Visual Studio .NETによるチーム開発事始め Visual SourceSafeによるソース管理(準備編)一色 政彦2003/10/08 |
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■ソース管理ツールはバージョン管理にも有効
ソース管理ツールの機能は、今述べたファイルの上書きを防止する「ソース・コード管理システム(Source Code Control System)」だけでない。ソース管理ツールはソース・ファイルの変更の履歴をすべて記録しているので、記録された特定の時点までさかのぼってソース・ファイルを取得できる。よって、ある特定の時点でのプロジェクトのソース・ファイルに「バージョン」を設定しておくと、その後いつでも、その「バージョン」を設定した時点のプロジェクトのソース・ファイルを取得することができる。つまり、ソース管理ツールは、プロジェクトのバージョンを管理する「バージョン管理システム(Version Control System)」の機能も兼ね備えているのだ。
以上のような機能を備えたソース管理ツールの1つが「Microsoft Visual SourceSafe(以降、VSS)」である。VSSはマイクロソフトの開発環境Visual Studio .NETの標準のソース管理ツールで、Visual Studio .NET(以降、VS.NET)のIDE(Integrated Development Environment:統合開発環境)に統合されており、簡単にVS.NETから利用することができる。本稿では、このVS.NETとVSSを組み合わせて使う方法について解説する。
なお、今回使用するVS.NETのバージョンおよびエディションは、「2002 Professional」である。VS.NET 2002とVS.NET 2003、またProfessional、Enterprise Developer、Enterprise Architectの各エディションの間には、ソース管理機能に差はない。VS 6.0はVS.NETとソース管理のメニュー構成が違うが、ほぼ同じ機能を実行できるので、本稿が参考になるだろう。
一方、VSSのバージョンは「6.0c」である。VSS は6.0cからVS.NETに対応しているので、VSSのバージョンが6.0、6.0a、6.0bの場合は6.0cにアップグレードすることをお勧めする。Visual SourceSafe 6.0 Service Pack 6(以降、VSS SP6)をインストールすると、VSS 6.0cへアップグレードが可能だ。VSS SP6はマイクロソフトのサイトからダウンロードできる。VSS SP6の詳細についてはこちらを参照していただきたい。
VSSは単体製品として購入できるが、次のようなパッケージにも同梱されている(※ただし、ユーザー数分のライセンスが必要)。
Visual SourceSafe 6.0を同梱している製品パッケージ |
Visual Studio 6.0 Enterprise Edition |
Visual Studio .NET 2003 Enterprise Developer、Enterprise Architect |
Visual Studio .NET 2002 Enterprise Developer、Enterprise Architect |
Office 2000 Developer、Office XP Developer |
※VS.NET 2002、2003のProfessionalエディションには同梱されていないので、注意してほしい。 |
なお、Visual Studio .NET Enterprise Developer、Enterprise Architect のバージョン2002に同梱されているVSSは6.0cであり、また同製品のバージョン2003で同梱されているVSSは6.0dであるので、いずれもアップグレードの必要はない。6.0dは、6.0cからのマイナー・アップグレードで、いつくかのバグ修正が行われている。バグ修正の内容はマイクロソフトのサイト(英語)を参照してほしい。
Visual SourceSafeの概要
それではVSSについて見ていこう。
VSSは、プロジェクトのソース・ファイルを管理するためのツールである。VSSはプロジェクトのソース・ファイルの変更履歴(リビジョン:revision)を管理する。この変更履歴は、VSS独自のデータベース(以降、VSSデータベース)に記録される。
「変更履歴(revision)」は「バージョン(version)」とは異なるものである。「バージョン」はある特定時点でのプロジェクト全体に対し、人間(プロジェクト管理者など)が手動で割り当てる履歴のことだが、「変更履歴(revision)」はソース・ファイルに変更がある度にVSSが自動的に割り当てる履歴のことだ。
「変更履歴」はソース変更のログという役割に等しい。それに対し、「バージョン」はプロジェクト全体のある時点でのスナップショットに等しい。バージョンの名称(例えば「6.0c」)は、そのスナップショットに割り当てた「ラベル(label:目印となる名前)」と見ることができる。実際にVSSは、ある特定時点のプロジェクトにラベルを貼り付けることで、バージョンを管理する仕様になっている。しかも、VSSでは、その「バージョンのラベル」を指定して古いバージョンのプロジェクトを自由に取り出すことができる。もちろん、「変更履歴」を指定して、その変更時点のソース・ファイルを取得することも可能である。
VSSデータベースに格納される変更履歴 |
ファイルに変更を加える度に、変更履歴が保存される。特定の段階でラベルを設定しておくことで、その時点のソース・ファイルを簡単に取り出すことが可能。 |
■VSSが管理できるソース・ファイルの種類
VSSが管理できるソース・ファイルの種類は次の2つである。
- テキスト・ファイル(拡張子が.txt、.cs、.cpp、.vb、.xml、.htmlなどのファイル)
- バイナリ・ファイル(.jpg、.gif、.bmp、.exe、.dllなど)
VSSはバイナリ形式のファイルを管理できるので、VSSが正常に管理できないテキスト・ファイル(例えば、UnicodeやUTF-8形式のテキスト・ファイル)は、バイナリ・ファイルとして認識するように設定すれば、そのソース・ファイルもVSSで管理できるようになる(これについては次回以降で解説予定)。これによって、プロジェクトのソース・ファイルをすべて確実に管理することができるので、VSSはあらゆるタイプの開発プロジェクトで利用することができる。
INDEX | ||
Visual Studio .NETによるチーム開発事始め | ||
Visual SourceSafeによるソース管理(準備編) | ||
1.チーム開発におけるソース管理の問題 | ||
2.Visual SourceSafeでバージョン管理 | ||
3.Visual Studio .NETのIDEでソース管理 | ||
4.Visual SourceSafeサーバのインストール | ||
「Visual Studio .NETによるチーム開発事始め」 |
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