Insider's Eye
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デジタルアドバンテージ 2004/02/07 |
マイクロソフト? 今度は何を売りつけにきたんだい?
何でも無償で手に入るオープン・ソフトウェア陣営が貧しくも美しいソフトウェア開発に心血を注ぐ中で、マイクロソフトはコンピュータ市場の利益を独り占めにして高笑いしている。ここまで極端ではないにせよ、この手の間違った先入観にとらわれて、マイクロソフトの技術や製品を根拠なく拒否している教育関係者は少なくない。
歴史的な経緯には、このような誤解を生む出来事があったのかもしれないが、いまのマイクロソフトは、こうした間違った先入観を払拭して、教育関係者に自社のテクノロジや開発環境製品を使ってもらうことに躍起だ。このための具体的かつこれまでにない強力なインパクトのあるアクションとして、3月30日に開催を予定しているのが日本初の学生向けイベント「The Student Day」である。マイクロソフトの説明によれば、これにより「プログラミング、Web制作、ゲーム制作に興味を持つ若い学生を対象として、その学生たちの可能性を最大限に引き出し、夢の実現を積極的にサポートする」という。
今回のThe Student Dayでは、マイクロソフトの「初代」伝道師として日本にWindowsの礎を築いた米Microsoft社副社長の古川享氏、開発マーケティング部門でらつ腕を振るう田中達彦氏の特別講演に加え(いずれも予定)、先にマイクロソフトが開催を発表している世界規模の学生向けプログラミング・コンテスト「Imagine Cup」の日本代表チームの決定も行われる。Imagine Cupの詳細については、本サイトの以下の記事を参照されたい。
参加者全員にVS.NETアカデミック版をプレゼント
The Student Dayは、学生なら誰でも無償で参加できる。参加者予定人員は1000名(参加希望者多数の場合は抽選)。大学生や大学院生ばかりでなく、中学生、高校生、専門学校生も対象に含まれる(引率の教員も参加可能)。鉄は熱いうちに打て、ということだろう。
無償イベントであるにもかかわらず、The Student Dayの参加者特典は豪華だ。マイクロソフトの最新開発環境「Microsoft Visual Studio .NET Academic Version 2003(以下VS.NET)」が、イベント参加者全員にもれなくプレゼントされる(そしてさらに、幸運な10名にはXboxも当たる)。
アカデミック版とはいえ、有償パッケージをこれだけ大規模に無償提供したマイクロソフトのイベントは過去にあったろうか。並々ならない意気込みを感じるスケールである。読者が学生で、まだVS.NETを持っておらず、Windows環境でのソフトウェア開発にわずかでも興味があるなら、参加しない手はない。
参加登録は2種類ある。1つは個人、もう1つは団体登録である(いずれもThe Student Day公式Webサイトから申し込みが可能)。このうち個人登録では、定員以上の申し込みがあった場合は抽選になってしまうが、団体登録は先着順で、早期に申し込めば確実に参加できるようだ。
「開発環境が優れている」だけでは生き残れない
正直なところ、予算の少ない教育市場には、ビジネス的なうまみはそれほどないはずだ。それでもこのようなイベントを開催する背景には、同社の中長期的なエンジニア獲得戦略が大きく変化したことを物語っている。ここ最近、大きくかじを切ったマイクロソフトのアカデミック戦略について、筆者が感じることを以下に述べておこう。
いま、あなたの身近にいる理工系学生に授業で使っているプログラミング言語について聞けば、十中八九は「Java」という答えが返ってくるだろう。この理由の1つには、UNIXと教育機関の長い蜜月関係があり、UNIXプラットフォームで広く浸透したJavaの影響力がある。
UNIXが身近にある学校で、プログラミング教育用言語としてJavaが使われるのは自然なことだ。しかもJavaは、学生がプログラミング教育の目的で利用する分には無償で使うことができる。
しかし少し前まで、無償で手に入るJavaの開発環境は、基本的にコマンドライン・ベースの貧弱なもので、本格的なGUIベースの統合開発環境を手に入れるには有償製品を購入する必要があった。統合開発環境の機能性と使い勝手のよさでは、マイクロソフトが圧倒的にリードしており、職業プログラマが仕事でソフトウェアを開発する環境として、より高い生産性を提供できるという点でほかを圧倒的にリードしていた。
ところが無償で利用できるオープン・ソースの統合開発環境、Eclipseが登場してからというもの、開発環境におけるマイクロソフトの優位性に黄色信号がともった。Eclipseはいまもなお、Java言語の主流開発環境として急速に利用者を増やしつつある。「2004年はEclipseがブレークする1年になる」とにらむ業界関係者は少なくない。
プログラミングの学習ならJava、という暗黙の常識にくさびを打ち込み、マイクロソフトのテクノロジを担いでくれる将来のプログラマ育成に投資する。マイクロソフトは、同社にとっても「未来へのステップ」となる息の長いアカデミック戦略に本腰を入れ始めたと考えてよいだろう。
.NET Framework上でのプログラム開発を経験したプログラマは、誰もがその開発生産性の高さを評価している。しかし一見して見栄えのする統合開発環境とは違って、そのよさは使ってみて初めて分かるものだ。お金はないかもしれないが、フレッシュな頭脳と未来への可能性を持った学生に、できるだけ敷居を低くして.NETへの第一歩を踏み出してもらう。地道ではあるが、大いなるマイクロソフトの新たなチャレンジに注目したい。
「The Student Day」開催概要 「The Student Day」は2004年3月30日に開催される。中学生、高校生、専門学校生、大学生、大学院生、引率の教員などを対象に、1000名まで参加できる。イベントに参加するには事前登録が必要で、応募者多数の場合は抽選になる。団体登録も可能。費用は無償である。事前登録は下記のThe Student Dayの公式サイトから行うことができる。 ・The Student Day公式サイト |
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