特集 クラウドの本命となるか? 進化するWindows Azure デジタルアドバンテージ 一色 政彦2009/12/11 2009/12/14 更新 |
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2009年11月17日(火)〜19日(木)の3日間、米国ロサンゼルスで開発者向けカンファレンス「Microsoft Professional Developers Conference 2009」(以降、PDC09)が開催された。
その初日の基調講演では、マイクロソフトの最新クラウド&サーバ戦略として、Windows Azureの最新機能や次期機能、それに伴うWindows Serverの新機能が紹介された。特に、下記のような業務システムやエンタープライズ・システムにかかわる重要な新機能が次々と発表された。
- Virtual Machineロール
- Drive
- Pinpoint
- “Dallas”
- “Project Sydney”
- AppFabric
- System Center“Cloud”
本稿は、これらの情報を開発者向けに解説する記事である。
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■Windows AzureとSQL Azureの機能強化ポイント
●Windows Azureの強化ポイント:Virtual Machineロール
PDC09のWindows Azure関連の発表の中で一番驚かれた機能の1つが、「Virtual Machineロール」(以降、VMロール)である。VMロールとは、2010年内にWindows Azureに追加される新しいロールである。
【コラム】「VM(仮想マシン)」と「VMロール」の違い |
「VM(仮想マシン)」と「VMロール」は概念が異なることに注意してほしい。例えば、現在の最新Windows Azure開発環境では下記のようなロールが利用可能であるが、これらのロールのインスタンスは、Windows Azure上ではすべて仮想マシン(VM)である。そのため、ロール・インスタンスのことを「仮想マシン(VM)」と表記することがあるのだ。つまり単に仮想マシン(VM)というと、とらえ方によっては、すべての種類のロール(WebロールやWorkerロールやVMロールなど)が含まれてしまうことに注意してほしい。 【C#/VB向け】 【F#向け】 |
VMロールは、その名前からも想像できるように、開発者が好きなようにカスタマイズ可能な仮想マシンである。このため、現在のWindows Azureでは動作しないような複雑なアプリケーションやレガシー・アプリケーションも動作させられることが期待される。
VMロールの実行は以下のような手順になる予定だ。
(1)まずWindows Azureポータルで、事前に定義された複数のWindows Serverイメージの中から1つを選択しマウントする。提供されるWindows Serverイメージの種類は、インフラストラクチャ環境が異なるイメージや、.NET Frameworkのバージョンが異なるイメージなどである(詳細不明)。
(2)次に、そのイメージにリモート・デスクトップでアクセスして、カスタマイズを行う。そこでは完全な管理者権限アクセスが与えられるので、そのイメージ上に好きなソフトウェアを自由にインストールできる。
(3)さらに、仮想マシンのスナップショットを取って保存できる。保存したイメージはWindows Azureのロール・イメージとして再利用可能で、カスタマイズ済みのロール・イメージ上にアプリケーションを配置できる。
VMロール以外に注目してほしいのが、ロール・インスタンスが任意のポート番号のTCPエンドポイントを外部に公開できる機能である。この機能により、キュー(Queue)サービスを使わずとも複数ロール間での通信(Inter-role Communication)が可能になったり、メールを受け取ったり、外部から接続されるアプリケーション・サーバを実行したりと、かなり便利になっている。
●Windows Azureストレージの強化ポイント:Drive
Windows Azureストレージでは、耐障害性の強化のため、ストレージの自動的な地理レプリケーション(Geo-Replication)が行われるようになった。そのレプリケーションは、下記に示す、各地域のデータセンター・ペアで行われる(※データセンターについては「特集:安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系」を参照。どの地域のデータセンターを選ぶかにより、日本に居住しているからアジア太平洋地域というわけではない)。
- 北アメリカ地域:シカゴ(北中央−米国)とサンアントニオ(南中央−米国)のペア。
- ヨーロッパ地域:ダブリン(北ヨーロッパ)とアムステルダム(西ヨーロッパ)のペア。
- アジア太平洋地域:シンガポール(東南アジア)と香港(東アジア)のペア。
1つのデータが遠く離れた2個所のデータセンターで保存されるため、より安全になるというわけだ。
また、ストレージで最も大きな機能強化点は、2010年2月に「ドライブ(Drive)」(もしくは「XDrive」)と呼ばれる新しいストレージが追加されることである。ドライブとは、ブロブ・ストレージを(ロール・インスタンス内で)通常のNTFSボリュームとしてマウントできる機能だ。このドライブへアクセスするには、通常のファイルIOのAPIを用いればよい。
●SQL Azureの強化ポイント:バックアップ機能
SQL Azureは、単にクラウド内のVM(仮想マシン)で実行されるSQL Serverというものではなく、クラウド用に実装・管理されたDaaS(Database as a Service)である。
そのSQL Azure内部では、複数のレプリカを自動作成することで、耐障害性を備えている。しかしそうはいっても、やはり独自にバックアップを行い、過去のある時点にいつでも復帰できるようにしておきたいというニーズは高いようである。
2010年には、そのバックアップ機能に完全対応していく予定だ。なお、現時点でそのようなバックアップを行いたい場合には、既存のSQL Server向けのツール(BCP:Bulk CopyツールやSSIS:SQL Server Integration Services)を使えばよい。
具体的には、2010年前半に「データベース・クローン(Database Clone)」というオンデマンドのデータベース・バックアップ機能が追加される。この機能により、同じデータセンター内、もしくは、ほかの地域のデータセンター内のSQL Azureに、バックアップ・コピーを作成できるようになる。
さらに2010年後半には「継続的バックアップ(Continuous Backup)」オプションという機能が追加され、バックアップ・スケジュールを構成設定できるほか、過去のある時点にデータベースを復元できるようになる。
■オンライン・マーケットプレイス
●パートナー企業向けの「Pinpoint」
Microsoft Pinpointは、ビジネス・アプリケーションおよびビジネス・サービスのオンライン総合カタログ&マーケットプレイスである。2009年12月11日現在、米国、英国、インド、オランダで提供されているが、日本向けのものはまだない。
Microsoft Pinpoint(http://pinpoint.com/)の表示例 |
マイクロソフトでは、「Exchange Online」「SharePoint Online」「Business Productivity Online Suite(BPOS)」などのオンライン・サービスを販売するマーケットプレイスを実現しており、これと同様に各ベンダが開発する自社製品をオンラインで販売したいという開発者のニーズから、このPinpointが生まれたという(製品を無償提供することも可能)。
将来的にPinpointは(Exchange Onlineなどと同じ)Microsoft Online Servicesと連携する予定で、つまりここで世界中のIT顧客がサービスやソリューションをライセンス購入できるようになる(※現時点では各ベンダが持つ製品販売サイトで購入してもらう必要がある)。
Microsoft Online Services内のExchange Onlineの表示例 |
また開発者側の視点では、PinpointはWindows Azure Platform開発者ポータルとすでに連携している。開発者ポータルの[Marketplace]タブをクリックすると、Pinpointへ製品を登録したり(※Microsoft Partner Networkと結び付けることが可能)、登録済みの製品に関する情報を表示したりできる。製品を登録すると、マイクロソフトによってその内容が確認され承認された後、Pinpoint.comに表示されるようになる。
Windows Azure Platform開発者ポータルにおけるMarketplace(Pinpoint)の表示 |
●データ発見・活用のための“Dallas”
そのPinpointの追加機能として、さまざまなデータを対象とするマーケットプレイスのCTP(コミュニティ技術プレビュー)が発表された。
“Dallas”という開発コード名のこのサービスは、無償データと有償データを扱うデータのオンライン総合カタログ&マーケットプレイスである。サービス自体はWindows AzureとSQL Azureで構築されている。
“Dallas”サイトの表示例 |
マイクロソフトは、この“Dallas”が業界の流れを大きく変えるものだと信じているという。ビジネス、政治、経済、ヘルスケア、環境など、われわれの周りはデータであふれている。それらのデータは、ただ存在するだけではその潜在能力を発揮できないので、活用できる形に変えていかなければならない。そうすることで、世界やシステムはデータによりつながっていくことができるという。
これを実現するため“Dallas”は、一貫した手順によるデータの発見と、データセットへのアクセス、販売ライセンス・モデルの構築を実現する。これによって、複数のプロバイダからのデータが容易に提供されるようになり、それらのデータを容易に結合させたりできる。
“Dallas”はまだCTPなので、これを利用するにはまずは招待コードを受け取る必要がある。「Dallas Developer Portal」を訪れ、[Click here to request an invitation code]をクリックして招待コード申請のメールを送る。招待コードの到着には何日かかかるようだ。
Dallas Developer Portalの表示例 |
Dallas Developer Portalにログインすると、カタログ一覧から任意のデータセットを購読(サブスクリプション)できる(※現在はすべてのデータセットは無償である)。購読したデータセットを探索するには、次の画面のような“Dallas”サービス・エクスプローラのページを利用する。
“Dallas”サービス・エクスプローラの表示例 |
左側のサービス・パラメータ(条件)を設定して[Preview(プレビュー)]ボタンを押すと、その条件に合致するデータがプレビュー表示される(表形式の表示のほか、Atom 1.0コードの表示が選べる)。[Analyze(分析)]ボタンを押すとExcelを使ってデータを分析できる。[Invoke as(〜として呼び出し)]ボタンをクリックすると、データを提供する実際のREST APIを呼び出す。
REST APIが提供するデータはAtomPubフィードである。このAtomPubフィードは、(Windows Azureストレージでも使われている)ADO.NET Data Services(「WCF Data Services」と名称が変更される)によるものである。
そのオープンなデータ・プロトコルは「OData」と呼ばれる。ODataは、マイクロソフトが業界標準Webデータ・プロトコルとして推しているもので、現在、これを活用するためのライブラリが.NET、Java、PHP、Ajax向けにある。
また、上記画面の左下の[Download C# service classes(C#サービス・クラスのダウンロード)]リンクをクリックすると、次の画面のようなコードが生成される。
“Dallas”により生成されるサービス・プロキシ・クラス |
今回PDC09ではまた、クラウドとオンプレミス、つまりWindows AzureとWindows Serverを連携させるための接続技術や、両者の技術を共通化する製品がいくつか発表された。後半では、これらについて説明していこう。
INDEX | ||
Windows Azure Platformの新機能 | ||
クラウドの本命となるか? 進化するWindows Azure | ||
1.機能強化ポイント/オンライン・マーケットプレイス | ||
2.クラウドとオンプレミスの接続&共通化 | ||
更新履歴 | |||||
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