VB研公開ゼミ議事録

VB 6業務アプリはいつまで使えるの? Vistaでは?

デジタルアドバンテージ 遠藤 孝信
2006/08/30
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 去る2006年7月28日、@ITが主催する第1回 @IT VB研公開ゼミが開催された。

第1回 @IT VB研公開ゼミ:どうする? どうなる!? VB業務アプリ開発

 これは、Insider.NETの1コーナーであるVB業務アプリケーション開発研究室(通称:VB研)の読者を対象に行われたカンファレンスであり、現在Visual Basic 6.0を主力開発環境として業務アプリケーション開発を行っている開発者を中心に、50名を超える人々が参加した(以下、Visual Basic 6.0は「VB 6」と略す)。

 テーマはずばり、

「VB 6の業務アプリ、そしてVB 6開発者は今後どうなるのか」

 マイクロソフトの標準サポートが終了し、Windows Vistaの登場を控えて、VB 6で開発された業務アプリケーションは今後どうなるのか。すぐに.NETに移行しなければならないのか。VB 6の資産はどうすればよいのかなど、VB 6開発者の気になる話題について、プレゼンテーションとパネル・ディスカッションが行われた。


VB研公開ゼミ パネル・ディスカッションの様子

 カンファレンスのメイン・イベントであるパネル・ディスカッションでは、VB 6業務アプリケーション事情に詳しい鎌田明氏と大野元久氏がパネリストとして参加した。ディスカッションのモデレータは、Insider.NETを運営する(株)デジタルアドバンテージ代表の小川誉久が務めた。

パネリスト グレープシティ株式会社
ツール事業部 PowerTools製品部 部長

鎌田 明 氏

マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統轄本部
デベロッパービジネス本部 プロダクトマーケティンググループ
シニアプロダクトマネージャ

大野 元久 氏
モデレータ 株式会社デジタルアドバンテージ
代表取締役社長
@IT Windows Server Insiderフォーラム編集長

小川 誉久

 本稿では、このパネル・ディスカッションの内容をお伝えする(以下、敬称略)。

VB 6を使い続けること、.NETに行かないことの何が問題なのか

【小川】 今回は特に、VB 6ベースの業務アプリケーション資産をお持ちで、.NETへの移行について検討中の方に多く集まっていただいています。皆さんは、お持ちの既存資産を今後どうしていったらいいかということをいままさに思案されているところだと思います。いまあるVB 6資産を今後もそのまま継続して使用できるなら、追加コストは発生しないし、.NETを新しく学ぶ必要もないわけです。

 ではもしVB 6を使い続けたとすると、どういった問題があるのか、というのが最初の議題です。今年末あたりから出てくるという新しいOS「Windows Vista」でも、VB 6やVB 6で構築した業務アプリケーションは使えるのでしょうか? カンファレンスの事前アンケートの中には、「VB 6で構築されたシステムで問題がないのに、マイクロソフトの都合でお客さまがコスト増とリスクを余儀なく負わされる」という批判的な意見もありました。大野さん、VB 6を使い続けてはいけませんか?

− 最新のPCをフル活用できないVB 6 −

【大野】 事前アンケートでは、今後もVB 6を使い続けるという回答が26%もありました。VB 6を使い続けるという開発者がいまなお少なくないことは意外でした。

 サポート切れや、新しいOSでの互換性問題など、マイクロソフトの動向が影響する部分が目立ちがちですが、それ以外の、もっと本質的な問題についても目を向けるべきだと思います。

 例えば、マルチコアのCPUが登場するなど、現在でもなお、PCのパフォーマンスは急ピッチで上がり続けています。マルチコアCPUの性能を十分に引き出すには、アプリケーションの実行コードがそれに対応にする必要があります。しかしもはや一昔前の開発言語であるVB 6ではそのような実行環境を生かすことはできません。向上するハードウェア性能の恩恵に浴せないようなアプリケーションで、本当に顧客を満足させ続けることができるのでしょうか。

 新しいテクノロジに対応した競合他社が、スマートフォンを使ったシステムにより、会社の情報にリアルタイムにアクセスして、お客さまに保険の生涯プランを提案している中、いつまでも印刷物で対応していて生き残れるのか、ということです。ビジネス・アプリケーションも競争にさらされています。新しい可能性を持ったプラットフォームの価値を引き出すことができない古いアプリケーションでは、早晩、退場を余儀なくされるでしょう。ハードウェアやOSの最新機能や最新技術がもたらす価値をビジネス・アプリケーションで引き出し、お客さまに提供するには、いつかは古いVB 6から新しいVB.NETやVB 2005に移行する必要に迫られるはずです。

 私たちマイクロソフトは、ただ売り上げを維持するためだけに新しいソフトウェアを開発しているわけではありません。テクノロジによって世の中のニーズに応え、皆さんのビジネスを支え、皆さんにより良い開発環境を提供するというのが私たちのミッションです。バージョン移行のハードルが存在することは認めますが、それ自体が目的ではありません。この点はぜひご理解いただきたいです。

【小川】 つまり、移行は大変かもしれないが、それに見合った価値はあるし、マイクロソフトはそういうものを提供していくということですね。

 ところでグレープシティでは、以前からVB 6用のコンポーネントを販売されていて、現在では.NET用のコンポーネントも販売されていますね。最近の販売データを見ても、まだまだVB 6向けコンポーネントの需要は多いと伺いましたが。

【鎌田】 そうですね。2002年に.NETが登場してから約4年になります。この間、自社コンポーネントの.NET対応を進めてきました。現在では、.NET対応コンポーネントの販売数が全体の60%を占めるまでになりましたが、一方では、いまなおVB 6向けActiveXコンポーネントの需要が全体の40%もあります。正直、4年前は、VB 6がこんなに長く使われ続けるとは思っていませんでした。

【小川】 まだまだ新規でVB 6のコンポーネントが売れているということですか?

【鎌田】 はい。ただし、既存システムの保守のためにコンポーネントが必要で購入されているケースもあるでしょうから、一概にすべてが新規開発で使われているというわけではありません。しかし販売面に限らず、弊社ユーザー・サポートへの問い合わせ状況などを考えても、VB 6は現在でも、まだまだ現場で使われているという印象があります。

【小川】 鎌田さんは、.NETが価値ある環境だと思っていますか。

【鎌田】 それは自信を持って「ハイ」といえます。VB 6と比べれば、.NETは格段に進歩しています。IDE(開発環境)は、2002、2003、2005と、すでに3世代目のバージョンになってかなり洗練されてきていますし、.NET Framework自体もバージョンを追うごとに進化しています。当然のことではありますが、VB 6は進化の止まった環境/言語ですので、その差はますます広がる一方です。

− VB 6のサポート −

【小川】 VB 6の継続利用に関する別の問題としては、「サポート切れ」の問題があると思います。やはり業務で使う製品ですから、マイクロソフトがサポートしない環境のものをいつまでも使えないでしょう。今後、VB 6のサポートはどうなるのでしょう。

【大野】 マイクロソフトは、製品ごとにサポート・ライフサイクルを公開しています。VB 6のサポート・ライフサイクルでは、すでにメインストリーム・フェイズ(無償のインシデント・サービスなどを含むフルサービス・フェイズ)は2005年3月31日で終了しており、現在は延長フェイズ(無償のオンライン・セルフ・サポートなど)に入っています。

Visual Basic 6.0 ファミリ製品のライフ サイクル ガイドライン(マイクロソフト)

 延長フェイズは、2008年3月31日で終了します。VB 6が発売されたのは1998年なので、延長フェイズの終了までを数えれば、発売から約10年間サポートされることになります。

 気になる次期Windows VistaにおけるVB 6のサポートですが、VBの開発チームは、Windows Vistaにおいても、VB 6ベースで開発されたアプリケーションが動作する互換性を提供する旨の発表を行っています。

Windows VistaにおけるVisual Basic 6.0のサポートについて(マイクロソフト)

 マイクロソフトは、Windows VistaでVB 6アプリケーションを実行可能にするため、VistaにVB 6ランタイムの主要コンポーネントを同梱する予定です。既存のVB 6アプリケーションに手を加えることなく、そのまま動くことが目標ですが、アプリケーションの作りによっては、一部変更が必要な場合もあります。例えばWindows Vistaでは、システム・ファイルが格納されるフォルダ名などが異なっています。従ってVB 6アプリケーションが、特定のフォルダ名に依存していると、そのままでは動きません。

 重要な点は、VB 6のコンポーネントがWindows Vistaに同梱されるということで、Windows VistaにおけるVB 6アプリケーション実行のサポートが、新しいWindows Vistaのサポート・ライフサイクルでも行われるということです。具体的にWindows Vistaのライフサイクルは、製品出荷後、メインストリーム・サポートが5年、延長サポートが5年です。

【小川】 VB 6アプリケーションのVistaでの実行は分かりましたが、VB 6の開発環境(IDE)はVistaで使えるのでしょうか。

【大野】 こちらもサポートされます。つまり、VB 6のIDEをWindows Vistaにインストールして、VB 6アプリケーションを開発することが可能です。ただし、このサポートはVB 6の延長サポートの一環であり、サポート期間は2008年3月末までとなります。

【小川】 では、VistaでもVB 6の開発環境は使えるし、作ったVB 6ベースのプログラムも基本的には動くということですね。ここにお集まりの皆さんにとっては、大変心強い情報だと思います。

【大野】 ただし誤解していただきたくないのは、VistaでもVB 6がそのまま使えるから何もしなくてよい、ということではないということです。VistaでもVB 6をサポートするので、それによって得られる猶予期間のうちに、新しい.NETのスキルを獲得していただき、移行を進めていただきたいのです。

【小川】 無償のデータベース・エンジンであるMSDE(SQL Server 2000 Desktop Engine)がVistaで動かないのではないかという話もあるようですが。

【鎌田】  MSDEはVista上ではサポートされないということを、マイクロソフトから聞いています。VB 6とMSDEを組み合わせて構築されているシステムは多いので、そういったシステムではデータベース・アクセス部分がそのままでは動かなくなる可能性があります。

【小川】 プログラムの修正が必要になりますか?

【大野】 MSDEに代わる無償のデータベース・エンジンとして、現在マイクロソフトはSQL Server 2005 Express Edition(以下SQL2005ExpE)を提供しています。よって使用するデータベース・エンジンをMSDEからSQL2005ExpEに変更する必要があります。VB 6に関するプログラミング・モデルは基本的に変わりません。

 しかし周辺ツールの有無や、周辺ツールの機能差などは多少あるでしょうから、MSDEベースで書かれているマニュアルがあれば、その修正は必要になると思います。もちろんアプリケーションの動作検証は必要になると思いますし、アプリケーションのインストーラについては修正が必要になるかもしれません。

【小川】 正直いって、私はVistaにおけるVB 6アプリケーションの動作はもっと厳しい条件になると思っていました。しかし今日のお話だと、まだまだ継続的に使用できるとのことでひと安心しました。

 

 INDEX
  VB研公開ゼミ議事録
  VB 6業務アプリはいつまで使えるの? Vistaでは?
  1.VB 6を使い続けること、.NETに行かないことの何が問題なのか?
    2..NETへ移行するメリットは? これからのWindows業務アプリのあるべき姿とは?
    3.新環境のメリットを生かすため、アプリのあるべき姿に向けてどうすればよいのか?
 
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