連載

Javaオブジェクトモデリング

第1回 連載を読む前に知っておくべきこと

 

6.Java開発におけるオブジェクトモデリングの意義

 以上、UMLとJavaの関係についていろいろな側面から見てきました。UMLによる設計モデルとJavaプログラムの相互変換は、かなり自動的に行うことができるようになってきたといえるでしょう。つまりUMLを使った設計は、半分はJavaプログラミングであると考えられます。逆に、Javaプログラミングはオブジェクトモデリングそのものであるという考え方も成立するでしょう。そうすると、UML設計をせずにいきなりJavaプログラミングをするというアプローチにも説得力があります。

 もちろん小規模のプログラムでは、Javaプログラミングだけでも十分に機能します。しかし、ある程度の規模の製品を複数メンバーのチームで開発する場合は、UMLのモデリングなしでは考えられません。それは、ソースコードしか存在しない開発では、メンバー間でモデルの共有ができないからです。メンバー間でモデルの共有ができないということは、開発の基盤となるアーキテクチャの策定ができないことであり、プログラムの質を高めるうえで極めて重要な作業であるレビューができないということでもあります。これでは一定の質を保ったプログラムを作成し続けることはできません。さらに、プログラムの保守を行うチームに対する情報の伝達もまったくできないことになります。

 製品開発では、開発時の効率だけでなく、保守フェーズを含めた製品のライフサイクル全体における効率が非常に重要です。つまり、場所や時間を超えて開発メンバー間で共有できるモデルの存在が不可欠であり、UMLによるモデリングは必須の作業といえるでしょう。

 UMLで作成したモデルをJavaプログラムに落とし込むことは、一見機械的な作業のようで、具体的な手順はなかなか一筋縄ではいかないことがお分かりいただけたと思います。UMLとJavaの関係を考えるには、UMLとJavaの個々の技術だけでなく、UMLとJavaの接点となるモデル体系の理解が必要です。さらにこのモデル体系を理解するためには、オブジェクト指向開発プロセスの理解が必要となります。

 今回はオブジェクト指向開発プロセスによって作成されるオブジェクトモデル、そしてJavaの関係について概観しました。今後5回にわたって、静的モデルの観点からクラス図とJavaの関係について解説していきます。その初回として、まず次回は静的モデルの概要を説明する予定です。


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Javaオブジェクトモデリング 第1回
  連載のはじめに
  UML(図の分類)
  開発プロセス
  オブジェクト指向開発におけるモデル体系
Java開発におけるオブジェクトモデリングの意義

筆者プロフィール

浅海智晴(あさみ ともはる)

1985年立命館大学電気工学科卒業。同年富士通(株)入社。
UNIXワークステーション/サーバのOS、分散基盤、Web基盤の開発に従事。2001年11月より浅海智晴事務所代表。現在はオブジェクト指向、Java、XMLを中心に活動を行っている。

著書に「Java Super Tips オブジェクト指向設計編」、「XML/DOM Programming」(秀和システム)、
「やさしいUML入門」、「Relaxer - Java/XMLによるWeb開発」、 「XML SmartDoc公式リファレンスマニュアル」((ピアソンエデュケーション)がある。

代表作はJava&XMLベースのオープンソース・ソフトウェアである、
・XML SmartDoc(XML文書処理システム)<http://www.XMLSmartDoc.org>、
・Relaxer(XML/Javaスキーマコンパイラ)<http://www.relaxer.org>。



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