特集 ファットからスマートへ進化する企業システムのクライアントデジタルアドバンテージ2004/03/31 |
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1. リッチ・クライアントとスマート・クライアントの関係
本稿ではリッチ・クライアントを次のように定義する。
リッチ・クライアントとは、従来のC/Sシステムの長所であるリッチ(豊富)な「ユーザー・インターフェイスの表現力」「操作性」「機能」を備えながら、Webシステムの「展開容易性」や「運用容易性」などの利点をも有する企業システムのクライアント・アプリケーション |
前述したような企業システムのリッチ・クライアント化への動きを察知して、すでにさまざまなベンダがリッチ・クライアントの思想に基づくツール(ソリューション)を提供し始めている。
これらのツールにおけるリッチ・クライアントの実現方法は大きく次の3種類に分類できる。
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Webブラウザ上での表現力や操作性を強化するもの(以降、「Webブラウザ強化型クライアント」)
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ファット・クライアント・アプリケーションをWeb経由で展開できるようにするもの(以降、「Web展開型クライアント」)
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既存のファット・クライアント・アプリケーションにWebアプリケーション(Webサービスなど)との連携機能を追加したもの(以降、「Web連携型クライアント」)
なお、リッチ・クライアントによるアプリケーションが、必ずしもこれら3つのどれかに明確に分類できるわけではなく、複数の分類に含められる場合もあり得るので注意していただきたい。
リッチ・クライアント・ツールの種類
それでは、この3種類の分類ごとの代表的なツールを紹介しよう。なお、これらのツール自体の内容は、本稿の趣旨とは関係ないので割愛し、代わりに参考となる記事へのリンクを載せておく。
まず「Webブラウザ強化型クライアント」の代表例として挙げられるリッチ・クライアント・ツールとしては、次のものがある。
●Macromedia Flash/ColdFusion MX(マクロメディア) | |
→(参考:「PR:リッチインターネットアプリケーション時代の到来」) | |
●Biz/Browser(アクシスソフト) | |
→(参考:「PR:基幹業務を革新するリッチクライアントの世界」) | |
●Curl(米カール) | |
→(参考:Java Solutionフォーラム「安藤幸央のランダウン『次世代のインターネット言語curl登場!』」) |
次に「Web展開型クライアント」の例は以下のとおり。
●ノータッチ・デプロイメントなどを使ったWindowsアプリケーション(マイクロソフト) | |
→(参考:Insider.NETフォーラム「ノータッチ・デプロイメント」) | |
●Visual Studio Tools for Office(VSTO)ソリューション(マイクロソフト) | |
→(参考:Windows Server Insiderフォーラム「Office 2003で変わる業務アプリケーション」) | |
●Java Web Startを使ったJavaアプリケーション(サン・マイクロシステムズ) | |
→(参考:Java Solutionフォーラム「サンの夢を語れるのか? Java Web Start」) |
最後の「Web連携型クライアント」の代表例は次のとおりだ。
●Microsoft Office SystemのInfoPath(マイクロソフト) | |
→(参考:Insider.NETフォーラム「InfoPathの衝撃」) | |
●Microsoft Office SystemのWord/Excel(マイクロソフト) | |
→(参考:Windows Server Insiderフォーラム「Office 2003のXMLスキーマ・サポートがもたらすインパクト」) |
マイクロソフト版リッチ・クライアント
これらのツールのうち、マイクロソフトが提供するリッチ・クライアントは、特に「スマート・クライアント」と呼ばれる。何のことはない。スマート・クライアントとは、すなわち「マイクロソフト版リッチ・クライアント」のことなのである。従って、上に挙げた代表ツールの例でいえば、「ノータッチ・デプロイメントなどを使ったWindowsアプリケーション」「VSTOソリューション」「InfoPath」「Word/Excel」などは、すべて「スマート・クライアント」と呼ぶことができる。
このように「スマート・クライアント」は、マイクロソフト技術を使ったリッチ・クライアントを世に広く認知してもらうためのマーケティング戦略上の用語なのだ。つまり、「スマート・クライアント」という特定の技術や製品が存在するわけではないし、また「スマート・クライアント」は特定の技術や製品の使用有無によって定義されるものでもない。マイクロソフトは、「スマート・クライアント」の要素技術として、.NET FrameworkやWebサービスの利用を推奨しているが、これらを使わなくてもスマート・クライアント・ソリューションはあり得ると説明している。
次世代企業システムとして注目される「スマート・クライアント」
マイクロソフトは「スマート・クライアント」というキーワードを掲げて、自社技術によるリッチ・クライアントを積極的に普及させようとしており、スマート・クライアントの情報(「スマート クライアント デベロッパー センター」など)を提供したり、企業向けの開発サポート(「スマート クライアント アドバンテージ」など)を行ったりしている。
また、ユーザーが使い慣れているMicrosoft Officeや、ノータッチ・デプロイメントの配置技術を利用したWindowsアプリケーションを、クライアント・アプリケーションの実行基盤として活用できるので、スマート・クライアントを実現する環境は整いつつあるといえる。
これらのことを考慮すると、マイクロソフトのいうスマート・クライアント戦略が、アプリケーション・コンポーネント環境としても、ベース・プラットフォームとしても非常に現実的な選択肢の1つになってきている。
Webシステムの表現力や操作性などの問題により、これまでVisual Basic 6.0/Visual C++ 6.0などで構築した従来型のC/SシステムからWebシステムへ移行できなかった企業は多いだろう。また、C/SシステムからWebシステムに移行したものの、実際の運用で生産性を損なってしまった企業なども少なくないだろう。このような企業は、C/Sシステムの欠点を克服するとともに、Webシステムの利点を備えた次世代のリッチ・クライアント・ソリューション(スマート・クライアント・ソリューション)を検討してみる価値がある。
もちろん、現在のASP/ASP.NETなどで構築したWebシステムに不満がないのなら(例えば、不特定多数のユーザーに利用してもらうショッピング・サイトなど)は、そのままASP.NETでの開発・運用を継続すればよい。何も無理にスマート・クライアントへ移行する必要はない。しかし、スマート・クライアントへの移行によって何らかのメリットがあると判断できるなら、移行または併用を検討すべきだ。これにより、さらに一歩進んだ情報システムの生産性や柔軟性の向上を図ることができるだろう。
ここまで述べてきたスマート・クライアントへの移行判断について次の図にまとめた。
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スマート・クライアントへの移行判断 |
実際にスマート・クライアントによるソリューションの導入を検討するには、スマート・クライアントについてもっとよく知る必要があるだろう。続いては、スマート・クライアントの特長について、さらに詳しく解説しよう。
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INDEX | ||
[特集]ファットからスマートへ進化する企業システムのクライアント | ||
1.従来型システムの限界とリッチ・クライアントの登場 | ||
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2.リッチ・クライアントとスマート・クライアントの関係 | |
3.スマート・クライアントの特長と利便性 | ||
4.マルチ・デバイス、オフライン対応 | ||
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