VB研公開ゼミ議事録VB 6業務アプリはいつまで使えるの?
デジタルアドバンテージ 遠藤 孝信 |
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新環境のメリットを生かすため、アプリケーションのあるべき姿に向けてどうすればよいのか
【小川】 .NET環境は優れており、この新しい環境に備えて何らかの対応をしていく必要があるということは分かりました。最後は、そのために、具体的にどうしたらよいのかをディスカッションしたいと思います。
既存のVB 6のコードを、Visual Studio 2005ベースにコンバートしてくれる「アップグレード・ウィザード」というツールがVisual Studio 2005には含まれています。これは以前のVisual Studio .NET 2003のコンバート・ツールと比べると、性能がかなり向上しているのだと聞きます。
しかしその一方では、既存のVB 6資産をこね回して.NETに移行するより、いっそ新しく.NETベースで作り直した方が、全体的な開発工数は削減できるということもあるようです。
既存資産を移行させるべきか、最初から.NETで作り直すかというのは、どういう基準で判断すればよいのでしょうか?
【大野】 既存のVB 6プログラムをVB2005に移行する方法については、700ページからなる詳細なドキュメント*を開発者向けサイトで公開しています。移行における判断基準については、このドキュメントの冒頭部分で詳しく説明しています。
例えば、Win32 APIを駆使するような、トリッキーなコードを多く含むVB 6のアプリケーションがありますが、これは.NETには移行しにくいです。機能自体は.NETでもカバーされていますが、使い方がまったく異なるものも多く、移行は容易とはいえません。このようなケースでは、既存コードの移行を考えるより、.NETベースで最初から書き直す方がよいでしょう。
また、英語版のみですが「Visual Basic 6.0 to Visual Basic .NET Upgrade Assessment Tool」という評価ツールもあります。これは移行にどのくらいの工数がかかるかを見積もるツールです。移行したいVB 6のプロジェクトをこのツールにかけると、「移行にかかる費用は××ドルです」と評価結果を示してくれます。
ただし内部的な査定基準は、ActiveXがこれくらい使われているからとか、古い文法がこれくらい使われているからといった大ざっぱなものなので、あまり正確とはいえません。実際にこのツールを使った例は、米国ではいくらかあるらしいのですが。
* ダウンロード・センター:Upgrading Visual Basic 6.0 Applications to Visual Basic .NET and Visual Basic 2005 - 日本語 |
【鎌田】 私の個人的な意見としては、.NETに踏み込むとき、既存アプリケーションの移行から入ってしまうと、挫折する確率が高いのではないかと感じています。問題なく稼働している既存アプリケーションは取りあえずそのままにしておいて、小さなプロジェクトでよいので、新規から.NETで作ってみることから始めるのが私のお勧めです。
小さなことから始めて、段階的に.NETの良さや生産性の高さを感じていただければ、恐らくVB 6には戻りたくなくなるでしょう。ここまできたら、いまあるアプリケーションをどうするかを決めるべきです。そのまま動かし続けるという選択肢も私はあると思います。先ほど説明があったように、Vistaでもランタイムのサポートがしばらくありますし、お客さまの状況に応じて、残りの運用期間などを考慮して判断するとよいでしょう。
.NETの良さを知ったうえで、.NETの良さを生かして寿命の長いアプリケーションを構築するというのは、追加投資が必要になるとは思いますが、それに見合った価値はあると思います。
【小川】 Visual Studio 2005には無償のExpress版というものがありますが、鎌田さんがいう「小さく始める」ための環境として使えるでしょうか。
【大野】 はい。使えると思います。またそれ以外にも、スタート・キットやサンプル・アプリケーションなども多く用意されていますので、まずそういったもので.NETに慣れてもらい、移行の感覚を養っていただくのがよいでしょう。
【小川】 それでは最後に、VB 6開発者に対して、何かひと言ずつメッセージをいただけますか。
【鎌田】 VB 6でまだ業務アプリケーションを開発しており、何とかしなくては、と不安に感じている人も多いと思います。しかし、そんなにあせる必要はないと思います。まだまだ時間はありますし、.NETプログラミングのスキルを獲得するための素材も、いろいろとフリーで手に入ります。また、マイクロソフトさんがVistaでVB 6をサポートすると明言した以上、私たちコンポーネント・ベンダもこれをサポートしないわけにはいかないでしょう(笑)。
【大野】 今日のまとめとして、「のんびり移行しましょう」という結論では、立場上少しまずいかもしれません(笑)。私たちはベンダの責任として、サポートを行っていきますが、顧客に対して、より優れた情報システムを提供するのは、早ければ早いに越したことはありません。私たちは、そのためのさまざまな準備を継続して行っていきます。ぜひ早めに、移行あるいは移行のための取り組みを考えていただければと思います。
【小川】 ありがとうございます。.NETを勉強したいなら、とにかく手軽な無料環境(Visual Studio 2005 Express Edition)を入手して、まずは小さなプロジェクトで.NETプログラミングを始めてみるのが早道、という結論で、第1回VB研公開ゼミを終わりとさせていただきます。
INDEX | ||
VB研公開ゼミ議事録 | ||
VB 6業務アプリはいつまで使えるの? Vistaでは? | ||
1.VB 6を使い続けること、.NETに行かないことの何が問題なのか? | ||
2..NETへ移行するメリットは? これからのWindows業務アプリのあるべき姿とは? | ||
3.新環境のメリットを生かすため、アプリのあるべき姿に向けてどうすればよいのか? | ||
「VB研公開ゼミ議事録」 |
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