Linux Book Review
システム管理者の心得とは?
駆け出し管理者に薦めるLinux/UNIX関連書籍
中澤勇
@IT編集局
2001/3/27
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Linuxのインストールも完了した。コマンドラインでファイル操作もできるし、ソフトウェアも幾つかインストールしてみた。このレベルになると、右も左も分からなかったLinuxがどんどん理解できるようになる。しかし、いわゆる「インストール本」が解説しているのはここまでで、その先に進もうとする人のガイドにはなり得ない。
また、突然サーバ管理者にされてしまった、という人もいるだろう。cpコマンドで恐る恐るファイルコピーしている姿も、「分かっていない」上司には使いこなしているように見えてしまう。中小企業ではUNIXに習熟した管理者などそうそう雇えるわけではないから、「詳しそうな人」が一般業務と兼任するはめになる。
こうした駆け出しシステム管理者あるいは管理者予備軍は、何を頼りに学んでいけばよいのだろうか?
そこで用意したのが、これから紹介する5冊の書籍だ。これらの書籍はLinuxの「使い方」ではなく、LinuxやUNIXを管理するための知識やセオリーを得るのに役立つ。管理者として何をなすべきか、そしてどんなことを知っていなければならないのか。それはこれから紹介する書籍たちが教えてくれるだろう。
コマンドの使い方がサッと引ける |
Linuxコマンドパーフェクトリファレンス スコット・ホーキンス 著ピアソン・エデュケーション 2000年 ISBN4-89471-264-4 3800円 |
本書は、ファイル操作関係からX Window System、セキュリティ、ネットワーク、viなど、多くのLinuxコマンドを網羅したコマンドリファレンスだ。
Linux/UNIX標準のmanページでもコマンドの使い方を調べることは可能だが、そもそもコマンド名を知らなければmanページは使えない。本書はアルファベット順インデックスのほかに、「ユーザー管理関係」や「ファイルシステム」「ファイルの表示」など、機能別にコマンドが分類されているため、コマンド名が分からない場合でも目的のコマンドを見つけることができる。
数あるコマンドリファレンス本の中から本書を選択したのには訳がある。中途半端なイラストを一切排したシンプルさと、コマンドの説明、オプションの解説、実際の運用を考慮したTipsのバランスが秀逸なのだ。検索性の高さとあいまって、非常に使い勝手の良いリファレンスに仕上がっている。
ページをパラパラとめくっていると、普段使わないコマンドが意外に便利そうなことに気付かされたりもする。初心者から上級者まで、手元に置いておくと重宝するはずだ。
Linuxシステム管理のスタンダード |
Linuxシステム管理 ヨッヘン・ハイン 著アスキー 2000年 ISBN4-7561-3650-8 5800円 |
本書は、Linuxを管理するために必要となるシステムについての知識、考え方などを解説している。特定のディストリビューションに特化しない汎用性によって、あらゆるLinuxユーザーにおすすめできる内容になっている。
内容を大まかに紹介すると、FHS(File system Hierarchy Standard)の仕様、起動/終了メカニズム(BIOS〜init)、ユーザー管理とパーミッション、バックアップ、NLS、各種UNIXツールやネットワークサーバ類など、多岐にわたる。ただし、BINDやSambaなどの設定方法は、いわゆる「サーバ構築本」に比べてあっさりしている。本書では、構築方法よりもそのサーバが「どのような役割を持っているのか」に重点をおいているためだ。逆に、例えばFHSの解説は詳細を極め、30ページ近くが割かれている。この部分は、Windowsから移行してきたばかりで、Linux/UNIXのディレクトリ構造の意味やセオリーを把握していない人に非常に役立つだろう。
約550ページのボリュームは読みごたえ十分。本書の内容は普遍的なものなので長く使えるだろう。何度も読み返して本書の内容をかみしめてほしい。
Linuxをソースレベルから解説 |
Linux全書 フィル・コーンズ 著ピアソン・エデュケーション 2000年 ISBN4-89471-043-9 4900円 |
本書もまた、Linuxをさまざまな角度から解説しており、理解を深めるのに役立つ。ただし、本書の内容を理解するにはC言語の知識が多少必要になる。先にC言語の入門書をざっと読んでおくと、より楽しめるだろう。
本書は、目次上は「基礎」「システム管理」など5部構成になっているが、さらにまとめると2部構成に集約できる。前半はログイン方法やvi、bash、シェルスクリプトの使い方(第1部「基礎」)からカーネル、X、TCP/IP、セキュリティといった各種設定(第2部「システム管理」)まで。ここまではだれでも読め、すぐに実践することができる。
後半は残りの3部(「システムプログラミング」「デバイスドライバ」「内部処理」)である。ここからは、C言語のサンプルコードを使いながらLinuxの動作を解説するところが多くなり、最低でもCの記法やヘッダファイル、ポインタなどの知識がないと理解するのは難しい。しかしながら、サンプルソースを使ってfork()(システムコール)がPIDを生成する過程や第5部のext2の構造の解説など、入門書では絶対に味わえない満足感を得ることができる。
さすがにLinuxプログラミングの専門書ほど詳細ではないが、本書があればOSの内部で何が行われているのかを大まかにつかむことができる。少しがんばって読み込めば、多くを得ることができるだろう。
名著「Sunシステム管理」がSolarisで復活 |
Solarisシステム管理 城谷 洋司 著アスキー 2000年 ISBN4-7561-3568-4 5800円 |
書名でも明らかなように、本書はLinuxではなくSolarisの管理方法を解説したものだ。そんな書籍をここで紹介することに違和感を覚える人もいるかと思うが、視野を広げるためにもぜひ読んでみてほしい。システム管理者ともなれば、Linuxにとどまらない広い知識が要求されるのだ。
本書は基本的にSolaris 7をベースにしているが、必要に応じてSolaris 8にも言及している。また、SPARC版を中心にしつつ、x86版もフォローされており、Solarisについて学びたいなら文句なく「読むべき本」といえるだろう。
記述は詳細で、例えばシステムの停止方法では8種類のコマンドを、動作の違いも交えて紹介している。複雑なディレクトリ構成(Linuxとは異なる部分が多い)の解説も丁寧だ。さらに、本書を殺伐とした単なるマニュアル本たらしめないのが、随所に現れる「管理者としてどう運用すべきか」という視点だ。その中には、ユーザーの指導法までが含まれている。この、OSの違いを超えた普遍性はLinux管理者にも必ず役立つ。
もちろん、LinuxとSolarisには異なる点が多い。本書で紹介されている設定方法や操作方法の中には、Linuxでは使えないものもあり、Linux初心者がいきなり読んでも混乱するだろう。先に紹介した、『Linuxシステム管理』を読了、吸収した後に読むことをおすすめする。
システム管理本の草分け |
UNIXシステム管理 改訂版 アイリーン・フリッシュ 著オライリー・ジャパン 1998年 ISBN4-900900-14-1 6300円 |
本書は、UNIXシステム管理のバイブル的な存在として昔から高い評価を受けてきた『UNIXシステム管理入門』(アスキー)の改訂版である。改訂版最大の特徴は、SCO UNIX、SunOS、Solaris、HP-UX、Digital UNIX、IRIX、AIX、Linuxといった多くのOSを対象としながらも高度で密度の濃い内容を実現していることにある。これだけでも驚嘆に値する。
プロセスやファイルシステム、マウントの仕組みやブート処理といった技術解説、ユーザーアカウントやグループの効果的な使い方、CPU使用量やメモリ監視、シェルスクリプトによる作業の自動化、バックアップなどのシステム運用術がSystem V系/BSD系別あるいはOSごとに取り上げられている。管理者としての経験に裏付けられた解説は説得力に富んでおり、多くの示唆を受けることができるだろう。それでいて、各所にはユーモアを交えたコラムが挿入されており最後まで飽きさせない。本書を一読すれば、本書が名著としていまだに広く読まれている理由が分かるだろう。
各項目は極めて高度かつ詳細なのだが、当然ながらLinux以外についての記述も多く、Linuxだけを学びたい人には向いていない。それでもやはり、本書をおすすめしたい。Linuxだけでは分からない、「UNIX」というものを理解するためにも。『Linuxシステム管理』を読んだら、ぜひ本書にも挑戦してほしい。
各書評にあるボタンをクリックすると、オンライン書店で、その書籍を注文することができます。詳しくはクリックして表示されるページをご覧ください。 |
Linux Square Book Review |
- 【 pidof 】コマンド――コマンド名からプロセスIDを探す (2017/7/27)
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