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HDMLでEZweb対応のページを作る(2)
HDMLの特徴とその記述方法

佐藤 崇
2001/5/23

今回のおもな内容
UP.Simulatorを自在に使いこなすことが近道
UP.Simulatorを利用するうえでの注意点・TIPS
HDMLのタグ

 前回の「携帯に特化したHDMLとは何だろう?」では、EZwebが置かれている現状を中心に大まかに見てきました。今回からは、HDMLを中心にEZwebでコンテンツやアプリケーションを開発される方向けにステップごとにややテクニカルな内容を追いかけていきたいと思います。

 

    UP.Simulatorを自在に使いこなすことが近道

 HDML向けのコンテンツを開発するためには、HDMLに対応したブラウザが必要です。米Openwave Systemsの「UP.Browser」がこれに対応しています。なおUP.Browserは、今後「Openwave Mobile Browser」となり、ユーザーインターフェイスなどが改善され、WML・XHTML・HDMLすべてに対応したブラウザとなることがアナウンスされています。

 このUP.Browserは携帯電話に搭載されているので、コンテンツを制作するPC上で動作するわけではありません。しかし、Openwave SystemsではHDML上で動作するコンテンツを作成する人々(コンテンツデベロッパー、コンテンツプロバイダ)向けに、Web上で開発者向けプログラム(Openwave ディベロッパープログラム)により、UP.Browserとほぼ同様の機能が再現できる「UP.Simulator」を無償で提供しています。この開発者向けプログラムは、現在全世界で10万人以上の方が利用しています。また、モバイルでは最先端を突き進む日本向けに日本語完全対応となっています。

画面1 Openwaveディベロッパープログラム

 UP.Simulatorは、UP.SDK(Software Developer's Kit)に同梱されています。UP.SDKは、UP.Simulator以外に、Pushメッセージを送信するためのツールやコンテンツ作成のためのPerlモジュールなどが同梱されており、コンテンツ作成のために必要なものがいろいろと詰まっています。全部で8Mbytes程度です。なおこのUP.SDKは、Macに対応する予定は当分ないようです。

 日本語対応とはいえ、あくまでインターフェイスなどが英語圏向けのソフトなので、UP.Simulatorのインストール後にカスタマイズする必要があります。Openwave ディベロッパープログラムで、方法などが詳細に説明されているのでそちらの方をご覧ください。

    UP.Simulatorを利用するうえでの注意点・TIPS

■ネットワーク設定に気を付けよう

 設定は、「Setting」メニューで行うようにします。Settingメニューには、「UPLink setting」「Network setting」「Device setting」の3つがあります(画面2)。

画面2 UP.Simulatorの設定メニュー

 EZweb対応の携帯電話では、搭載されているブラウザとゲートウェイサーバ(UP.Linkサーバ)が一体となって、初めてインターネットにアクセスできるようになっています。

 WAPのモデルは、データ処理能力上限界の多い携帯電話端末上ですべての処理を行うのではなく、ネットワークコンピューティングの発想からゲートウェイサーバと携帯電話(クライアント)の組み合わせで機能を発揮できるような仕様となっており、この点がPCベースのインターネットと異なります。

 コンテンツ配信サーバからゲートウェイサーバ間はTCP/IPベースでのデータ交換、ゲートウェイサーバと端末間はUDP/IPによるデータ交換となっています。UDP/IP間では、ゲートウェイサーバで変換された(コンパイルされた)HDMLcというデータが端末に渡されています。それによってトランザクション量の低減・処理速度の改善などが実現されています。

 ということはUP.Simulatorは、本物の携帯電話とほとんど同じプログラムのはずで、その機能(ゲートウェイサーバを経由したインターネットアクセス)も利用できるようになっている必要があります。それが「UPLink setting」です。

 しかし、UP.Linkサーバを利用する場合、ネットワークを常に使用する形になるので、自分のパソコンにあるコンテンツを参照するにもインターネットに接続する必要が出てきます。またローカルで完結したネットワーク内では使用できません(LANでプロキシサーバなどを使用している場合は注意が必要です)。従って、作成したコンテンツの確認にUP.Linkサーバを使用するのは現実的ではありません。

 そこで、UP.Simulatorには、UP.Linkサーバを経由させずに使用できる「HTTPダイレクトモード」と呼ばれる機能が搭載されており、前述の問題を解消できます。

画面3 HTTPダイレクトモードの設定(画面をクリックすると拡大表示されます)

 ただし、メールやブックマークなど、より実機に近い環境でテストしたい場合は、UP.Linkサーバに接続して検証するようにしてください。通常UP.Linkサーバは携帯電話事業者が所有していますが、UP.Simulatorでは接続することはできません。Openwave Systemsでは、UP.Linkサーバを無償で公開しており、Openwave ディベロッパープログラムでユーザー登録を済ませれば、使用できるようになります。しかし、認証はIPアドレスを識別することで行っているため、例えばプロバイダ接続のように、接続のたびにIPアドレスが変更になる場合、その都度設定の変更が必要なので注意が必要です。

 また、UP.Linkサーバ経由での接続は特殊な通信ポートを使用しています。そのため、場合によっては利用できないこともあります。詳しくはOpenwave ディベロッパープログラムに事例が報告されていますが、カラー対応のUP.Linkサーバは「devgatej」という特殊なサーバを使用する必要があるので特に注意が必要です。

■リロード機能を使いこなそう

 UP.Simulatorは、UP.Browserと同様、キャッシュをできるだけ有効活用しようとします。そのため内容を変更しても表示が変わらない場合があります。「edit」メニューにリロード機能がありますので、そちらで定期的に情報を更新しながら開発を進めましょう。

■ブラウザのスキンを使いこなそう

 「file」メニューを利用すると、スキン(ブラウザのインターフェイス)を変更できます。デフォルトでは海外向けの携帯電話のインターフェイスになっていますが、phoファイルと呼ばれるものを入れ替えると、簡単に端末のインターフェイスを変更できます。Openwave Systemsのサイトから、実際に日本で発売中の端末のインターフェイスデータがダウンロードできます。またこのphoファイルはテキストデータで、自分でそれを修正したりある程度カスタマイズすることもできます。Openwaveではサポートは行っていませんが、より綿密な開発を行いたい場合などは、このファイル(Win98でインストールするとC:\Program Files\Phone.com\UPSDK331\configsにphoファイルが置かれます)を解析されると面白いかもしれません。

画面4 デフォルトのUP.Simulator画面(画面をクリックすると拡大表示されます) 画面5 スキンを使ってUP.Simulatorの画面を国内の携帯端末のものにしたところ(画面をクリックすると拡大表示されます)

■URLやローカルファイルにアクセスするときのパス

 URLは、go:と表示されている部分に入力します。起動時には、「setting」メニューで指定されたデフォルトのページにアクセスするようになっています(UP.Link接続の場合は、接続ゲートウェイサーバのトップメニューが表示され、HTTPダイレクトモードではhome:URLで指定されたサイトにアクセスします。検索エンジンなどのアドレスを入れておけば間違いがないと思います)。http://は省略できます。またローカルファイルにアクセスするためには、

file://c:/ez/test.hdml

のように記述します(これ以外の書き方ではアクセスできないので注意が必要です)。

■ブラウザが出すエラー

 UP.SImulatorは、時々エラーが起こって強制終了する場合があります。原因は以下のケースの場合がほとんどてす。

  1. イメージ画像の処理中にエラーが発生した
    この場合は原因の画像ファイルを削除するとエラーはなくなります。
  2. OSのレジストリデータ上で操作の過程で何らかのエラーが生じた
    いったんUP.SDKをアンインストール、レジストリデータも削除し、再インストールを実行する(詳細はOpenwave Systemsのサイトに書かれています)。

 そのほか、タグの記述が間違っている際は「Bad Source. Check Info Window for compile error」、MIMEタイプの設定に誤りがある場合は「Check Window for possible bad content-type」、HTMLファイルをゲートウェイサーバを経由させず直接ブラウザで開こうとする場合は「HTML or Plain text. Can't compile this...」と表示されます。

    HDMLのタグ

 さて、次にHDMLのタグについて見ていくことにしましょう。HDMLのタグの数はなんと15個しかありません。タグやアトリビュートには、大文字・小文字どちらを使用しても構いません。ただ注意すべきなのは、ブラウザサイトでエラーをハンドリングする機能に対応していないので、文法を誤ると、ページがすべて表示されないということです。

 オプションがいろいろとありますが、表現が限定された携帯電話向けとなっているからです。バージョンが「2.0」「3.0」「3.1」といろいろとあります。これらはすべてバックワードコンパチビリティを保証しているので、過去のバージョンの言語を新しいバージョン対応のブラウザで表示することは可能です。

  • HDML 2.0
     HDMLの根幹となっている仕様です。UP.Browser 2.xが対応していますが、現在はほとんどありません。初期のころのアメリカの携帯電話に搭載されていたバージョンのようですが、定かではありません。4種類のカードとデッキのみですべてを表現したものとなります。ただその名残がUP.Linkサーバと連動したアプリケーション内(EZmailなど)で残っています。
  • HDML 3.0
     HDML 2.0では実現できなかった<A>タグなどが追加され、WML1.0にはない幾つかの機能も搭載されています。日本で最初のEZweb対応機から対応しています。
  • HDML 3.1
     WMLに対応した際、WMLにはあってHDMLにはない幾つかの機能を追加したもの。一般にはHDML 3.0と同義として理解されているようですが、幾つかの隠しタグ・隠しアトリビュートがあります。有名なものとして、タイマー機能・チョイスカードにおけるマルチプルチョイス機能などがあります。

 通常はHDML 3.0で考えればいいと思います。HDMLと携帯電話に搭載されているUP.Browserのバージョンの関係については、http://developer.openwave.com/resources/markup.htmlを参照してください。また、国内の携帯電話が搭載しているUP.Browserのバージョンは、http://developer.openwave.com/ja/resources/phones.htmlで確認できます。

 HDMLでは、マークアップ言語のデータの最初と最後に<HDML></HDML>というタグを使用します。<HDML>タグにはHDMLのバージョンをアトリビュートとして記述します。また、HDMLの初期設定では、すべてのページでダイレクトにアクセスされることを拒否し、ブックマークに入れられないようになっています。そこで、ダイレクトアクセス可能なページにする場合は「public="true"」、ブックマークに入れても構わないページは「markable="true"」を、<HDML>タグのアトリビュートとして記述します。こうした記述が入っていないページには、携帯電話からは一切アクセスできません(アクセスエラーと表示されてしまいます)。

<HDML version="3.0" public="true">
  <DISPLAY>
  テストです。きちんと表示されますか?
  </DISPLAY>
</HDML>
リスト1 HDMLの記述例(ファイルの拡張子・サーバの設定などは前回の連載を参照)

 <DISPLAY>タグの詳細については、次回説明します。そのほかには、下記のようなタグがあります。

カードの宣言(ページの種類の定義をします)
 <DISPLAY> <CHOICE> <ENTRY> <NODISPLAY>
表示成形(実際の細かい表示について定義します)
 <CENTER> <RIGHT> <TAB> <WRAP> <LINE> <BR>
リンク
 <ACTION> <A> <CE>
画像表示・データ再生
 <IMG>
表1 HDMLのタグ一覧

 次回は、これらすべてのタグの説明とその効果的な使い方を解説する予定です。

Profile
佐藤 崇(さとう たかし)
 EZweb最大の検索総合サイト「w@pnavi」やモバイル総合コミュニティ「itokio.com(イトキオコム)」を立ち上げたBITRATING代表。WebデザインやOpenwave在籍の経験などを生かし、コンテンツ提案・作成・運営・アドバイザリ活動などを幅広く展開。自身の立ち上げたサービスの月間総PVは2500万を超える。株式会社スターグリーティングス スーパーバイザも兼任。1999年慶大卒。

「連載 HDMLでEZweb対応のページを作る」

 



 


 
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