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Visual Studio.NETベータ1日本語版の入手法を総括するデジタルアドバンテージ 2001/02/01 |
Visual Studio.NET(以下VS.NETと略)は、マイクロソフトの次世代ソフトウェア構想、Microsoft.NETに準拠した最新のソフトウェア開発環境である。このVS.NETについては、Microsoft.NETの構想が発表された直後、2000年7月末に横浜で開催されたProfessional Developer Conference(PDC)において、アルファ版とも呼べるVS.NET PDC Tech Preview版(英語版)が一部の参加者に提供された。このVS.NET Tech Preview版については、別稿の「Visual Studio.NETファースト・インプレッション」が詳しいので参照されたい。
しかしこのPDC Tech Preview版は、基本的にPDCでのデモンストレーションを実行することだけを念頭に置いてテストされたバージョンであり、組織的・系統的なソフトウェアの検証はなされておらず、また最終版のVS.NETで予定されるすべての機能が実装されているわけではなかった。
これに対し2000年12月には、基本的にすべての機能を組み込み、総合的な評価が可能になったVS.NETのベータ1がマイクロソフトより公開された。ライセンスの制限により、このベータ1で実運用に向けたシステム開発はできないものの、VS.NETのあらゆる機能を実際に試用できるようになったわけだ。現在VS.NETベータ1は、いくつかの方法でマイクロソフトからプログラマに向けて提供されている。本稿では、まだVS.NETベータ1を入手していない読者のために、入手法とその内容について総括する。
入手法1:MSDNユニバーサル会員向けダウンロード・サービス
VS.NET ベータ1は、マイクロソフトが提供する開発者向け情報サービス、MSDN(Microsoft Developer Network)のユニバーサル会員向けダウンロード・サービスによって、2000年12月11日より提供が開始された(マイクロソフトのVS.NETベータ1日本語版の入手方法の解説ページ)。ただしこのサービスが利用可能なのは、MSDNユニバーサル会員のみに限定される。MSDNユニバーサルは、MSDNのなかでも最上位のサービスで、Visual Studioのような開発環境から、Officeなどのアプリケーション、BackOfficeに至るまで、マイクロソフトのほとんどのビジネス・パッケージが提供対象となっている(これに対し、1レベル下の「プロフェッショナル」では、開発環境やBackOffice、Office製品などは提供されない。詳細はマイクロソフトのMSDNのホームページ)。非常に強力な開発者支援サービスではあるが、年会費は初年度38万円(アジア版)と少々高額だ(プロフェッショナル版は9万4800円、いずれも原稿執筆時点での価格)。ソフト開発を本業とするソフトハウスならそれでも安いくらいだろうが、たとえば「.NETを本格的に取り入れるかどうか、実際に評価してみたい」というレベルでは、簡単には支払えない金額だろう。
また仮に読者がMSDNユニバーサルの会員であり、ダウンロード・サービスを利用できたとしても、VS.NETベータ1一式を入手するには、700Mbytes超のファイルをインターネット経由でダウンロードしなければならない。幸い、MSDNのダウンロード・サービスでは、ダウンロードの機能性を大幅に向上させてくれるActiveXコントロールを最初にダウンロードし、これをフロントエンドとして利用するようになっている。これによりMSDNダウンロード・サービスでは、以前に中断されたダウンロード処理を途中から継続したり、複数ファイルのダウンロードを一括して指示し、それらを逐次ダウンロードさせたりできる。しかしそうはいっても、700Mbytesというサイズ自体が小さくなるわけではないから、インターネットへの接続回線が細い環境では、ダウンロードに多大な時間がかかったり、他人に迷惑をかけたりすることになるだろう。
もっともMSDNの会員には、年に4回、提供対象のソフトウェアがCD-ROMで送付されるので、ユニバーサル会員なら、このCD-ROMの到着を待つという手もある。
入手法2:Visual Studio.NETベータ 1 日本語版フルフィルメント・サービス
それでは、MSDNユニバーサル会員でない人はどうするか。1つの方法は、マイクロソフトが行っている、実費でのCD-ROM配布サービスを利用することだ。これは「Visual Studio.NETベータ 1 日本語版フルフィルメント・サービス」と呼ばれているもので、マイクロソフトのWebサイトから申込用紙のWordドキュメントをダウンロードし、これに必要事項を記入して、マイクロソフトの事務局宛にFAXにて送信すると、後日VS.NETベータ1日本語版のCD-ROM一式(5枚組)が送付されるというものだ。前述したとおり、これには実費負担が必要で、3150円を銀行振込、またはクレジット・カードにて支払う必要がある。
このサービスで送付されるキットの内容は次のとおりである。
媒体 | 内容物 |
CD-ROM | Visual Studio.NETベータ1日本語版 Disc 1 |
CD-ROM | Visual Studio.NETベータ1日本語版 Disc 2 |
CD-ROM | Windows Component Update |
CD-ROM | SQL Server 2000 Enterprise Edition 120日間評価版 |
CD-ROM | Visual Studio.NETドキュメント |
冊子 | Visual Studio.NET Beta 1 Guided Tour(日本語版) |
冊子 | Visual Studio.NET Beta 1 Reviewer's Guide(日本語版) |
Visual Studio.NETベータ 1 日本語版フルフィルメント・サービスで提供されるキットの内容 |
マイクロソフトのWebページではきちんと説明されていないが、このサービスでは、VS.NET自体やドキュメントを含む5枚のCD-ROMに加え、WebサービスやWindows Formsアプリケーション開発の概要について解説した「Visual Studio.NET Beta 1 Guided Tour」と、VS.NETの特徴について解説した「Visual Studio.NET Beta 1 Reviewer's Guide」という、いずれも日本語の冊子が添付されてくる。これらのドキュメントは、ドキュメントCD-ROMの中に収録されているものを印刷・製本したものだ。
キットの内容 |
このフルフィルメント・サービスでは、VS.NETベータ1やドキュメントなどを含む5枚のCD-ROMに加え、“Reviewer's Guide”と“Beta 1 Guided Tour”という2冊の冊子が添付される。 |
入手法3:雑誌添付ハガキ・フルフィルメント・サービス
実際には、上の実費配布サービスの3150円を節約する方法もある。それがこの「雑誌添付ハガキ・フルフィルメント・サービス」である。
これは、コンピュータ関連雑誌に添付される申し込みハガキを使って申し込むと、無償でVS.NETベータ1日本語版のCD-ROMを送付してもらえるというサービスだ。この貴重なハガキが添付される雑誌として、原稿執筆時点(2001年1月末時点)では、次の3つがある。
発売日 | 雑誌名 | 発行元 | 本体価格 |
2001/01/18 | MSDN magazine 2月号 | アスキー | 1762円 |
2001/01/31 | Windows 2000 Magazine No.4 | アスキー | 1600円 |
2001/02/02 | Visual Basic Magazine 3月号 | 翔泳社 | 1314円 |
VS.NETベータ1の申し込みハガキが添付される雑誌 |
くだんのマイクロソフトの説明ページを読んでもよく分からないのだが、これはまったくの無償サービスで、上記雑誌に添付されるハガキで申し込めば、1円も払うことなくVS.NETベータ1日本語版の5枚組CD-ROMを入手することができる。送付されるCD-ROM自体は、前述した実費負担のフルフィルメント・サービスで送付されるものとまったく同一である。ただし、このサービスで送付されるのはCD-ROMのみで、冊子は添付されない。すでに述べたとおり、冊子のデータ自体は、CD-ROMの中に収録されているので、紙の状態で読みたければ、自分でプリントアウトすればよい。
真意のほどはさだかでないが、最初はCD-ROM自体を雑誌付録として添付しようとしたが、さすがにCD-ROM5枚は収録できないということで、このようなことになったのだろう。
■
1人でも多くのプログラマにVS.NETベータ1に触ってもらいたいという強い意気込みは感じるのだが、結果的には、有償配布サービスと、雑誌添付ハガキを利用した無償配布サービスの2本立てになってしまい、両者の違いは2つの冊子だけという分かりにくい構成になっている。本稿を参考にして、御自分にとって最も便利な方法で入手していただきたい。
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