第7回 J2EEのセキュリティのキホンを知る
――セキュリティの宣言的アプローチ――
丸山不二夫
稚内北星学園大学学長
(http://www.wakhok.ac.jp/)
2001/12/7
セキュリティの宣言的アプローチ |
今回は、J2EEのセキュリティについて解説します。J2EEのセキュリティと一言でいっても、J2EEはWeb層、EJB層、データベース層、アプリケーション・クライアント層などの複数の層からなる多階層アプリケーションです。J2EEのセキュリティは、基本的にはそうした層ごとに設定されます。
J2EEの各層では、プログラムを通じてセキュリティの設定を行うことができます。例えばWeb層でなら、HttpServletRequestインターフェイスのgetRemoteUserメソッドやgetUserPrincipalメソッドを利用してセキュリティのためのコードを書くことができますし、EJB層ならgetCallerPrincipalメソッドやisCallerInRoleメソッドが使えます。
しかし、J2EEの大きな特徴は、このようにプログラムを通じてセキュリティを設定するだけでなく、むしろ、プログラム=コンポーネントには手を付けることなく、コンポーネントのdeploy時に、事後的にセキュリティの設定が可能となっていることです。プログラムを通じてセキュリティを設定する通常の「手続き的」な手法に対して、宣言を通じてコンポーネントにセキュリティ属性を設定する「宣言的」手法は、J2EEのすべての層で一貫して適用されていて、J2EEのセキュリティの大きな特徴を形成しています。
こうした、セキュリティの宣言的アプローチには次のようなメリットがあります。第1に、各層のコンポーネントの開発者は、コンポーネントの開発時にセキュリティ関係のコードを作らなくて済みます。第2に、J2EEサーバの管理者はコンポーネントのコードに手を入れることなく、環境に応じて柔軟にセキュリティのカスタマイズができます。
セキュリティには「認証」と「権限設定」の2つのレベル |
J2EEのセキュリティは、「認証」と「権限設定」の2つのレベルで考えられています。J2EEの各層のリソースには、自由なアクセスを許してよいものもあればアクセスを制限する必要があるものもあります。権限設定は、特定のユーザーやデバイスに、リソースにアクセスする特別の権限を認めるものです。ですから、「特定のユーザーやデバイス」を同定する認証の過程が、論理的には権限設定の基礎にあることになります。ここでは、まず、J2EEの認証について見て、次いで、J2EEの権限設定について見ていきたいと思います。
1/3
|
J2EEの基礎(第7回) | |
セキュリティの宣言的アプローチ | |
J2EEでの認証 | |
J2EEでの権限設定 |
連載内容 | |
J2EEの基礎 | |
第1回 Java Pet Storeで、J2EEを体験する(1) | |
第2回 Java Pet Storeで、J2EEを体験する(2) | |
第4回 J2EEアプリケーションを構成するコンポーネント | |
第5回 データベースのブラウザを作る | |
第6回 EJBにおけるコンテナとコンポーネント | |
第7回 J2EEのセキュリティのキホンを知る | |
第8回 J2EEのトランザクション処理 |
連載記事一覧 |
- 実運用の障害対応時間比較に見る、ログ管理基盤の効果 (2017/5/9)
ログ基盤の構築方法や利用方法、実際の案件で使ったときの事例などを紹介する連載。今回は、実案件を事例とし、ログ管理基盤の有用性を、障害対応時間比較も交えて紹介 - Chatwork、LINE、Netflixが進めるリアクティブシステムとは何か (2017/4/27)
「リアクティブ」に関連する幾つかの用語について解説し、リアクティブシステムを実現するためのライブラリを紹介します - Fluentd+Elasticsearch+Kibanaで作るログ基盤の概要と構築方法 (2017/4/6)
ログ基盤を実現するFluentd+Elasticsearch+Kibanaについて、構築方法や利用方法、実際の案件で使ったときの事例などを紹介する連載。初回は、ログ基盤の構築、利用方法について - プログラミングとビルド、Androidアプリ開発、Javaの基礎知識 (2017/4/3)
初心者が、Java言語を使ったAndroidのスマホアプリ開発を通じてプログラミングとは何かを学ぶ連載。初回は、プログラミングとビルド、Androidアプリ開発、Javaに関する基礎知識を解説する。
|
|