ADSL実装ガイド

デビッド・ギンスバーグ 著
笠野英松 訳・監修
352ページ
発行日:2000年11月30日
価格:4200円(税別)
ISBN4-88135-960-6
翔泳社 発行

出版社の解説ページ


 ブロードバンド・アクセス回線技術の1つであるADSLは、高速なインターネット接続を実現できると期待されながら、さまざまな理由からこれまで導入が進まなかった。しかし、NTT東日本/西日本がフレッツ・ADSLのサービスを2000年12月末より開始するなど、ここにきてようやく本格的な普及に向けて前進し始めた。注目されているのは主に家庭向けインターネット接続サービスの動向だが、今後は企業向けにもT1回線のバックアップや代替などとしてADSLが有効に利用されていくことが予想される

 本書は、このように注目を浴びているADSLの技術について、その規格のレベルではなく、実際に導入・運用する「実装」というレベルで解説している書籍だ。ネットワーク階層でいえば、狭義のADSLは基本的にアナログ・モデムと同様な物理層の技術だが、ADSLを実装するうえでは、その上の階層に関する知識も必要になる。このようにADSLに付随する技術やサービスまで含めた実装に関する話題を中心としているのが、本書の特徴の1つだ。例えば2章では、物理層をADSLとした場合、その上位の階層で用いられるATMやTCP/IPなどについても、ADSLの特徴と絡めながら解説している。また第4章の「サービス」では、PPPやIPSec、各種トンネリング技術、ルーティングなどをADSL上で実装する話題も取り扱っている。

 「実装ガイド」と題するだけあって、実践的な解説が多い。ADSLのハードウェアに触れている第3章では、ADSLによるインターネット接続サービスの構築を想定して、ユーザー/電話局側に設置されるモデムなどの各ハードウェアの概要から実装上の選択肢、注意点、管理・設定方法などを記している。第5章ではさらに実践的になり、実際に市販されている機器をベースに、ADSLモデムやクライアントPC、ルータなどの設定例を紹介している。

 原著は米国を中心とした海外のADSL事情を基に解説しているため、日本のADSLの実情とは異なる部分もある。そのため本書の巻末には、付録として日本でのADSL事情がまとめられている。残念ながらNTTのフレッツ・ADSLに関する情報は、本書の発行前だったため掲載されていないが、2000年9月時点の各社ADSL接続サービスの一覧が収録されている。

 本書の読者対象として最適なのは、ADSL接続サービスの構築を直接担当する技術者だろう。そこまで直接ADSLに関わらない技術者・管理者にとっても、本書を読めば、ADSLによるWAN接続がどのように実現されているのか理解するのに役立つはずだ。記事の終わり

「PC Insider Book Review」

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