e-ビジネスに最適なデータセンター選びのポイントを紹介
【特集】データセンター活用術

三木孝明
ユーユーネット・ジャパン
2000/9/26

Part.2 データセンター選択のポイント

 データセンターを利用することを決めたら、次は、どのデータセンターを使うかを決める段だ。今回は、データセンター選択のポイントを、案内したいと思う。

ネットワーク性能で選ぶ?

 誰だって、接続環境は速い方がよい。データセンターの選択にあたっては、ユーザーのサーバとインターネットのバックボーンネットワークが、どのようにつながることになるのか考慮すべきだ。インターネットは、どこかが速く通信できれば、別のところでボトルネックが生じるという性質のもの。バックボーン内部がいくら速くとも、バックボーンへの入り口が遅ければ、何のメリットもないのだ。

●共有型接続
 100Mbpsの帯域を持つ1本のイーサネットケーブルに、多数のユーザーを収容する。100Mbpsは保証された帯域ではないが、アクセスが少なければ、迅速なレスポンスが期待できる。ユーザーを多数収容すれば、どこまでも価格を安く設定できるが、アクセスが集中するとレスポンス低下の恐れもある。重厚壮大なECサイトなどには向かないものの、とにかく軽いWebサイトを安くつくるには、こういった接続形式のホスティングを選ぶ方法も有効だ。安いし、限られたアクセスがダイヤルアップ環境からやってくる程度なら、これで十分なレスポンスが期待できる。

回線
月額接続料金(円)
1M
50,000
1.5M
75,000
2M
100,000
3M
150,000
4M
200,000
5M
250,000
6M
300,000
7M
350,000
8M
400,000
9M
450,000
10M
500,000
15M
650,000
20M
800,000
25M
900,000
30M
1,000,000
35M
1,100,000
40M
1,200,000
45M
1,300,000
50M
1,400,000
55M
1,500,000
60M
1,600,000
65M
1,700,000
70M
1,800,000
75M
1,900,000
100M
2,000,000
表1 月額固定料金の例

●専用型接続
 イーサネットケーブルとバックボーンの間に何らかの収容装置や帯域制御装置を挟んで、保証帯域を確保するサービス。例えば1Mbpsなら1Mbps、15Mbpsなら15Mbpsの帯域を確保するのが、このタイプのサービスだ。料金は高くなるが、帯域は確保される。もっぱら、自社でバックボーンネットワークを持った、「電気通信事業者」としてのインターネットプロバイダが、このタイプのコロケーションを提供している。

 帯域制御を行う「専用型接続」の例として表1に提示してあるのは、ユーユーネットの「ユーユーホストコロケーション」、別名「ソリューション データセンター」の接続料金だ。共有型と専用型では、専用型の方が高額なサービスであり、100Mbpsの共有型より、20Mbpsの専用型の方が高価で速いなどということがあっても、まったく不思議ではない。

運用体制で選ぶ?

 コロケーションを利用する場合は特に、自分のサーバを安心して預けることができる環境があるか、十分にチェックする必要がある。チェック項目は多数あるが、表2の質問に、満足に答えられる事業者なら、ほぼ安心と言えるだろう。すべての質問事項に満足な答えを得るのは難しいが、基本としては、建物が頑丈であることと、インターネット接続が潤沢に用意されていることを、チェックしてほしい。

電力会社からの電源は何系統?
自家発電機はありますか? 自家発電機は何分で立ち上がりますか?
耐火設備はどうなっていますか?
現地スタッフによる一次保守の内容を教えてください。機器の電源リセットやランプの目視を、24時間365日していただけますか?
外からメンテナンス用の回線を、ラックへ引き込めますか?
データバックアップ作業を依頼できますか?
空調の仕組みを教えてください。
ラックサイズを教えてください。ラックあたりの重量制限はありますか?
サーバに何か異常があったら、すぐ当社に連絡してくれますか?
表2 データセンター選択の際のチェック項目

 また、コロケーションの場合は、サーバを導入する段階でも気をつかう。表3にまとめてみた。

工具は誰が用意するのですか?ユーザーですか?データセンター事業者ですか?
データセンタの設備からユーザーのラックまでは、誰が配線するのですか?
鍵やセキュリティカードは、いくつ、どのタイミングで渡されるのですか? これらを請求するのに、社員証や名刺は必要ですか?
何人で、データセンターに入れますか?
現地に、電話機はありますか?
表3 データセンター導入の際の注意事項


場所で選ぶ?

 データセンターの住所に関する問い合わせも多い。事業者には、「データセンターは東京都内ですか?」という質問が多々よせられている。むろん、都市部なら交通の便がよいため、いざサーバに事故があっても、ユーザーがすぐに駆けつけることが可能という安心感がある。ユーザー企業の多くも、この安心感を買って、都市部のデータセンターを選択するのだろう。一方で、会社事務所から離れた地域に格安データセンターを見つけた場合は、そちらを選ぶという選択肢も、十分ありうる。その場合は、ユーザーが現地に足を運ぶことも簡単ではないので、現地スタッフによる監視代行サービスはあるか、サーバのリモート監視用に専用回線を引き込むことが許されるか、確認してみるとよい。現地スタッフが24時間待機しているデータセンターであれば、サーバのリセットくらいは、代行してもらえるかもしれない。ちなみに、監視用に限らず、外部からの回線の引き込みは歓迎されないのが普通だ。監視用回線の引き込みが可能なデータセンターは、例外的である。


【コラム】データセンターは本当に必要?
〜高速アクセス環境と表裏〜
 データセンターにWebサイトを預けるのは、専用線を買って自社内にWebサーバを立てるより、安価でスケールメリットの出る接続形態である。データセンターが注目を集めている理由を一言で言えば、コンテンツビジネスが派手に開花し、データ通信量が増えれば、そのデータをためておく「データセンター」の需要が高まるという読みがあるからだ。

 が、ここで、あえて、過熱気味のブームに水を差すようなことを、言わせてもらいたい。データセンターだけが強調され、もてはやされる現状は、非常に奇妙な事態である。

 データセンターは心臓であり、データは血液である。ネットワーク事業者の立場から見れば、データというものは本質的にフローであり、血液と同じくネット内をめぐるものである。しかるに、データセンターとは、データをストックする機能を持った場所である。もし、データセンターが多数あっても、センター内のデータを見に来る人がいないと、データは流れていかない。データが流れていかないと、データセンターの意味がない。心臓が動かないと、血液が心臓のなかで腐ってしまうのと同じだ。データセンタービジネスの健全な発達には、実は高速アクセスにより、データを見に行くための手段を同時に充実させていく必要があるが、日本はこの分野で致命的に遅れている。

 そもそも結論を言ってしまえば、光ファイバや、xDSL、無線も含めた高速アクセスが華やかに開花して、初めて大規模データセンターが必要となるほどのデータトランザクションが始まるのである。国民や一般企業のほとんどがダイヤルアップで接続している日本では、そもそも大規模データセンターなど贅沢品なのかもしれない。データセンター内で、100Mbpsの大容量を購入したとしても、それを見に来る訪問者側がダイヤルアップなどの低速回線ばかりでは、100Mbpsなど、まったく不要である。隣の韓国では、国策でADSLが爆発的に普及しており、日本は潤沢なインターネット接続環境という点において、近隣各国に後れをとっている。このような現状下、データセンターという「箱物」ばかりにスポットをあてる昨今の潮流は、ネットワーク社会のバランスの取れた成熟という観点からは、必ずしもよいものとは言えない。通信とは、箱ではなく本質的にフローであり、もっと言えば、ソリューションであるという原点を見失った議論に、IT革命の向こうを見据えたビジョンがあるとは、とうてい思えないのである。


 さて、今回のPart.1とPart.2では、データセンターについて、古典的なサービス像を案内させていただいた。次回のPart.3では、データセンターを利用することで、どのようなビジネスが成立するのか、事例を交えて案内していこう。

Index
【特集】 データセンター活用術
  Part.1 データセンター最新トレンド
データセンターは情報発信向けのサービス
特徴とメリット
サービスの提供形態
[コラム] Webアプリケーション構築環境のホスティング
Part.2 データセンター選択のポイント
ネットワーク性能で選ぶ?
運用体制で選ぶ?
場所で選ぶ?
[コラム] データセンターは本当に必要?
  Part.3 データセンター事例集
「データホテル」(株式会社オン・ザ・エッヂ)
  Part.4 データセンターのこれから
(近日公開)
 


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