2月版 仮想化技術「KVM」の高速化パッチ登場!
上川純一
日本ヒューレット・パッカード株式会社
コンサルティング・インテグレーション統括本部
2007/2/27
粘り勝ち? unionfsのマージ
Josef Sipekは「unionfs」に関して、「unionfs try #4」という4度目のメールを投稿しました。何度も投稿したかいもあって、ついにAndrew Mortonの管理するmmツリーの2.6.20-rc4-mm1にunionfsがマージされたそうです。
Andrew Mortonたちが一番気にしていたのは、「unionfsのマウント元のデータが変更されてはならない」という制約でした。また「実装がVFS(Virtual File System:仮想ファイルシステム)レイヤではなく、ファイルシステムのレイヤとして実装されている点がよくない」とも指摘しました。しかし、最終的には「ツールとしては便利なので、VFSの抜本的な改革が行われる前にマージしよう」という判断が下ったようです。
今後、Linusのツリーにもマージされるとよいですね。
関連リンク: | |
unionfs A Stackable Unification File System http://www.unionfs.org/ |
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2006年11月版 「ext4」が見えてきた! ついに利用方法公開 http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/watch2006/watch11b.html |
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VFSとファイルシステムの基礎技術 http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/fs01/fs01a.html |
OLPCは面白いアーキテクチャ
One Laptop Per Child(OLPC)プロジェクトをご存じでしょうか? 世界の子供たちにPCを与えるという崇高な理念を持ったプロジェクトです。
Linux Kernelのハッカーたちは、このOLPCプロジェクトで配布されるラップトップPCを「面白いアーキテクチャのPC」として注目しているようです。Mitch Bradleyは、OLPCプロジェクトのラップトップPCで採用されているOpen Firmware対応の機能をi386アーキテクチャ用に追加するパッチを投稿しました。
すでに、ppcやsparcアーキテクチャはOpen Firmwareに対応しています(ppc用とsparc用のOpen Firmware対応コードは別々に実装されています)。このパッチにより、i386アーキテクチャ用の実装もLinuxカーネルに新たに追加されることになります。そのため「同じようなコードが3種類もLinuxカーネルに入ってしまうのはどうなんだ」という議論が起きました。そのため、「3つ目の実装を追加するならば、1つのOpen Firmware用ドライバの実装に統合しよう」という結論に至ったようです。
関連リンク: | |
One Laptop Per Child http://www.laptop.org/ |
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OLPC News http://www.olpcnews.com/ |
メンテナンスはいつまで続けるものか?
-stableは、Chris Wrightによる2.6.19系列のメンテナンスとAdrian Bunkによる2.6.16系列のメンテナンスが順調に継続されています。
しかし、過去のバージョンのメンテナンスに関して「いつ実施するのか?」「いつ停止するのか(いつまで継続するのか)?」「いつ停止したのか?」がはっきりとしないため、ユーザーから不安や不満の声が上がっているようです。
Michael Kruftyは「2.6.18系列のメンテナンスはいつ停止されたのだ! メンテナンスを停止するならばアナウンスくらいしてほしい」と不満をぶつけました。彼は複数のセキュリティ対策パッチを準備して、それを2.6.18の-stableツリーに投稿しました。しかし、適用した版がリリースされていないことに気が付き確認に至ったようです。これに対して、Greg K-HとChris Wrightは「一応パッチは受け取ってキューには入れている。2.6.19がリリースされたので基本的には2.6.18のメンテナンスは停止しているが、セキュリティフィックスの内容によっては検討する」と回答しました。しかし、現状2.6.18系列の新規リリースは停止しています(原稿執筆時点)。
また、Chuck Ebbertも「2.6.18はリリースされないのか?」という質問を投げました。この投稿から「果たして、Adrian Bunkは2.6.16のメンテナンスをいつまで続けるのか?」という話題に発展しました。これに対して、Adrian Bunkは「2.6.16は、しばらくメンテナンスを続ける。新しいバージョンに乗り換えるとしたら、2.6.25か2.6.30くらいからだ」と説明しました。
果たして、どのカーネルツリーで一番安定したメンテナンスがなされるのか?ユーザーとしては、気になるところです。
- 2.6.19.2(1月10日)
・mincoreの際にユーザー空間を適切にロックしていなかったのを修正
(CVE-2006-4814)
・破損したcramfsがoopsを発生する(CVE-2006-5823)
・ext2_find_entryより以降のページを無視する(CVE-2006-6054)
・ext3のディレクトリが破損している場合の扱いを改善(CVE-2006-6053)
・bluetooth:CAPIメッセージの扱いを改善(CVE-2006-6106)
など51パッチ
- 2.6.16.38(1月21日)
・x86_64 NT bitが次のタスクに漏えいする(CVE-2006-5755)
・eflagsをコンテキストスイッチの際に保存する(CVE-2006-5173)
・そのほかのセキュリティ勧告対応(CVE-2006-6106/CVE-2006-5757/
CVE-2006-6060/CVE-2006-5749/CVE-2006-4814/CVE-2006-5823/
CVE-2006-6053/CVE-2006-6054/CVE-2006-6056)
など44パッチ
- 2.6.16.39(1月31日)
・bluetoothの複数の修正
・v4l/dvbの複数の修正
・atiipxでハングする問題の修正
など26パッチ
(以上、敬称略)
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