本書は、PCのハードウェアについて、その歴史的な経緯を含めながら基礎知識をパーツごとに網羅した本で、PCハードウェアの教科書的な存在となっている。この第5版では、前回の改訂からの2年間で変化したPCハードウェアに基づいて、新しい情報が追加された。基本的にはパーツやインターフェイス、機能ごとに一章ずつページを割いて詳細に解説しており、マザーボードやプロセッサ、メモリなど主要パーツを始め、テープ
ドライブや電源ユニット、ケースといった普段あまり解説を見かけないものについても、漏れなく記述されている。
特徴的なのは、パーツの登場から現在までの歴史にも触れられている点で、PCのハードウェアをより深く理解するのに役立っている。解説内容も、PCのハードウェア解説書によくあるパーツのセットアップや使い方の説明に終始するのではなく、そのパーツが何であるのか、どのように動作するのか、何のために使われるのか、といったことをなるべく詳しく記すことに重点が置かれている。
付属のCD-ROMには、本書の全内容がPDFで収録されているほか、PCで使われている各種コネクタの信号線一覧表、PCハードウェアの情報を得るユーティリティなどが収録されている。感心したのは、旧式のすたれたハードウェアに関する解説の扱いで、本書では最新情報を載せるため、改訂のたびに古いハードウェアの記事が紙面から追い出されているが、付属CD-ROMにはこれらがすべて収録されている。非常に古いハードウェアでも、本書なら知識を得られる可能性は高いわけだ(その必要に迫られる機会は少ないだろうが)。
最新情報の扱いにも優れている点がある。本書を購入すると、オフィシャルWebサイト(http://www.hardwarebible.com/)で本書の全文テキストを参照できるほか、本書が出版されてから著者が更新・追加した記事を閲覧できるのだ(ただし閲覧にはユーザー認証が必要)。たとえば、最新のIDE規格の1つであるシリアルATAの概要も、すでにこのサイトに掲載されていた。出版後に頻繁な更新ができないのは書籍のデメリットの1つだが、このようにWebを利用して読者に最新ハードウェアの情報を提供することで、そのデメリットを解決しようとする著者の姿勢には感心させられる。PCハードウェアの基礎と歴史を学ぶのにはもちろん、最新の情報もある程度把握するのにも役に立つ一冊だ。
本書はPCを扱うIT技術者全般に向いているが、特にPCの経験がまだ浅いIT技術者におすすめしたい。とにかく分量が多いし、英語なのですべて読破するのは大変だが、知りたいパーツに焦点を絞って読み進めれば、PCの経験不足を十分補ってくれるだろう。
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