セキュリティ対策からクラウド間接続まで
Vyatta――クラウド時代の仮想ルータ活用術:実践編

松本直人
日本Vyattaユーザー会 運営委員
さくらインターネット研究所 上級研究員
2010/12/8

クラウドとクラウドをつなぐ「クラウドブリッジ」

 Vyattaには最近、クラウドとクラウドなどをLAN間接続する「クラウドブリッジ」(Layer 2 Bridging)機能が加わりました。

 これはOpenVPNによる相互接続で実現され、ルータそれぞれのeth1インターフェイスに接続されるネットワークは同一LANとして見えるようになります。これにより、セグメント分割やルーティング設定などの作業から解放され、より柔軟に、クラウド環境や自社データセンター設備との間で設定を共有することができます。

図1 クラウドブリッジ機能

 注意点としては、shared-secret-key-fileで示される鍵ファイルは事前に相互で共有しておき、それをお互いで利用するようにしましょう。またVMwareなどの仮想化環境で利用する場合には、対応する仮想スイッチのプロパティ中のセキュリティ欄にある「無差別モード」を「承諾」にするなどの変更が必要なことに注意しましょう()。

R-A # set interfaces bridge br0
R-A # set interfaces ethernet eth1 bridge-group bridge br0
R-A # set interfaces openvpn vtun0 bridge-group bridge br0
R-A # set interfaces openvpn vtun0 mode site-to-site
R-A # set interfaces openvpn vtun0 remote-host B.B.B.B
R-A # run vpn openvpn-key generate /root/key
R-A # set interfaces openvpn vtun0 shared-secret-key-file /root/key

R-B # set interfaces bridge br0
R-B # set interfaces ethernet eth1 bridge-group bridge br0
R-B # set interfaces openvpn vtun0 bridge-group bridge br0
R-B # set interfaces openvpn vtun0 mode site-to-site
R-B # set interfaces openvpn vtun0 remote-host A.A.A.A
R-B # set interfaces openvpn vtun0 shared-secret-key-file /root/key ← R-Aと同じファイル
クラウドブリッジ機能の設定

注:このモードが「拒否」の場合、クラウドブリッジ機能が不完全に動作します。

【関連記事】
ゼロ円でできるインターネットVPN
http://www.atmarkit.co.jp/flinux/special/openvpn/openvpna.html

IPv6による各種設定も可能

 VyattaはIPv4だけでなく、IPv6にも対応しています。IPv6によるルーティングやファイアウォール設定も、以下のとおり、IPv4と同様に行うことができます。

# set interfaces ethernet eth0 address 2001:db8:a::1/64
# set interfaces ethernet eth1 address 2001:db8:b::2/64
# delete system ipv6 disable-forwarding
# set protocols static route6 ::/0 next-hop 2001:db8:a::99/64
# set firewall ipv6-name FWv6 default-action reject
# set firewall ipv6-name FWv6 rule 66 source address 2001:db8:a::0/64
# set firewall ipv6-name FWv6 rule 66 action accept
# set interfaces ethernet eth0 firewall in ipv6-name FWv6
# commit
# save
# run show firewall
--------------------------------------------------------------------------------
IPv6 Firewall "FWv6":

Inactive - Not applied to any interfaces, zones or for content-inspection.

(State Codes: E - Established, I - Invalid, N - New, R - Related)

rule action source destination proto state
---- ------ ------ ----------- ----- -----
666 ACCEPT 2001:db8:a::0/64 ::/0 all any
10000 REJECT ::/0 ::/0 all any

#
IPv6の設定例

 IPv6ルーティングプロトコルとしては、RIPng、BGP4+、OSPF3などもサポートしています。昨今のIPv4アドレス枯渇対策の1つとして、いろいろと実験してみるといいかもしれません。仮想ルータの手軽さはこんなところにも役立ちます。

Vyattaならではの柔軟な拡張性

 VyattaはベースとなるOSにLinuxを採用しています。このため既存ルータとは異なり、さまざまな機能を後から自由に追加することが可能なのです。

 Linuxコマンドを追加するには、まずパッケージレポジトリのコマンドを入力し、パッケージを追加していきます。サーバ管理者の方にはおなじみの方法だと思います。ここではパケットをリアルタイムにモニタリングするvnStatを追加してみました。

$ configure
# set system package repository lenny components main
# set system package repository lenny url http://cdn.debian.net/debian
# set system package repository lenny distribution lenny
# commit
# save
# sudo aptitude update
# sudo apt-get install vnstat

# vnstat -l -i eth0
Monitoring eth0... (press CTRL-C to stop)

rx: 12.91 kB/s 44 p/s tx: 44.25 kB/s 51 p/s</pre>
vnStatを追加

 このようにVyattaは、既存ルータ製品よりも高い柔軟性と拡張性を備えた、オープンソースによるルータソフトウェアであるともいえます。

 昨今のクラウドコンピューティング環境においては、物理的なハードウェアの制約を受けることなく自由に拡張可能な仮想ルータや仮想アプライアンスの存在が欠かせません。ルータやサーバの垣根なく、クラウドコンピューティング環境を自由自在に扱うためのスキルの1つとしてVyattaの扱い方を覚えていくと、これからの運用方法の幅も広がってくるでしょう。

 以上で、Vyattaの基本的な機能と設定方法の紹介を終わります。仮想化が浸透するこれからの時代に向けて、ぜひ試してみてください。ご拝読、誠にありがとうございました。


Vyatta――クラウド時代の仮想ルータ活用術:実践編
  設定投入のおさらい
ルータと同じように設定できるファイアウォール機能
DoS対策機能でリソースを一括保護
クラウドとクラウドをつなぐ「クラウドブリッジ」
IPv6による各種設定も可能
Vyattaならではの柔軟な拡張性
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