SSDの性能と特性を把握
クラウドを加速させるSSD技術(前編)
松本直人
仮想化インフラストラクチャ・オペレーターズグループ チェア
さくらインターネット研究所 上級研究員
2012/1/12
サーバ仮想化が普及するにつれて管理者の頭を悩ませているのが、ストレージへのアクセス集中、負荷集中です。高速にデータ処理を行えるSSDを適材適所で活用すれば、この課題に対処できます。(編集部)
SSDが必要とされる理由
図1 共有ストレージの必要性 |
昨今CPUの性能向上は目覚ましく、仮想マシンを多数搭載できるサーバの出荷も増えてきています。企業内のプライベートクラウドやデータセンター事業者らが提供するパブリッククラウドなど、多数の仮想マシンを管理するシステムも増えてきました。
そこで課題になるのがストレージへのアクセス集中です。忘れがちですが、仮想マシンも物理マシンと同じくストレージシステムを使います。
もともとストレージは物理サーバごとに独立していましたが、仮想化により、1つのストレージに皆が相乗りすることになり、負荷が集中する傾向にあります。特に最近の仮想化環境を前提としたサーバは仮想マシンを多数搭載するため、ストレージへのアクセス集中は顕著になっています。
一方、ストレージデバイスに目を向けると、HDDよりも高速なSSD(Solid State Disk)の普及期に入ってきており、企業やデータセンターの中でも利用され始めました。ここでは、普及期に入ったSSDを、よりよいクラウド環境のために使う方法や考え方をまとめていきます。
ストレージ性能の最新動向
HDD、SSD、PCIe-SSDなど、サーバに搭載するストレージデバイスの選択肢は最近増えてきています。
しかし一口にSSDといっても、その性能差はピンからキリまであります。また半導体を使ったSSDはHDDに比べて高速ではあるのですが、容量あたりの単価は高めにならざるを得ないという現状もあります。
これらを加味した上で、適材適所でHDDやSSD、PCIe-SSDを利用することが、今後のクラウド環境の安定性を考えた上でも、とても重要になってきます。アクセス過多になりやすい部分にはSSDを、それほどアクセスがないデータ保存にはHDDを使う流れは、テープバックアップをしていた時代から、それほど変わってはいないと思います。
図2 ストレージを取り巻く技術動向 |
ストレージ性能を図る指標として、よく用いられるのが「IOPS」です。データを1秒あたりにどれだけ読み書きできるかを表す指標で、HDD、SSDで共通に使われています。一般的にHDDは100〜300、SSDでは1万〜100万のIOPSといわれており、PCI Expressバスに直結するPCIe-SSDでは10万から100万IOPSという桁違いの高速処理が実現されています。
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表1 ストレージ性能の比較(出典:ENTERPRISE Storage FORUM.COM The Future of Storage: Devices and Tiering Software (July 28, 2011) |
高速データ処理が行えるSSDではコストも高く、また容量も少なめになっています。こういった高速なSSDの用途としては、書き込み処理が集中するデータベースや読み出し処理が多いファイルサーバなどが挙げられます。クラウド環境で、SSDを使う場合も同じようにデータの書き込み・読み出しが頻繁に行わる仮想マシンや、共有ファイルを中心として使っていくのが良いでしょう。
画面1 一般的なHDDのストレージ性能 |
SSDに関するよくある「間違い」
SSDにもピンからキリまであるとお話しました。ここではよくある間違いの1つについて見ていきましょう。
図3 ストレージ性能の違い(出典:さくらインターネット研究所調査、2011年4月) |
SSDといえば、USBメモリ型のSSDも存在しています。一見するとSSDはすべて「高速!」と思われがちですが、実はそうではありません。USBメモリ型SSDはHDDに比べ、書き込み処理性能が低く、性能面でも期待ができない場合が多くあります。
注意すべきは「SSDだからといって、すべてが高速なわけではない」という点です。このあたりをしっかりと理解し、適材適所でSSDを選ぶことが重要です。
クラウドを加速させるSSD技術
それではSSDを使った具体的な実験を見ていきましょう。
ここでは、Intel Core i7-2600K CPU 3.4GHzのシステムでIntel SSD 320 40GBを5枚とLSI MegaRAID 9260-8iをRAIDして性能測定を行ってみました。SSDもHDDと同じく、RAID構成を組むことで全体容量とストレージ性能を高めることができます。
特に、単体性能が高いSSDを複数用意することで、高速なデータ書き込み・読み出しに対処でき、アプリケーションやデータベース特性に最も合った形でストレージを構成することができます。
写真1 実験の様子 |
この実験では、
- 10Gバイトのファイルを14並列でストレージにシーケンシャルに書き込む処理
- 7Mバイトの小さいファイルを2048並列でストレージにシーケンシャルで書き込む処理
を行っています。確認すべき点は「SSDが単体性能を積み上げた全体性能を出しているか」「性能面での劣化が起こっていないか」です。SSDやRAIDカードの特性によっては、直線的に性能が伸びない懸念もあります。これをしっかりと確認しておくことも、突発的にアクセス過多が懸念されるクラウド環境のストレージでは重要になります。
画面2 Intel SSD 320 x5台ベンチマーク結果 |
また、ストレージ環境が高速になれば、ベンチマークの性能評価方法も異なってきます。HDDを使った環境であれば、それほど気にならなかったディスク負荷を掛けるOS上の処理も、桁違いに早くなったSSD環境ではボトルネックになります。
前述のベンチマークでは、大きなファイルを少ないプロセス数で処理している場合と、小さいファイルを膨大なプロセス数で処理している場合を示しています。前述のベンチマーク結果を見ると、同時書き込みプロセス数が多い処理で、性能がピークを迎えるまでに時間がかかっています。
これは、書き込み処理もCPU処理時間を使うため、同時に大量のプロセスが発生すると各プロセスがCPU処理されるまでの待ち時間が発生し、結果として性能を出し切るまでの立ち上がりが遅くなるためです。HDDを使ったベンチマークでは、そもそもストレージ性能が低く抑えられていたため気にしていなかったボトルネックが、高速化によって見えてきた好例ともいえます。
CPUが速くなればネットワークが、ネットワークが速くなればストレージが、という具合に、ボトルネックのポイントは技術革新が起こるたび、緩やかに移り変わっていきます。
クラウドを加速させるSSD技術(前編) | |
SSDが必要とされる理由 ストレージ性能の最新動向 SSDに関するよくある「間違い」 クラウドを加速させるSSD技術 |
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SSD性能を測るベンチマーク手法 SSDが抱える問題と新技術 |
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