連載
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■3. Subversionとの連携
バージョン管理ソフトウェアとの連携機能の1つとして、Tracではブラウザからバージョン管理内のソース・コードを参照することができる。
図8 ソース・コードの変更内容の確認 |
このようにブラウザ上で「コードに対してどのような変更が行われたか」を示すソース・コードの差分を確認できる。例えばチーム内でコード・レビューを行う際に、変更したコード部分だけをレビューできるようになるため、効率的にレビューを行えるようになる。
また、TracではSubversionのコミット・イベントをフックすることができる。この機能を利用することで、Subversionのコミットと同時に、Trac上のチケットに対する何らかの操作を行うことが可能となる。例えばSubversionとの連携を使用しなければ、毎回コーディング作業が完了するたびに、ブラウザからTracのチケットを変更する必要があるが、この連携機能を利用することでブラウザを利用することなく、Tracのチケットに対して変更を加えられる。
次の画面は、実際にSubversionへのコミット時にTracチケットをクローズするためのコミット・コメント入力を行っているところだ。
図9 Subversionへのコードのコミット時にTracチケットをクローズする例 |
このようにSubversionへのコミット時のコメントとTracチケットを関連付けることで、図10のように後から「どのソース・コードに対して、どのような変更を行ったか」を確認できる。
図10 ソース・コードに対する変更の追跡 |
慣れないうちはTracチケットの登録やコメントの入力が煩わしく感じられるかもしれない。しかし、何か障害が発生した際に「誰がどのような変更を加えたか」を追跡できることで、問題解決を素早く行えるようになる。問題が発生してからあたふたするよりも、問題発生時に素早く解決するための仕掛けを最初から用意しておくことで、普段の.NET開発を一段とイケてるものへと高められるだろう。
■4. まとめ
今回の記事ではTracの簡単な使用方法とともにSubversionとの連携機能について紹介した。バグ管理/タスク管理ソフトウェアはそれ単体だけで利用するのではなく、バージョン管理ソフトウェアと連携できるものを利用することで、その効果が2倍にも3倍にもなるものである。特にTracは、Subversionへのコードのコミット時に、チケットに対する操作を行えるので、慣れてくると非常に快適にコーディング作業が行える。イケてる.NET開発者にとって、欠かすことのできないツールとなることだろう。
とはいえ、TracもSubversionも道具であることには変わりがないので、生かすか殺すかは使う人次第となる。Tracを使ったとしてもチケットに詳細を記入しない、Subversionへのコミット・メッセージを入力しない……というのでは宝の持ち腐れとなってしまう。TracとSubversionの導入を検討している方は、併せてそれらのツールの正しい使い方について検討し、チームとして最低限守るべきルールも決めていくとよいだろう。
最後に、バージョン管理とタスク管理は、.NETにかかわらず技術者として必ず知っておかなければならない基本中の基本である。バージョン管理とタスク管理をちゃんとやっていないな……という方は、イケてる開発者への第一歩としてTracとSubversionを使ったバージョン管理とタスク管理にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
INDEX | ||
[連載]オープンソースで始めるバージョン管理&タスク管理 | ||
第3回 Tracによるタスク管理でもっとイケてる.NET開発 | ||
1.Tracとは? | ||
2.Tracの基本的な利用方法 | ||
3.Subversionとの連携 | ||
「オープンソースで始めるバージョン管理&タスク管理」 |
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