.NETエンタープライズ Microsoft .NET概要 マイクロソフト コンサルティング本部 赤間 信幸2004/04/22 |
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4.Microsoft .NETと製品・技術の関係
ここまでの解説から、Microsoft .NETとは、あらゆる情報やデバイス、人をつなぐ新たな次世代型ソフトウェアの在り方を示すコンセプトでもあることが分かる。現在多くの人々が持っている「ソフトウェア」の概念をさらに広げ、柔軟な相互接続によって次世代型ソフトウェアが実現されていくという考え方、そしてそれを実現するためのマイクロソフトのトータルソリューション、それがMicrosoft .NETなのである(図3)。
ここで注目して頂きたいのは、Microsoft .NETはある特定の製品リリースで実現される『機能』ではない、という点である。.NETはソフトウェアの新しい『在り方』を示す未来像のようなものであり、現在の一枚岩のようなソフトウェアが徐々に変革を遂げていった、その先にある姿であると言える。
しかしながら、Microsoft .NETに関して、以下のように考えている方も多いのではないだろうか?
図3 Microsoft .NETの目指すもの |
- Microsoft .NETとは、.NET FrameworkとVisual Studio .NETのことを指す。
- Microsoft .NETとは、マイクロソフトの製品で実現できるXML Webサービスのことを指す。
つまり、Microsoft .NETというソリューションコンセプトを、具体的な製品や機能に置き換えて考えている方も多いのではないだろうか、ということである。実はこのような置き換えをして考えてしまうと、Microsoft .NETの本質も見失い、また、.NET FrameworkやVisual Studio .NETの本当のメリットも見逃すことになってしまう。なぜなら、Visual Studio .NETや.NET Frameworkは、Microsoft .NETの未来像を実現するためだけに作られた製品ではないからである。
5.ソフトウェアの未来像としての“.NET”と今日のシステム開発現場とのギャップ
実際、翻って皆様の日常的なシステム開発の現場を考えてみると、ここまで述べてきたような.NETの未来像とはかなりの隔たりがあるはずである。現実的には今でもC/S型(クライアント/サーバ型)あるいはWebアプリケーション型のシステム開発案件がほとんどであり、オンラインのアプリケーション連携を要求されることは、大規模案件でもない限りはほとんどないと思われる。実際、弊社コンサルティングサービスが関与しているような大規模案件であっても、サービス連携を主体として動く"次世代型ソフトウェア"はほとんどなく、その多くはWebアプリケーション型のシステム開発案件である。
Microsoft .NETは先に述べたようにマイクロソフトの長期的ソリューションであり、マイクロソフト自身も、その将来像と今日のシステム開発現場で発生する問題との間に大きな隔たりが存在する場合があることを十分認識している。また、現実問題として.NETが示すソフトウェアの将来像にしても、技術的にはまだ不足している部分がある。例えばXML Webサービスに関して言えば、WSDLやSOAPといった低水準プロトコルに関してこそ標準化がなされているものの、トランザクション制御やワークフロー制御などといった高水準プロトコルの標準化となると、未だ道半ばという状況にあることは否めない。
確かに将来的には、Microsoft .NETが示すような次世代型ソフトウェア像が主流となっていくのかもしれない。しかし端境期である今日においては、そうした未来像を意識しつつも、目の前にあるシステム開発案件を確実にこなしていくことがシステム開発の現場には求められるはずである。
実は弊社の製品である.NET FrameworkおよびVisual Studio .NET(図4)は、こうした状況を踏まえて開発されたものであり、「今日のシステム開発現場で起こっている問題の解決」と「未来像の実現に向けた一歩」との両方を意識して開発されている。このため.NET FrameworkとVisual Studio .NETは、使い方によっては今まさに皆様がシステム開発の現場で抱えている問題を解決し得るソリューションとなる可能性が高いのである。
次の章では、.NET FrameworkとVisual Studio .NETが「実際の」「今の」アプリケーション開発にどのように役立つのかを具体的に見ていくことにする。
図4 Visual Studio .NETの製品パッケージ |
6.Microsoft .NET概要のまとめ
本章で解説した事項のキーポイントについてまとめると、以下の通りとなる。
■今後、サービス連携を用いたアプリケーション構築の重要性が高まると考えられる
IT業界を取り巻く環境は加速を続けており、それゆえ今後は、今まで以上に迅速なアプリケーション構築が求められるようになっていくと予想される。したがってそれを実現するためには、今まで以上に「再利用」をしていく必要性がある。
再利用を困難としている問題のうち、設計的な難しさは未だ一般解が存在しないものの、接続手段に関してはXML Webサービスと呼ばれる方法にIT業界全体が向かいつつある。
■Microsoft .NETとは将来のアプリケーション像を見据えた長期的ソリューションである
Microsoft .NETは、こうしたITビジネス環境の変革を踏まえたマイクロソフトの長期的ソリューションである。
Microsoft .NETはソフトウェアの未来像を示すものではあるが、一朝一夕に実現できるものではなく、何かしらの製品によって実現される機能でもない。このため、Microsoft .NETを現在の具体的な製品や機能のみに結びつけて理解しようとすると、誤解に繋がる危険性があるのでご注意いただきたい。
■Visual Studio .NETと.NET Frameworkは今日のシステム開発の現場の問題を解決するものである
今日、我々は将来像を見据えつつも、目の前のシステム開発案件で発生する問題をクリアしていかなければならない。その点に関して、マイクロソフトは未来だけを見ているのではなく、現在システム開発現場で起こっている問題にもきちんと目を向けている。そしてVisual Studio .NETや.NET Frameworkはそれらを解決しうる可能性を持っている。
次章以降を通して、今、皆様がシステム開発現場で抱えている問題を解決するために、Visual Studio .NETや.NET Frameworkが活用できないかを是非考えてみて頂きたい。これらの開発プラットフォームは、多かれ少なかれ何らかの形で皆様のお役に立てるはずである。
.NETエンタープライズWebアプリケーション開発技術大全 Vol.1 .NET Framework 導入編 |
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定価 2,625円(税込み) 赤間 信幸(マイクロソフト株式会社コンサルティング本部) 著 B5変型判/約160p ISBN 4-89100-427-4 日経BPソフトプレス発行 日経BPソフトプレスの書籍紹介ページへ マイクロソフトプレスの書籍紹介ページへ |
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