上川純一
日本ヒューレット・パッカード株式会社
コンサルティング・インテグレーション統括本部
2005/7/26
Plan 9のネットワークファイルシステムが-mmツリーへ
6月7日の2.6.12-rc6-mm1で、-mmツリーにv9fsが導入されました。v9fsは、Plan 9のネットワークファイルシステムを実装したものです。NFSと比べて機能的にも性能的にも劣らないファイルシステムだそうです。
Andrew Mortonはいったん-mmツリーに入れたものの、2.6.13向けに何をLinusツリーにマージするかを検討するメールの中で、「I'm not sure that this has a sufficiently high usefulness-to-maintenance-cost ratio.(メンテナンスコストを考えると十分有用なものだとはいい切れない)」とコメントしていました。
Eric Van Hensbergenは、「v9fsは今後の大規模HPCクラスタ向けアプリケーションの基幹部分となるので、これから重要になるはずだ」と頑張っていました。
Plan 9のファイルシステムをLinuxに導入する計画がどこまでうまくいくのか、これからが楽しみです。
参考リンク: | ||
v9fsプロジェクトページ | http://v9fs.sourceforge.net/ | |
Plan 9 | http://cm.bell-labs.com/plan9dist/ | |
Plan 9(Wikipedia) | http://ja.wikipedia.org/wiki/Plan_9 |
PREEMPT_RT vs. I_PIPE
Kristian Benoitが、「PREEMPT_RT vs ADEOS: the numbers, part 1」というサブジェクトのメールをメーリングリストに投げました。
- Ingo MolnarのRTカーネル
- ADEOS nanokernel
- RTパッチを適用していないカーネル
の3つをベンチマークで比較したものです。lmbenchを動作させたり、サーバにping flooding攻撃を仕掛けて負荷を掛けた状態でどのようなレイテンシを維持できるか、といった比較を行っています。
頑張って計測した値があると議論は盛り上がるもの。このメールに対していろいろとレスポンスが返ってきました。PREEMPT_RTに関しては、Molnarが「hackbench(編注)を動かしてほしい」とか「-47-08以降でパフォーマンスを改善しているので、-48-06より新しいバージョンを試してくれ」とコメントしていました。また、Philippe GerumはADEOSのコアの部分を分離して、I_PIPEパッチを作成しました。
編注:hackbenchを使った負荷テストについては、 マイクロカーネル方式とリアルタイム性能 も参照。 |
Benoitの2度目のメールでは、より新しいバージョンのRTパッチとI_PIPEでカーネルのレスポンスタイムを計測しました。RTパッチを適用していないカーネルのレスポンスタイムは200マイクロ秒程度ですが、I_PIPEはPREEMPT_RTとほぼ同じ50マイクロ秒台のレスポンスタイムを出しています。
出典:PREEMPT_RT vs I-PIPE: the numbers, part 2 http://www.ussg.iu.edu/hypermail/linux/kernel/0506.2/0760.html |
今後も計測のフィードバックの良い影響を受けて開発が進むとよいですね。
参考リンク: | ||
ADEOS nanokernel | http://home.gna.org/adeos/ | |
I_PIPE | http://marc.theaimsgroup.com/?l=linux-kernel&m=111905065330978&w=2 | |
hackbench | http://developer.osdl.org/craiger/hackbench/ |
devfsよ、さようなら
It's nice to remove code from the kernel for a change...
(たまにはカーネルからコードを消すのもよいんじゃない?) |
Greg K-Hは、カーネルからdevfsを削除するためのパッチを出しました。
カーネル開発者の間で長い間「消す」「消す」といわれ続けてきたdevfsですが、とうとう消せる日がやってきました。devfsはカーネルのさまざまな部分に食い込んでいたためパッチは広範囲に及び、Greg K-Hの流したパッチのメールも22通に上りました。Greg K-Hがいうには、この一連のパッチは-mmに入れるつもりはなく、直接Linusのツリーに適用するためのパッチであるということでした。
しかしながら現実的な問題として、devfsがなくなると既存のものが動かなくなる、と組み込み系の開発者などから苦情が出てきました。その方面では、メモリとディスク空間をあまり消費しない/dev/の実装方法として、devfsが便利に利用されているようです。
そうした声に対して、Greg K-Hは「[ANNOUNCE] ndevfs - a "nano" devfs」というサブジェクトのメールで、ndevfsパッチを公開しました。このパッチは、カーネル空間でramfs上にデバイスファイルを動的に作成するファイルシステムを実装したものです。devfs独特のデバイスファイル名は利用しませんが、動的にメモリ上にデバイスファイルを作成する機能は実装しています。また、devfsは巨大でメンテナンスし続けるには多大な労力が必要ですが、ndevfsパッチ自体は300行もないため、メンテナンスの負荷も少なそうです。
ndevfsは「udevはメモリを消費し過ぎる」「ユーザーランドでいろいろ仕込む必要があるので難しい」といった苦情に対する回答になっているのでしょうか? 今後の展開が気になります。
(以上、敬称略)
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