設定ファイルと格闘せずにDNSを運用管理
始めてみよう、Amazon Route 53

並河 祐貴
株式会社サイバーエージェント
2011/6/23

Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Route 53」は、API経由でDNSの運用管理を可能にするサービスです。Firefoxのアドオン「R53 Fox」を使って、その導入、設定を行う方法を紹介します(編集部)

 Webサイト運用に欠かせないDNS

 今日、一般に公開されているWebサイトでは、IPアドレスを直接公開するケースはほとんどありません。多くのケースでは、ドメイン名(「google.co.jp」や「yahoo.co.jp」など)を公開し、ユーザーはそのドメイン名を基にブラウザでURLを入力したり、検索したりしてアクセスすることとなります。

 そのためWebサイトの運用に当たり、ドメイン名とIPアドレスをひも付け、管理してくれるDNS(Domain Name System)は欠かせない存在となります。

 会社組織などですでに多数のWebサイトを運営していて、DNSサーバを自前で持っている場合、DNSについては特に考える必要はありません。しかし、Webサイトをこれから公開しようとして独自ドメインを取得したものの、ドメインとIPアドレスの情報を登録するDNSを自分では持っていない場合、どのようにDNSサーバを準備するかを考える必要が出てきます。

 もしDNSがサービスダウンなどで機能しなくなると、そのドメイン名の名前解決ができなくなり、Webサイト全体にアクセスできなくなるといった大規模な障害につながります。そのため通常は別ロケーションで複数台のDNSを稼働させることとなるはずです。

 しかし、上記の規模感でDNSを準備するにはそれなりのコストがかかるため、大きなインフラを持っていない場合は、他所のDNSサーバを間借りすることになります。

 筆者もこれまでさまざまなDNSサービスを利用してきました。一昔前は、業者によっては登録できるレコード数に制限があったり、ある数のレコード数を超えると途端に費用が跳ね上がったり、レコードの編集をする際にはフォームからの申請が必要で、その都度費用や時間がかかったり、Webのインターフェイスが使いづらかったり……と、もちろんサービスによりますが、筆者の探し方が悪かったのか、コストや機能的に満足のいくDNSサービスになかなか出会うことができませんでした。結局(昔の話ですが)自前で、プライマリのみですが、DNSサーバを運用していました。

 DNSをサービスで――Amazon Route 53の特長

 そんな中、2010年の冬にAmazon Web Servicesが新しいサービスを発表しました。名前は「Amazon Route 53」です。「53」という数字を聞いてぴんと来た人もいるのではないでしょうか。

 Amazon Web Servicesといえば、IaaS/PaaSをターゲットとした、最近では最も勢いのある大手パブリッククラウドサービスの1つです。他のIaaSとは異なり、各サービスでAPIを公開し、利用者がそのAPIを操作することで、インフラを制御できるプログラマブルな作りとなっています。

 Amazon Route 53は、このAmazon Web Services(AWS)のサービスの1つとして、他のAWSのサービス同様、API経由でのDNS運用管理が可能となります。Amazon EC2やS3など、AWSの各種サービスとの連携が可能なのはもちろん、単なるDNSサーバとしても振る舞えるため、オンプレミスなリソースや他サービスのサーバのアドレスを指定することも可能です。

図1 従来の自前で立てていたDNSとAmazon Route53の違い(クリックすると拡大します)

 また、執筆時点(2011年5月)では、世界18カ所にまたがりDNSサーバを複数台設置することで、高可用性およびパフォーマンス向上を実現させています。

 AWSの他のサービスとの連携について触れると、IAM機能(AWSアカウントでのユーザー権限管理)と連携することでDNSの管理権限を詳細にコントロールできます。またロードマップ上では、まだ未実装ではありますが、Elastic Load Balancing(EC2インスタンスの上位に配置可能なロードバランサ)のDNS登録連携機能などの実装も予定されています。

 初期設定では、AWS1アカウントあたりのHosted Zone(DNSでいうゾーンファイル)は100個までという制限が設けられていますが、問い合わせフォームから申請を行うことで、制限が緩和されるようです。

 2011年5月25日に、Amazon Route 53のサービスを正式版としてリリースする旨のアナウンスが出されました。正式版はSLAとして100%の可用性が保障されており、違反があった場合にはサービスクレジットが発生します。詳細はAmazon Route 53 SLAを参照してください。

 また、同じタイミングで、ドメインのルートからElastic Load Balancingを参照できるようになったZone Apex対応や、重み付きラウンドロビン(Weighted Round Robin)機能の追加がリリースされています。これらの詳細については、Amazon Web Servicesブログの発表エントリから確認してみてください。

 従量型の課金体系

 Amazon Route 53は、他のAWSのサービス同様、初期費用無料の完全従量課金制のサービスとなっています。つまり使った分だけ料金を支払う、後払いの仕組みが適用されます。

 価格体系は、1つのHosted Zoneが月額1ドルの固定料金となり、それに加えて100万クエリあたり50セントとなっています。また月間10億クエリを越えた場合は、そこから100万クエリあたり25セントという価格体系となります。

 個人的な感覚ですが、各DNSリゾルバで情報がキャッシュされることを考えると、DNSへのクエリ数はサイトのページビュー数よりも少なくなります。仮に1000万ページビュー当たり100万DNSクエリ程度だとすると、毎月数十億ページビューレベルの巨大サイトにでもならない限りは、Amazon Route 53のような外部DNSサービスを使った方がコストメリットが大きいのではないかと考えます。

 

始めてみよう、Amazon Route 53
Webサイト運用に欠かせないDNS
DNSをサービスで――Amazon Route 53の特長
従量型の課金体系
  Amazon Route 53の利用申請
GUIで操作できるFirefoxアドオン「R53 Fox」
  「R53 Fox」でAmazon Route 53を操作
手軽に、簡単に始められるDNS
「Master of IP Network総合インデックス」


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