特集PDC05レポート巻き返しが始まるMicrosoftのRSS/Ajax戦略吉松 史彰2005/10/06 |
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「PDCの法則」によると今回のPDCは期待外れ!?
Microsoftのイベントでは、開始の合図としてタイトルバックにビデオが流れることが多い。ビートのきいたBGMに乗せて目まぐるしく変化する映像が流れ、最後に音楽のフェードアウトに合わせてそのイベントのロゴが浮かび上がってくる。
今年のPDC05(Microsoft Professional Developers Conference 2005)のビデオには、これまでのPDCで使われたロゴがクルクル入れ替わりながら映し出された。これらのロゴはAdam Nathan氏のブログでまとめて見ることができる(※1)。
※1 また、昔から多くのPDCに参加されているイースト株式会社の下川和男さんの「旅の記録」には、過去のPDCの様子が紹介されている。 |
筆者のPDC暦は2000年からだが、2000年におっかなびっくり行ってみた「.NET PDC」で味を占め、2001年に大きな期待とともに行ってみた「Hailstorm PDC」(※2)でがっかりし、2003年の「WinFX PDC」(※3)で再度期待の芽が出て、という段階を踏んできた。
そういうわけで、今回のPDCは期待半分ながら、もう半分はがっかりさせられることをも覚悟しながらの参加だった。実際、がっかりさせられる兆候はあった。PDC 2003の段階で、すでにそこにある技術だったはずのVisual Studio 2005は、2005年の半ばを過ぎてもまだ出荷の声が聞こえない(本稿執筆時)。PDC 2003で華々しくデビューしたWinFXとAvalon、Indigo、WinFSの計画は、その後縮小や延期を重ねている。
かのDon Box氏は、自身のブログの2004年末のエントリで2005年に起きることを予言しているが、その6番目の予言として「PDC 2005は期待外れの印象を与えて終わる」としている。理由は、PDCは隔回で良いものと悪いものがあり、今回は悪い方の番だから。この予言は2005年前半を通して「PDCの法則」として知れ渡った。
とはいえ、5時間遅れのフライトでロサンゼルスに入り、16のブレイクアウト・セッションと2つの基調講演に参加してみれば、そこにはやはり報告に値する内容がいくつも紹介されていた。
PDC05の3つのテーマ
400を超えるブレイクアウト・セッションが用意され、14ものセッションが同じ時間枠で同時進行するイベントに、たった1つのテーマを読み取ることなどできるわけはないが、そこをあえて、筆者が興味を持って参加してみたセッションだけから読み取ったテーマを挙げると、それは次のようになる。
「Microsoftは再び追いかける立場になったことを実感し、先行者に対する回答を用意してきた」 |
過去3回のPDCでは、Microsoftは業界のリーダーとして自社プラットフォーム用の新しいテクノロジを多数発表してきた。.NET Framework、.NET My Services、WinFX。しかし今回のPDCで発表された技術は、これまでと同じ意味で新しい、というものではない。
すでに実践している先行者がいて、その先行者にMicrosoftにとっての最大の財産、つまり自社プラットフォーム向けにアプリケーションを書いてくれる開発者たちを奪われ始めている既存技術やコンセプトに対してMicrosoftなりの回答を掲示し、開発者に対してMicrosoftも捨てたものではないと思わせるべく頑張った、それがPDC05のテーマだったように思えた。
それでは、すでに先行者がいて、Microsoftは対応が遅れていて、日々開発者が奪われている技術トピックとは何か。PDC05で筆者が見たものは、次の3つにまとめられると思う。
- RSSへの取り組み
- Ajaxと新世代Webアプリケーション
- 動的プログラミング(言語)
もちろん、“Avalon”“Indigo”“WinFS”など、PDC 2003で「“Longhorn”と仲間たち」として発表された技術についても、PDC 2003からの進化を解説するセッションがたくさんあった。いずれもコードネームだったこれらの技術・製品には正式な名前も付けられた(ただしWinFSは除く。詳細については「Microsoft PDC 2005で発表された次世代テクノロジと新製品」を参照)。
また、「Microsoft Expression」と呼ばれる新しい開発者・デザイナー向けツールが発表され、「Office 12」のデモも行われるなど、新しいパッケージ製品の紹介もあった。しかし、PDC05のハイライトとして筆者の記憶に残ったのはやはり上記の3つのトピックだった。
以降、これら3つのトピックについて、Microsoftが用意した回答とは何だったのか、掘り下げてみたい。なお、ソース・コードなどの細かい内容は今後間違いなく変更されるので、本稿では特にその構文や動作については、紹介はするものの重視はしない。それよりも、全体的な流れや雰囲気を伝えられればと思う。
INDEX | ||
[特集] PDC05レポート | ||
巻き返しが始まるMicrosoftのRSS/Ajax戦略 | ||
1.PDC05の3つのテーマ | ||
2.RSSへの取り組み | ||
3.Ajaxと新世代Webアプリケーション | ||
動的プログラミング言語へと発展するC# 3.0とVB 9.0 | ||
1.動的型付言語への憧憬 | ||
2.型推論とラムダ式/Extension Methodsの導入 | ||
3.クエリ構文の統合「LINQ」/DLinqとXLinq | ||
4.Visual Basicを再び動的プログラミング言語にする試み | ||
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