特集:世界初登場の最新Windows Phone概説 Windows Phone 7.5“Mango”とIS12Tとは? 山口 健太(Windows Phoneブログ「ななふぉ」管理人)2011/09/01 |
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■最初のアップデート「NoDo」へ
●最初のアップデートへの期待が高まる
2010年11月8日にジョー・ベルフィオーレ氏が発表したのは、コピー&ペーストを追加するアップデートでした。しかしその直後から、「さらに多くの機能が追加されるのではないか」といううわさが流れ始めます。
特にアメリカで期待が高まったのは、CDMAキャリアへの対応でした。米4大キャリアのうち、Windows Phone 7端末を発売したのはAT&TとT-Mobile USAの2社。CDMA系キャリアであるVerizon WirelessとSprint Nextelからは発売されていませんでした。
当初、このアップデートは1月にリリースされる予定だったため、「“January”アップデート」と呼ばれていました。後にコードネームとして「NoDo」(ノードゥ、またはノードー)の名前が広まります。これはAndroid 1.6のコードネーム「Donuts」にかけた「No Donuts」の略であると、後にジョー・ベルフィオーレ氏は認めています。AndroidのDonutsよりもすごいアップデート、というニュアンスを感じます。
それと前後して、2011年1月にはCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)や、2月のMobile World Congressといった大きなイベントが開催されました。これらのイベントにおいてNoDoが発表されるのではないかという期待が高まりましたが、アップデートは始まりませんでした。
しかしMobile World Congress(MWC)において、マイクロソフトのCEOであるスティーブ・バルマー氏は、NoDoのリリース時期を3月上旬と発言。さらにWindows Phone 7の開発ツールであるWindows Phone Developer Toolsのアップデート版が公開され、エミュレータがコピー&ペースト機能に対応しました。開発環境のPCでNoDoの新機能を試せるようになり、いよいよアップデートの期待が高まったのです。
●最初のアップデート:February 2011(2011年2月)
MWCが終わり、ノキア(Nokia)によるWindows Phone 7の採用が議論を呼んでいた2月21日、一般ユーザー向けのアップデートが突然配布されます。Windows Phone 7の最初のアップデートである、「February 2011 Update」です。
次の写真は、アップデート時の例です。
アップデートが有効になると、端末に通知が表示される(筆者撮影) |
これはNoDoではなく、NoDoアップデートを正しく受け取れるようにするための、下準備的なアップデートでした。いわば「アップデートのためのアップデート」です。
ここからWindows Phone 7のビルド番号が上がっていきます。2010年9月に完成したRTM版のバージョンは「7.0.7004(ビルド7004)」でしたが、February 2011 Updateを適用すると「7.0.7008(ビルド7008)」になります。
これで3月に予定されているNoDoに向け、準備万端となったわけです。ところがこのころから、コピー&ペースト機能が使えるビルドの存在がネット上で報告され始めます。
例えば故障した端末をメーカー修理に出したところ、コピー&ペーストが使えるバージョンになって返ってきた、という事例があります。バージョンは、未発表の「7.0.7355(ビルド7355)」でした。また、インドで発売された「Dell Venue Pro」にビルド7355が搭載されていたという報告もあります。
後日、NoDoのアップデート・プロセスの解析により、ビルド7355はNoDoの一部であることが判明します。幸運にもビルド7355を手にしたユーザーは、少しだけ早く「コピー&ペースト機能」を体験できたといえるでしょう。
●Windows Phoneアップデートとは?
ここで、Windows Phone 7のアップデートの仕組みについて簡単に説明します。Windows Phone 7のアップデートは、デスクトップ版のWindowsと同じ、Windows Updateのインフラを使って全世界に配信されます。
Windows Phone 7は、マイクロソフトが開発するコードだけでなく、端末メーカーやチップ・メーカーが開発するファームウェアのコードも含まれています。これらをまとめたものがキャリアに手渡され、キャリアによるテストが始まります。
キャリアは、アップデートした端末が自社のネットワークで問題なく動作すること、独自アプリやサービスが正常に動作することを確認します。しかしWindows Phone 7を扱っているキャリアは世界に60以上あるので、テストが早く終わるキャリアとそうでないキャリアに大きな差が出てきます。大まかには、カスタマイズもネットワークも小規模なキャリアほど早く終わり、「メガキャリア」と呼ばれる大規模な事業者は時間がかかる傾向にあります。
●ついにNoDo公開、しかし……
スティーブ・バルマー氏が約束した3月上旬、マイクロソフトはNoDoのさらなる延期を発表し、3月下旬に再スケジュールします。そして3月22日、待望のNoDoが公開されます。
NoDoには、当初発表されたコピー&ペーストだけでなく、複数の機能改善が含まれています。以下にNoDoによる主な更新内容を列挙します。
- コピー&ペーストに対応
- アプリやゲームの起動を高速化
- マーケットプレイスの検索を改善
- MACアドレスの表示に対応
- Outlook、メッセージング、カメラなどの不具合を多数修正
NoDoアップデートの配布が始まると、2つの大きな問題が発生しました。
第一に、アップデートを受け取るタイミングがユーザーによって大きく異なってしまったことです。アンロック版のように、キャリアとの契約なしに端末を購入したユーザーは、すぐにアップデートを受け取ることができました。
しかしキャリアと契約して端末を入手したユーザーは、キャリアによるテストが終わるまでアップデートを受け取れませんでした。特にアメリカのAT&TやスペインのTelefonica(Movistar)はテストに時間がかかり、ユーザーは何カ月も待たされることになりました。
これにより、アップデートを受け取れないユーザーの不満が高まり、さらにはアップデートを無理やり受け取れるように改造するテクニックやツールが出回るなど、大きな混乱が発生しました。
第二に、アップデート中にエラーが発生し、正常に終了しないユーザーが続出したことです。この原因はいくつかあります。まずはアップデート前に実行される、バックアップ中の問題です。
Windows Phone 7のアップデートでは、既存のコンテンツをPCのストレージに完全にバックアップしたうえで、アップデートを適用します。このため、万が一アップデートに不具合があった場合でもリストアできます。
しかし8GBytesや16GBytesのストレージを備えた端末に音楽や動画を満載している場合、バックアップ中にPC側のストレージの空き容量が不足したり、粗悪なUSBケーブルにより転送エラーが発生したりするなどして、アップデートまでたどり着けないケースが続出しました。また、キャリアの独自アプリに含まれるネイティブ・コードが妨げになっているケースもありました。
これらの問題をマイクロソフトは認識しており、Web開発者向けのカンファレンス「MIX11」においてジョー・ベルフィオーレ氏自ら釈明する事態に発展しました。また、最新の“Mango”アップデートの配布時にはこれらの経験を踏まえて、配布プロセスを改善することが発表されています。
NoDoの適用により、バージョンは「7.0.7390(ビルド7390)」となります。
●セキュリティ・アップデート:7392
5月3日、Windows Phone 7の新しいアップデートとして、セキュリティ・パッチが配布されます。
当時、大手SSL認証機関であるComodo社が不正な証明書を発行してしまい、フィッシングなどの犯罪に悪用されることが懸念されていました。悪用を回避するために、デスクトップ版Windowsをはじめ、多くの環境にアップデートが配布されており、Windows Phone 7にもそれに追随した形でセキュリティ・パッチが提供されています。
このアップデートを適用することで、バージョンは「7.0.7392(ビルド7392)」となります。これは7.0系の最新版として、いまもなお世界中で利用されています。また、「7390」と「7392」はほとんど差がないため、まとめて「NoDo」と呼ばれることも少なくありません。
以上が、“Mango”が登場するまでの背景です。次のページでは、いよいよWindows Phone 7.5“Mango”について説明し、さらに日本で発売開始された世界初の“Mango”端末「IS12T」について紹介します。
INDEX | ||
特集:世界初登場の最新Windows Phone概説 | ||
Windows Phone 7.5“Mango”とIS12Tとは? | ||
1.Windows Phone 7発売 | ||
2.最初のアップデートNoDoへ | ||
3.Windows Phone 7.5“Mango”に至る道/IS12T、登場! | ||
4.“Mango”アップデートはいつ? | ||
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