e-ビジネスに最適なデータセンター選びのポイントを紹介
【特集】データセンター活用術

データセンターがホットな話題だ。むしろ、話題ばかりが先行し、実情が分かりにくくなっているきらいがある。データセンターという言葉の流行にのって、かねてから存在するコロケーション(ハウジング)やホスティングのサービスまでが、まるで、あらゆる問題を解決する魔法の小箱であるかのようにもてはやされている。この記事では、データセンターについて基礎的な事実を確認することから始め、データセンターのメリットや特性を指摘し、ユーザーの方々に正しい選択眼を養っていただくことをめざしたいと思う。

三木孝明
ユーユーネット・ジャパン
2000/9/26

Part.1 データセンター最新トレンド

データセンターは情報発信向けのサービス

 そもそもデータセンターとは、大まかに言えば、主として情報発信を目的とし、Webサイトなど、ユーザーのデータをセンター内に預かるサービスだ。ユーザーは多くの場合、センター内でインターネット接続の権利を購入し、Webサイトをインターネット上に公開するのである。

 この、「主として情報発信を目的とする」ことが、データセンター活用のポイントの1つだ。データセンター内に、WebサーバやWebサイトを置くことはできても、VoIP(Voice over IP)の機器や、Webアプリケーションの構築プラットフォームを置くことは認められないケースが多い。一方で、専用線によるインターネット常時接続を考えてみるとしよう。この場合、ユーザーは自社内に「インターネット接続サービス」を導入することになり、Webサーバ以外にも、あらゆる上位レイヤーでの機器やアプリケーションを用意することができる。無論、情報発信ばかりでなく、情報収集にも使えるし、社内データベースと連動させて、能動的なECサイトを構築したりすることもできる。

図1 データセンターでは情報発信がメインになるが、専用線による常時接続では回線を通して外部のWebサイトへのアクセスも可能である。

 このように、データセンターは、Webサイトを構築するにあたって潤沢で確実な接続環境を安価に用意するための、あくまで選択肢の1つなのである。ホームページを立ち上げるには、何もデータセンター内にデータを置くだけが手段ではないのだ。それでは、自社内でWebサーバを立てる場合と比べてデータセンターを利用する際のメリットや制約は何なのか? データセンターがなぜ注目を集めるのか? こういった点をよく理解し、自社にとって最適な方式を考えることが、データセンター活用の第一歩となるだろう。

特徴とメリット

 まず、データセンターのメリットは、自社内でWebサーバを立てるのに比べ、頑丈で基本スペックの高い接続環境を、安価に利用できることにある。例えば、データセンター事業者は、24時間ノンストップの電源を用意してくれるし、データセンターの建物は頑丈なので、地震や増水にも強い。空調も強力なものが入っているから、サーバから出る熱を効果的に排出してくれる。こういった基本インフラも、きっちりと高次元に確保しようとすると、自社内ではなかなか難しいのが現状だ。一般のオフィスビルでは、24時間無休電源の確保も容易ではない。雷による瞬停の心配もつきまとう。ビル管理会社の都合によってメンテナンスや停電が発生することも多いし、サーバラックを立てようにも、基礎工事の段階からサーバマウントを前提に頑丈な床を用意している建物は、多数派ではない。

 また、データセンターにおいては、専用線接続よりも安価なインターネット接続サービス権を購入することができる。なんといっても、専用線接続と比べて、第一種電気通信事業者に支払う光ファイバの料金が不要なのは大きい。光ファイバを導入すれば、月々しかるべき金額がかかるが、データセンター内でイーサ接続をすれば、この光ファイバ代金が不要だ。

 一方で、Webサーバをデータセンター内に設置するに際して念頭に置くべきこともある。まず、センター内のサーバにデータを送り込むためには、別途、アップロード用にインターネット接続が必要となる。また、データやサーバが手元にないので、サイトのこまめなアップデートや、社内データベースと密接に連動したWebサイトの構築には、データセンターは向かない。また、BGP4接続も、データセンターでは利用できない。

サービスの提供形態

 伝統的な「データセンター」サービスには、大きく分けて、2種類ある。「コロケーション(ハウジング)」と、「ホスティング(シェアードホスティング)」だ。

●コロケーション(ハウジング)
 ユーザーのWebサーバを事業者に預けるサービス形態。サーバ運用はユーザー企業の責任である。このサービスのメリットは、ユーザー企業によるサーバ運用の自由度が高いことだ。ユーザーとしては、自社のサーバをデータセンターに持ち込み、センター内でインターネットコネクションを購入することになる。サーバは自前なので、どんなサーバを利用しても、どんなOSを搭載しても自由である。昨今いわれる「データセンター」とは、このコロケーションの、高スペックでスケールの巨大なものを指すことが多い。コロケーションサービスには大規模な施設の建築が必要で、日本ではISPや大手メーカーが中心となって、このサービスを提供している。大規模なトラフィック増が予想されたり、アクセスの集中にも耐えうる大型サイトをつくったりする場合には、ハイエンドのコロケーションサービスを選択されたい。

図2 データセンターのイメージ図。多数のラックが並んでいるセクションと、セキュリティを確保しながらもユーザー訪問を実現する仕組みが共存していることが特徴。

●ホスティング
 インターネット接続だけでなく、サーバやOSもデータセンター事業者が用意し、1つのサーバに複数ユーザーのデータを入れるサービス形態。1台のサーバを多数のユーザーが共有する点を強調し、「シェアードホスティング」とも呼ばれる。どちらかといえば、「アウトソース」や「他社とのリソースの共有化」という観点から構築された、価格メリットに力点を置いたサービス。コンシューマ向けISPがやっている「ホームページお預かりサービス」のイメージでとらえればよい。基本は単純なHTML文書を公開するためのサービスだが、自動見積機能がついていたり、クイズやアンケートができたりといった能動的なサイト構築も、あらかじめ用意されている指定のCGIを利用すればそれなりに可能だ。

 シェアードホスティングの弱点は、サーバを共有することそのものにある。例えば、1台のサーバにどれだけのデータを搭載するのか、1本のイーサネットケーブルにどれだけのユーザーを収容するのかは、各事業者の方針次第。ユーザー数が少ないうちはリソースを独占的に利用できるものの、ユーザーが増えるとレスポンスが低下する可能性もあるのだ。また、最悪の場合、同じサーバに収容されたA社のCGIがループにはまり込み、暴走してサーバを止めてしまったと想像してほしい。すると、A社だけでなく、あなたのWebサイトも閲覧不能になってしまう危険性も否定できない。


【コラム】Webアプリケーション構築環境のホスティング
 シェアードホスティングで公開するWebサイトは、通常、HTML文書と、業者指定のCGIのみで書く必要がある。つまり、文章と絵と、簡単なアンケートなどの仕組みを備えたサイトをつくるには適しているが、本格的なECサイトの構築など、能動的なサイトやWebアプリケーションの開発には限界がある。したがって、Web上で稼働する高度なアプリケーションやソリューションは、シェアードホスティングでは構築できないというのが、これまでの常識だった。

 この常識を打ち破ったホスティングがある。ユーユーネット・ジャパンがこの夏から提供している、「ユーユーホスト シェアード」サービスだ。このサービスの特徴は、Webアプリケーション構築プラットフォームをホスティングしていること。ユーザーは、通常のPerlなどに加え、マイクロソフトのDBMS「SQL Server 7.0」や、米アライア社のWebアプリ開発環境「ColdFusion 4.5」を、共有型レンタルという価格メリットの大きい方式で使えるのだ。

 これらの開発ツールを使うと、ホームページ上で自動見積機能がついていたり、さらにはワープロソフトなどの本格的なアプリケーションが動いたりといった、単なる絵と文書を超えたWebサイトを構築することが可能になる。従来の情報伝達を主目的としたホームページを超えて、営業やPR、マーケティングの一部としてビジネスに貢献するサイトを作成することができるようになる。


 Part.1では、データセンターについて、一般的なビジネスモデルを説明した。次の章では、データセンター利用を決めたユーザーの役に立つ、データセンター選択のポイントを案内したい。

Index
【特集】 データセンター活用術
Part.1 データセンター最新トレンド
データセンターは情報発信向けのサービス
特徴とメリット
サービスの提供形態
[コラム] Webアプリケーション構築環境のホスティング
  Part.2 データセンター選択のポイント
ネットワーク性能で選ぶ?
運用体制で選ぶ?
場所で選ぶ?
[コラム] データセンターは本当に必要?
  Part.3 データセンター事例集
「データホテル」(株式会社オン・ザ・エッヂ)
  Part.4 データセンターのこれから
(近日公開)
 


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