJavaScriptの知識さえあれば、Web APIなどを使用したWebアプリケーションの開発が可能になるのである。また、現在、さまざまなクラウド・サービスでRESTfulなAPIが提供されているという状況もあり、そういったAPIを前述のような開発方法で使用してアプリケーションを作成する機会も今後は増えてくると考えられる。

HTML5とスマートフォン

 HTML5とCSS3の登場は、PC向けのコンテンツだけでなく、スマートフォン、タブレット向けのアプリケーション開発にも影響を与えるだろう。

 例えば、「プラットフォームの異なる複数のスマートフォン向けにアプリケーションを提供したい」と考えた場合、プラットフォームごとにネイティブなAPIを使用して個別に開発を行うことは効率的ではない。この場合、HTML5+CSS3で作成したWebアプリケーションであれば、リッチなUIを提供しながらもプラットフォーム非依存であるため、効率のよい開発を行える。特にデバイスごとに画面サイズが異なるモバイル向けアプリケーションでは、CSS3のMedia Queriesが力を発揮してくれるだろうし、スマートフォン向けのjQueryライブラリであるjQuery Mobileも用意されている。

 スマートフォン/タブレットに代表される、新しいモバイル・デバイスの寿命はPCよりも何倍も短く、かつ、最新のモバイル・デバイスが搭載しているWebブラウザのほとんどでHTML5がサポートされていることからも、これらの新しいモバイル・デバイス向けの開発にはHTML5+CSS3が欠かせないものになっていくだろう。

 全2回に渡り、ASP.NET AJAXとjQueryによるASP.NETにおけるAjax開発について紹介した。

 Visual Studio 2010は、jQueryの採用、SP1によるHTML5 IntelliSenseのサポートなど、クライアントサイド開発においては、より標準的な技術の採用の方向に進んでいる。また、jQueryやHTML5、CSS3の登場によるWebクライアントの高機能化によって、クライアントサイド開発の重要性は今後さらに高まり、その可能性は広がっていくと考えられる。

図 Visual Studioは、さらに重要性を増していくクライアントサイド開発を今後も支えていく

 今回の記事が皆さまの今後の開発の一助になれば幸いである。end of article

 

 INDEX
  [連載]ASP.NET 4+“jQuery”でAjax開発
  第2回 Visual Studio 2010とjQuery、これからのクライアントサイド開発
    1.Visual Studio 2010とjQuery
  2.ASP.NETにおける、これからのクライアントサイド開発

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