解説
WebGainから復活する「Visual Cafe 4」
―StuidoはUML、Dreamweaverとの連携をサポート―
槙邑恭介
2000/12/12
2000/12/15更新
■帰ってくるVisual Cafe:年内に国内出荷
SymantecからVisual Cafe 4がリリースされてから間もなく、なぜかVisual Cafe 4のパッケージを店頭から見つけることができなくなっていた。読者の中には、いまだ「一体どうなってしまったのか?」とお思いの方も多いだろう。
WebGainで新生したVisual Cafeのスプラッシュ画面 |
実は、Visual Cafeは2000年1月、米Symantecから米WebGainに売却された。英語版は米WebGainから改めて「Visual Cafe 4」として今夏にリリースされている。
そして、先日2000年12月13日、米WebGainの日本法人「ウェブゲイン ジャパン」の設立と、年内の日本語版Visual Cafe 4の出荷が発表された。
Visual Cafe 4には、Standard Edition、Expert Edition、Enterprise Editionの3種類のエディションが用意されている。Standard EditionはJava開発ツールとして基本的な機能を備えており、スタンドアロンのJavaアプリケーションやJavaアプレット、Java Beansの作成などが行える。Standard Editionに対してExpert Editionでは、データベース接続機能(それを利用するコンポーネントも含まれる)やバージョン管理機能が追加され、さらにEnterprise Editionでは分散アプリケーションの作成機能として、EJBの開発、RMI/CORBAのサポート、分散環境でのデバッグ機能などが含まれている。
本稿では、この米WebGainからリリースされている英語版Visual Cafe 4 Enterprise Edition(以下Visual Cafe 4と略)を使用して、新生Visual Cafe 4の概要を紹介しよう。ただしここで紹介している内容は、日本語版がリリースされた場合の内容と異なる可能性があることをご了承いただきたい。
■クオリティの向上が開発者にとっては朗報か
今回のVisual Cafe 4を使用しての感想は、細かなバグ修正が緻密に行われているということだ。実は米WebGainはアプリケーションサーバベンダとして有名な米BEA
Systemsの出資企業である。米BEA Systemsは、自社のソフトウェア製品に対して徹底したソフトウェアの品質管理体制を持っており、そのノウハウが米WebGainのVisual
Cafe 4の製品クオリティを高めているとの評判がある。
さて、Visual Cafe 4を起動すると、WebGainのスプラッシュスクリーンの表示後、統合環境が現れる(画面1「Visual Cafe 4の統合環境」)。起動時間が長いのが気になるが、この統合環境を見る限りでは、ユーザーインターフェイスはほとんど変わっていないようだ。
画面1 「Visual Cafe 4の統合環境」 ユーザーインターフェイスや、搭載されるJITコンパイラはSymantec時代のものと同じのため、操作に特に違和感はない。起動にやや時間がかかるのが気になる(画面をクリックすると拡大します) |
基本的なプログラミングスタイルは、これまでどおりJFC(Java Foundation Class)やAWT(Abstract Window Toolkit)によるコンポーネントを使って、フォームにコンポーネントを貼り付けていくもので、JavaアプリケーションからWin32アプリケーションまで、幅広いアプリケーションの作成が可能である。各コンポーネント間のイベント処理の設定も、従来どおり「インタラクションウィザード」を使って簡単に行える(画面2「インタラクションウィザード」)。
画面2 「インタラクションウィザード」 コンポーネント間のイベントの関連付けを行うウィザード。これによりユーザーインターフェイスの処理が容易になる(画面をクリックすると拡大します) |
Enterprise Editionで新規作成できるプロジェクトは、次の14種類である。
項目
|
説明 |
Empty Project | 空のプロジェクト |
AWT Application | AWTを用いたJavaアプリケーション |
AWT Applet | AWTを用いたJavaアプレット |
JFC Application | JFCを用いたJavaアプリケーション |
JFC Applet | JFCを用いたJavaアプレット |
Win32 DLL |
Win32 DLL |
Win32 Console Application | Win32コンソールアプリケーション |
Win32 AWT Application | AWTを用いたWin32アプリケーション |
Win32 JFC Application | JFCを用いたWin32アプリケーション |
Java Beans | Java Beans の作成 |
Servlet | Servletの作成 |
Empty Enterprise Bean | 空のEJBの作成 |
Enterprise Bean | EJBウィザードによるEJBの作成 |
DataBound Project Wizard | データバインドプロジェクトの作成 |
Win32実行モジュールを作成できるのがこれまでのVisual Cafeの特徴の1つだが、この機能もそのまま引き継がれている。エンタープライズ向けのプロジェクトは、「Empty Enterprise Bean」、「Enterprise Bean」が追加されている。「Servlet」と「DataBound Project Wizard」は、以前のバージョンから用意されていたもので、「Servlet」ではウィザードに答えて行く形でHttpServletの派生クラスが生成される。DataBound Project Wizardは、データベース接続を利用するコンポーネントとデータソースとの関連付けを行う。データベースドライバは、デフォルトではJDBC-ODBCブリッジが用意されている。ところで、以前のdbAnywareのサポートはなくなっているようだ。Symantec時代のVisual Cafeでは、自社製の高速なJITコンパイラがウリだったが、Visual Cafe 4でも同様のJITコンパイラが付属する。
■WebLogicの開発ツールとしての強い位置付け
前述のように、米WebGainは主に米BEA Systemsが出資しているツールベンダで、米BEA SystemsはJavaベースのアプリケーションサーバであるWebLogic
Application Serverを提供している。そう考えると、Visual Cafe 4はエンタープライズ向け、特にWebLogic Application
Serverで動作するアプリケーション開発を狙った開発ツールとして見ることができる。そのためVisual Cafe 4ではエンタープライズ環境向けの機能アップがいくつか見られる。また、今回使用したVisual
Cafe 4にはJDK 1.2.2とJDK 1.1.7Aの2つのバージョンのJDKが含まれている。エンタープライズ向けのコンポーネント作成では、JDK
1.2以降が必要となるが、逆にNetscape 4.xやIEなどのほとんどのブラウザで動作するJavaアプレットを作成する場合はJDK 1.1.xが必要となる。そのため、オプション設定で、JDKの切り替えが可能になっている。また必要に応じて別のJDKをインストールして利用することも可能である。統合環境で利用するコンパイラも、独自のJITコンパイラとJDKに含まれるものとを切り替えられる。
■エンタープライズに向けて強化された機能とは
Webアプリケーションを作成するための機能としては、Servletに対してはServletウィザード(従来のバージョンでも用意されていた)が、EJB(Enterprise
Java Beans)については、EJBウィザード、EJB検証コマンド、パーシスタントビルダなどが用意されている。
EJBウィザードでは、EJBのクラス名やパッケージ名などとともに、Beanのタイプ(Session BeanやEntity Beanなど)を選択し、ビジネスロジックとして公開するメソッドやプロパティなどを指定する(画面3「EJBウィザード」)。
画面3 「EJBウィザード」 EJBでは、Beanの名称やパッケージの名称とともに、EJBのタイプや提供するメソッドの設定などを行える。EJBの生成と同時にEJBクライアントプロジェクトも生成される(画面をクリックすると拡大します) |
そうすると、指定した内容に応じたEJBのベースクラスのサブクラスが生成される。また生成されたEJBを呼び出すクライアントプロジェクトも同時に作成される。そのため、EJBのデバッグが容易になっている。EJBクライアントプロジェクトに含まれるクラスにターゲットのオブジェクトのメソッド呼び出しを記述して動作を確認する。
Enterprise Editionでは、WebLogic Application Serverの開発用のシングルライセンスが含まれる。これを利用することで統合環境上からコンポーネントのデバッグが行え、完成したコンポーネントの配布も容易に行える。すでに稼働中のWebアプリケーションサーバがある場合はリモートデバッグも可能だ。
ただし、Visual Cafe 4単体ではJSPの作成とデバッグは行えない。同社のWebアプリケーション開発スイートであるWebGain Studio 4には、WebLogic Application ServerのシングルライセンスやVisucal Cafe 4 Enterprise Editionに加えてMacromediaのDreamweaverが含まれる。さらにDreamweaverにJSP作成用のエクステンションを追加することで、DreamweaverとVisual Cafe 4でのJSP作成が行えるようになっている。JSPを使ってWebアプリケーションを作成するなら、Visual Cafe 4ではなく、WebGain Studio 4を利用する方がメリットははるかに大きい。
■UMLでコードを自動生成するWebGain Studio 4
従来、Windows上で軽快に動作するのが特徴で、ファンの多かったVisual Cafeであるが、今回のWebGainバージョンではさらにエンタープライズ領域もカバーしつつある。特にWebLogic
Application Server上で動作するコンポーネントを作成する場合は魅力的な開発環境となるだろう。日本語版のリリースは現時点では不明だが、近いうちにリリースされるとのことである。
ちなみにWebGain Studio 4は、上述したように「WebLogic Application Serverの開発用ライセンス」、「Visual Cafe」、「Dreamweaver + JSPエクステンション」、UML/Javaのモデリングツールである「Structure Builder」などが含まれた、総合的なJavaによるWebアプリケーション開発環境だ。
WebGain Studio 4では、Structure BuilderがVisual Cafe 4のIDEに統合され、UMLによるクラスの設計も可能になっている点も注目したい。この機能を用いると、プロジェクト中にUML Diagramを作成し、この中にClass Diagram、Sequence Diagram、Use Case Diagramなどが作成できる。Class Diagramではマウスの操作によりメンバーやメソッドを作成したり、クラス間の継承関係を設定したりできる(画面4「UML Diagram」)。
画面4 「UML Diagram」 マウスの右ボタンで表示されるコンテキストメニューからUMLのエレメントを追加したり、クラス間の関係をマウスで指定したりすることでJavaのクラスが自動生成される(画面をクリックすると拡大します) |
そしてこれらの操作は、ダイアグラムのメタデータプロパティウィンドウからも行える(画面5「メタデータプロパティウィンドウ」)。UML Diagramで行った操作は、直接ソースコードに反映される。そのためソースコードを記述することなくクラス設計に基づいたコードが生成できる。
画面5 「メタデータプロパティウィンドウ」 UMLの同様の操作は、「メタデータプロパティウィンドウ」からでも行える(画面をクリックすると拡大します) |
WebGain Studio 4では、将来WebLogic Application Server以外にも、iPlanetやWebSphereといったWebアプリケーションサーバにも対応予定とのことである。国内での販売予定や価格などは今のところはっきりしていないようだ。
なお、米WebGainのサイトから、英語版のWebGain Studio 4のトライアル版(使用日数制限あり)、Visual Cafe
4 Standard Edition(フリー版)がダウンロード可能だ。一部日本語が正しく処理できないようだが、実際にインストールして試してみるのもよいだろう。
Visual Cafe
4 Enterprise Edition(英語版)の動作環境
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|
メモリ | 128MB以上(192MBを推奨) |
OS |
Windows 98/NT 4.0 SP3以降/Windows 2000 |
ディスク容量 | 500MB以上 |
CPU | Pentium IIもしくは233MHz以上のCPU |
グラフィックス | VGA以上の解像度のモニタ(SVGA以上を推奨) |
■米WebGain. Incについて
米WebGain(http://www.webgain.com/)は2000年1月に設立され、eコマース用途のアプリケーションサーバに向けたJavaコンポーネントの開発ツールを提供するベンチャー企業である。経営陣が米Symantec、米Tendril、米TopLink、米ZAT社の元幹部から編成されており、CEOであるJoe Menard氏は米BEA Systemsの出身だ。主な出資元も米BEA Systemsということで、米BEA Systemsが提供するアプリケーションサーバ製品であるWebLogic Application Server用のコンポーネント作成をサポートするツールが中心となる(会社のロゴデザインの色使いも非常に似ている)。
[関連記事]
サーバサイドJavaにシフトするJBuilder 4の新機能を検証する(@IT Java Solution)
[関連URL]
Visual Cafe 4 Standard Edition(フリー版)ダウンロード
WebGain Studio 4(トライアル版)ダウンロード
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