連載:放課後VB教室第1回 値型と参照型と大福研究会羽山 博2008/06/06 |
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私立関崇高校の大福研究会というナゾのサークルに所属する「サブロー」とクラスメイトの「ラスクちゃん」は、ひょんなことからVisual Basicのプログラミングを教えてもらうことになった。先生はサブローの先輩で、大学の先生でもある「ネスト先生」。さてさて……。
登場人物紹介
ネスト先生:
啓昭大学経営学部准教授。本名は不明。いつも寝癖ヘアで鳥の巣のような頭なので「ネスト」と呼ばれる。表向きは経済モデルのシミュレーション・プログラムを研究している。機械いじりが好きで、本業のかたわら自宅でなにやら怪しげなモノを作っている。サブローの所属する関崇高校大福研究会OB。男。36歳。
サブロー:
関崇高校2年生。パソコン好きで将来はIT関連の企業で働きたいと思っている。プログラミングの経験も多少はあるが、知ったかぶりで、知識はあやふや。大福研究会という妙な名前のナゾのサークルに所属。部室でゲームをしたり、町の中を探検したりしているがサークルの目的は不明。男。17歳。
ラスクちゃん:
関崇高校に転校してきたヘンな美少女。IT関係にはまるで興味がないが、意外に本質を見抜く目を持っている。なぜか商才があり、お金が大好き。誰も知らないが、実はクロワッサン先生(=ネスト先生の双子の兄)の作ったアンドロイド。本人も自分がアンドロイドであることを時々忘れてしまうほど。見た目は女性だが性別はない。公称17歳。本当は2歳。
プロローグ〜放課後の部室で
サブロー! こないだ貸したCD早く返し……あれ?
ラスクちゃん、ちょうどいいところに来た。ネスト先生、例のCDを。
ネ、ネスト先生?
あれ、ネスト先生知ってるの?
ううん、でもどこかで会ったような……。
サブローくんが貸してくれたCDの持ち主って……この人?
そう、この人。ラスクちゃん。ヘンな名前でしょ。
サブロー、ひどい。また貸ししてたのねっ。でも、ネストって名前の方がヘンだよっ。
まあまあまあ。頭が鳥の巣だからネスト先生。
わざわざプログラミングを教えに来たのに何だよ、それ。
あ、すみません。わが大福研究会の偉大なるOB、でした。ラスクちゃんも話聞いていきなよ。
えーっ、パソコンとか苦手だし、いいよ。
何いってんの、これからはIT技術! プログラムの1つもできなきゃ商売になんないよ。
ホント? じゃあやる。私でも大丈夫かな?
大丈夫、大丈夫。じゃあ、CDのお礼ということで、ラスクちゃんもまとめて面倒を見よう。
よろしくお願いしまーす。
値型の変数
サブローくんもラスクちゃんもVisual Basicというプログラミング言語は知ってるかな?
あ、それなら情報の授業で少しやりました。メッセージを表示したり、計算したりするぐらいなら。
うそつけ。ラスクはずっとミクシィで遊んでたじゃないか。
ははは、ばれてたか。でも、プログラムの作り方ぐらいは覚えてるよ。
じゃあ、2人とも、フォームにコントロールを配置して、プロパティを設定したり、イベント・ハンドラを書いたり、というところまでは分かるわけだ。
イベント……、あ、ボタンをクリックしたら何かを実行するとかですね。たぶん大丈夫です。
まあ、そのあたりの話はどんな本にでも載ってるから、わざわざ説明するまでもないよね。それよりここでは、本にあまり載っていない重要な話とか、載っていても深く掘り下げていないことを話そう。というわけで、今日は変数の話。サブローくん、変数って何か説明できるよね。
ネスト先生、変数の話なんて基本中の基本ですよ。どんな本にも載ってます。えーと、変数はデータを入れる箱のようなものです。
ラスクちゃんはそれで分かるかな? 一応、絵を描いて説明して。
はい。こんな感じですね。変数名はとりあえず「i」にしました。
図1 変数iのイメージ |
変数を使うためには宣言が必要で、データ型を書く必要があります。例えば、整数を入れるための変数なら、
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と宣言します。これぐらいなら、楽勝っすよ。
そうそう、それ習った。「Dim」ってキーワードを使って宣言するんだよね。でも、Dimってどういう意味なのか……。D(出た!)、I(インケツや)、M(負けや)かな。
インケツて、ラスクちゃん……。もともとは、配列を表す「Dimension」の略だったんだけどね。いまじゃ、Dim自体の意味はほとんどなくなっているから気にしなくていいよ。それより、大事なのは「As Integer」……。
はい、整数型の変数だからAs Integer。Asの後にデータ型を書きます。
じゃあ、変数iに何かの値……そうだね、例えば「100」という値を代入したときのイメージを絵に描いてみて。じゃあ、ラスクちゃん。
はーい。こんな感じかなぁ。
図2 Integer型の変数に値を代入する |
オーケー、よくできました。でも、ここまではウォーミングアップ。これからが面白くなるよ。
変数ぐらいならノープロブレムですよ。
そうかな。じゃあ、今度は文字列型の変数を宣言してみて。変数名は「Message」としておこうか。
文字列型はStringだから、
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ですね。
じゃあ、その変数Messageに文字列を代入したところを絵で描いてみようか。代入する文字列は“放課後VB教室”としよう。
整数の場合と同じですね。こんな感じ。
図3 String型の変数に文字列を代入する(間違ったイメージ) |
残念だけど、その図は間違ってる。見事に引っ掛かってくれたね。
えーっ! 文字列を入れるための箱を用意して、そこに“放課後VB教室”と入れる、でしょ。どこも間違っていないと思うんですが。
ラスクちゃんは分かるかな?
うーん、さっぱり……。
より正確なイメージを描いてみると、こんな感じだね。
図4 String型の変数は文字列を参照する |
えぇー!
変数にはね、「値型」の変数と「参照型」の変数があるんだ。Integer型やDouble型などは値型の変数。これらは最初にサブローくんが描いたようなイメージでいいんだけど、参照型の変数はちょっと違う。
データを入れる箱じゃないんだ?
われわれが思っているのとはちょっと違うね。むしろ、「実際のデータの在りか」を入れる箱かな。値型の変数を宝箱に例えるとすると、参照型の変数は宝の地図だね。宝の地図には、宝そのものじゃなくて、宝の在りかが書かれているってこと。宝の地図を見れば、宝がどこにあるか分かるよね。
何となく分かったような分からないような……
こういうのは日常生活でもよくあることだよ。似たような仕組みを考えてごらん。
うーん……。
分かった! 図書館の蔵書カードもそういうのと同じだよね。本そのものがあるんじゃなくて、本がどこにあるかって書いてある。
そう! そんな感じだね。ラスクちゃん、偉いっ。
いいんだ、いいんだ。どうせボクなんて……。
まあまあ、すねないで。いまから詳しく説明するから。
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