Insider's Eye

Microsoft PDC 2001レポート(2)


デジタルアドバンテージ 遠藤孝信
2001/11/02

.NET My Servicesの利用料金が明らかに

 注目の.NET My Servicesについては、サービス・プラットフォーム担当副社長のボブ・マグリア(Bob Muglia)氏が説明を行った。この中で同氏は、気になる.NET My Servicesの料金について述べた。これによると、ユーザー認証を行うパスポートや、Windows Messengerを通じてユーザーに通知を行う「.NET Alerts」、ユーザーの現在所在を取得可能にした「.NET Presence」などは無償でユーザーが使用できるが、ユーザーの予定表を保持する「.NET Calendar」や、メールを保持する「.NET Inbox」など、ストレージが必要となるサービスに関しては有償になるという。逆に、サービスを提供する側でも、例えばユーザーに対して.NET Alertsによりメッセージを送るようなアプリケーションを運営する場合には、企業は年間1万ドル(1ドル120円換算で約120万円)と、アプリケーションのセットアップ料として1500ドル(同18万円)をMicrosoftに支払わなければならない(プレゼンテーション資料を見ただけでははっきり分からないが、セットアップ料は、サービス・プログラムから.NET Alertsを使えるようにする際に、最初に1回だけ支払う必要があるものと思われる)。

 このセッションの最後に、.NET My Servicesのスケジュールが公開された。これによると、.NET My Servicesをインターネット経由でテストできるようになるのは2002年第2四半期(2002年4月〜6月)、最終的なサービスとして.NET My Servicesを利用できるようになるのは第4四半期(2002年10月〜12月)となっている。

.NET My Servicesのスケジュール
この資料によれば、.NET My Servicesをインターネット経由でテストできるようになるのは2002年第2四半期(2002年4月〜6月)、最終的なサービスとして.NET My Servicesを利用できるようになるのは第4四半期(2002年10月〜12月)だという。CYはCalendar Yearの略。

 23日に行われた3つのジェネラル・セッションのスピーチ内容は、米MicrosoftのWebサイトで公開されている(23日に行われた3つのジェネラル・セッションの全文[英文])。

.NET My Services SDKを配布

 PDC 2001の参加者全員には、最新の開発環境などを収めた6枚のCD/DVDが入ったデイパックが配布された。これらには、以下のようなプロダクツが納められている。

Microsoft .NET Framework Release Candidate
Visual Studio .NET Release Candidate(DVD)
.NET Compact Framework Pre-Release
Smart Device Extensions for Visual Studio .NET Pre-Release
.NET My Services SDK Alpha
BizTalk Orchestration for Web Services (Prototype)
Tablet PC Platform SDK Beta
Mobile Internet Toolkit Release Candidate
UDDI SDK
SOAP Toolkit 2.0 SP2
Windows 2000 Server Evaluation
SQL Server 2000 Evaluation Edition CD (120日間限定)
PDC 2001参加者に配布されたCD/DVDの中身

待ちに待ったHailStormの全貌

 注目はやはり、「.NET My Services SDK」と「Visual Studio .NET RC版」である。マイクロソフトの次世代サービスを支える基盤として華々しく発表された「HailStorm」だが、開発者から見た実態はベールに包まれたまま、明らかにされなかった。今回の.NET My Services SDKは、この「HailStorm」の全貌を明かす初めての開発キットとなるものだ。.NET My Servicesは、マイクロソフトの今後の戦略を大きく左右するものである(これに比べると、.NET FrameworkやVisual Studio .NETは、それぞれ単なるプラットフォームに、開発環境にすぎない)。今回発表された.NET My Services SDKにより、プログラミング・インターフェイスやデータ構造などを含め、機能的に何ができるのかが明らかとなった(.NET My Services SDKは、現時点ではインターネット上では公開されていない。Microsoftの.NET My Servicesのページ[英文])。

 CD/DVDディスクとともに、参加者には約500ページもある書籍『Microsoft .NET My Services Specification』も配布された。これは.NET My Servicesの各サービスのXMI(XML Messaging Interface:これまでWindowsなどのライブラリ関数群はAPIと呼ばれていたが、.NET My Servicesのプログラミング・インターフェイスはこのように呼ばれる)の詳細について記述したものだ(Microsoft Press『Microsoft .NET My Services Specification』のページ)。

.NET My Servicesのサービス内容
.NET My Servicesの最初のリリースでは、14のサービスが含まれる予定である。ただし今回提供されたSDKには、「.NET Documents」と「.NET Inbox」は含まれていなかった。

 .NET My Servicesの最初のリリースには14のサービスが含まれる予定だが、今回提供されたSDKには、このうち、「.NET Documents」と「.NET Inbox」が含まれていなかった。提供されたSDKをインストールすれば、これ以外のサービスを手持ちのPCで動かし、それらのサービスを利用したアプリケーションを実際に試作することができる。この際のアプリケーションの実行に必要な、擬似的な認証を行うPassportサイトや、他のサービスを見つけるための「.NET Services」サービスもSDKには含まれている。

Visual Studio .NET RC版を提供

 開発環境であるVisual Studio .NETについては、現在公開されているベータ2の次のバージョンである「Release Candidate(RC)版」がDVD-ROMで配布された。このVS .NET RC版は、製品版以前に公開される最後のテスト・リリースである。

 VS .NET RCでは、Pocket PCやPocket PC 2002などのPDAなどに搭載される予定の「.NET Compact Framework」と、そのアプリケーションをVisual Studio .NETで開発するための「Smart Device Extensions」を使用することができる。また.NET My Services SDKを使用するためにも、このRC版は必要だ。

 ただし、ベータ2に含まれていたいくつかの特徴は取り除かれている(これには最適化も含まれている)。というのも、このRC版には、製品版のリリース直後に広く配布される予定の、トライアル版のVisual Studio .NETが含まれているからである。このため今回配布されたRC版は、2002年2月28日以降は起動できなくなるようになっている。

 したがって今回配布されたRC版は、ベータ2をインストールしていないユーザーや、上記のSmart Device Extensionsや.NET My Services SDKを試してみたいユーザー向けとされている。

 VS .NET RC(英語版)は、インターネット上のMSDNサブスクライバー・ダウンロードで公開されており、MSDNのユニバーサル会員ならダウンロードできるようになっている。なお、これまで無償でダウンロードできた.NET Framework SDKのRC版は、原稿執筆時点(2001年11月初旬)ではまだ公開はされていないようだ(Visual Studio .NET Release Candidateの入手方法[英文])。

 ベータ1からベータ2ほどの劇的なものでないが、.NET Frameworkについては、RC版でわずかな変更が加えられている。これについては、次のリンクより詳細な情報を得ることができる(ドキュメントのタイトルは「RTM版(製品版)でのAPIの変更点」となっているが、リンクはRC版のドキュメントに記述されていたものである)。

RTM版におけるベータ2からのAPIの変更点(圧縮ファイル)


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