PC Insider 編集後記 2002年1月
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リコー GR1s
2001年11月の編集後記で紹介したGR1 Dateの後継機。さらに後継機の「GR1v」が販売開始となったため、最終ロットを安価で購入した(GR1の調子が悪くなったというのも理由の1つではあるが、多分に自分に対する言い訳に過ぎない)。GR1との違いは、フィルターとレンズ・フードが装着可能になったことくらいで大きな違いはない。

岐路に立つ無料インターネット・コンテンツ

 景気が悪くなると、購買を喚起するために広告出稿が増え、出版業界は潤う、といわれてきた。確かに、これまでも不景気になっても、出版業界は無縁であるかのように振舞ってきたのだ。特にIT関連出版に関しては、日本のバブル崩壊後にWindows 95が販売されてPCブームに突入、その後もインターネット・ブームなど、業界全体を後押ししてきた。ところが、長引く不況の影響か、ついに雑誌の休刊や出版社自体の倒産が現実のものとして目の前に突きつけられつつある。

 こうした雑誌の休刊などの理由が、単に広告出稿の減少だけとは考えられない。ブロードバンドの普及によって、我々のようなインターネット・コンテンツ・プロバイダが提供している無料のインターネット・コンテンツにアクセス可能になり、全体として発行部数が減ったことも、少なからず影響しているのではないだろうか。実際、@ITのページビューは、ADSLの加入者数の伸びに比例するかのように伸びているし、ほかのコンテンツ・サイトも同様だと思う。そういう意味では、雑誌を休刊へ追い込んでいるのは、我々という見方もできるかもしれない。

 では、インターネット・コンテンツ・プロバイダが安泰なのかというと、必ずしもそうではない。問題は雑誌と同様、広告に依存したビジネス・モデルにある。これまでインターネットのコンテンツは一部を除いて無料が原則であった。一時、Wall Street Journalなどが有料化を試みたものの、読者の激減を招き、すぐに無料になってしまった(そういえば、asahi.comも有料化を検討し、読者アンケートを実施した)。そういった数々の失敗からか、現在のコンテンツ・サービスは、@ITも含めて、広告モデルを基本としている。しかし、このところの米国の景気減速やインターネット・バブルの崩壊から、コンテンツの有料化の動きが再び起きている。もちろん、インターネットの普及により、以前とは状況が変わってきたという面もあるだろう。逆にインターネットの普及が広告モデルだけでは、コンテンツ・サービスを維持できない環境を作り出しているともいえる。

 というのも、多くの人にサービスを提供するには、サーバの増強は不可欠であり、3000万世帯が高速インターネット網に常時接続されるとなると、人気サイトでは現在の数倍から数十倍の能力が必要になってくるはずだ。ここ数年で、それだけのアクセスに耐えるサーバを、広告モデルだけで提供するのは難しい(いくらサーバやネットワークが安価になっても、ブロードバンド普及の伸びにはついていけない。その分、広告収入が増えればいいのだが、そうはうまくいかないようだ)。そのためにも、将来的には広告モデル以外に、読者から購読料を得るようなサービスが出てこなければ、インターネット上でのコンテンツ・ビジネスは広がらないだろう。ここで、誤解のないように述べておくが、@ITが有料化を考えているわけではないし、コンテンツが無料で提供できるように努力し続けるつもりである。

 読者から購読料を得るのは、読者のマインド以外にも問題がある。それは、現状では数百円の課金を行うために、手数料やシステム構築などで、それ以上のお金が必要になることだ(数千円といった単位ならば、クレジット・カードを使うというのが一般的になりつつある)。つまり、ユーザーから100円の購読料を得るのに、200円の経費がかかるような状態なのである。このような状態では、やはり読者からの購読料を得ることはできないだろう。もちろん、こうした問題を解決するため、いろいろな会社が小額課金のモデルを開発しているが、いまのところ「業界標準」といえるようなものはない。

 また、著作権保護も重要だ。Napsterの例を挙げるまでもなく、インターネット上で流通するコンテンツは、簡単に他者に配布できる。特に課金されるようなコンテンツの場合、それが不正にコピーされ、配布されることになると、課金モデルが無意味になってしまう。しかし、著作権保護を重視するあまり、読者(利用者)が不便になるようなものでは困る。両者のバランスをどこでとるのかが、課題となっている。

 2002年は、広告収入の伸びが期待できない中、ブロードバンド・インターネットのさらなる普及が行われることから、インターネット・コンテンツの有料化と著作権保護に関して大きな動きのある年になるかもしれない。当事者でもある身としては、目が離せないし、一読者としても気になる動きだ。

(PC Insiderガイド 小林章彦)
 

  編集後記
■今月のはかない希望:次世代DVD
 こういう仕事をしていると、PCやその周辺機器の購入相談をよく受けるが、最近は書き換え型DVDドライブに関する相談が多い。内蔵タイプの価格が5万円を切って割安感が出たからだろう。筆者自身も、劣化し始めたLDやビデオ・テープの動画像をデジタルに変換して保存すべく、書き換え型DVDドライブを物色している最中だ。しかし、製品選びは難航している。3種類もある書き換え型DVD規格もさることながら、DVD-ROMドライブ/DVDプレーヤとのメディア互換性、付属するライティング・ソフトウェアの出来具合など、調べなければならないことが多すぎる。とてもじゃないが、相談を受けても「コレが一押し!」なんて回答できる状況じゃない。
 現行のDVD製品の難しさに辟易しつつ、標準獲得の争いが始まっている次世代DVDでは、もっとシンプルで製品選びが楽になるように、と心底願わずにはいられない。
(島田)
クリックで拡大写真へ■今月の買い物:ペンギンのコロニー
 本業(?)が忙しく、ほとんど休みを取れない状況になっている。人間このような状況に追い込まれると何らかの逃げ道を探すものだが、私の場合、北陸製菓の「ペンギンズランチビスケット」を買いあさるようになってしまった。周りの人もつられて買ってきてしまったため、右上写真のとおり17インチ・ディスプレイ(もちろん接続先のPCではLinuxが稼働中)の上から、あふれんばかりの数になってしまった。どこかで見たような左端のでかいペンギンは、ぷらっとオンラインから購入したネオジャパン製のTux君である。Tux君のくちばしが黄色いのはペンギンとしてはおかしいんじゃないの? とか、どうでもいいことを考えながら暮らす毎日である。
(澤谷)
■年末にした買い物:グラフィックス・カード
 年末に家族から「買ってきたタイピング・ソフトウェアが真っ当に動かない」というクレームがあった。どうやら表示が上手くいっていないらしい。やはり、いまどきのゲームはMillennium IIではちょっと厳しいか……(個人的には好きなんですけどね>Millennium II) そこで、当初はPentium 4マシン構築時を予定していたグラフィックス・カードの購入を前倒しして、墓参りのついでに秋葉原に探しに行くことにした。通常パーツを購入する前にはWebなどで下調べするのだが、今回は、突発的に思い立ったため下調べはしていない。数軒ショップを回った結果、玄人志向のGF2TI-AGP64BIを購入することにした。理由は比較的安かったように感じたからだ(もちろん、化粧箱に書いてあった「BLUE IMPLUSE」という文字に惹かれなかったといえば嘘になるが)。いまのところ順調に動作しており、このまま問題なく動作してくれることを願うばかりである。
 (2002年はマシントラブルが少ない年であることを祈りつつ 平野)
■先月も考えたこと:ネット上での人間関係
 先月の編集後記では「メル友」について多少やんわりと話したが、今回は完全に否定してしまうのである。
 一般的に、マスコミに大きく取り上げられるまでは、問題は表面化しない。出会い系サイトに対する世間の目は厳しいが、微妙な線に落ち着いている「メル友」。本人の価値観や良識によって可否は分かれる。個人の良識にすべてが委ねられることで、メディアの性質上、家族ですらその関係がどこまで進んでいるのか把握できない(話さない)ことが少なくない。メル友を持つヒトがさらに増えて、「傾向と対策」も常識として取り込まれるようになるために、この国は数々の事件を経験しなければならないのだろうか。薄っぺらい関係を求め、つまらない事件を起こす国民をかかえる日本はさらに軽薄短小と呼ばれるのか?
 友人と話し合ってみると「メル友を持つヒトはみんな寂しいんだよ」と言われ、そこでまた唸ってしまう。根本的な問題解決ははるか遠くにあるのかないのか……
(清水)
 
  PC Insider STAFF
 
編集人 小川 誉久 Art Director 谷原 正則
ガイド(編集長) 小林 章彦 制作 河本 茂美
ガイド(副編集長) 島田 広道    
構成エディタ 元麻布 春男    
編集 澤谷 琢磨    
  平野 謙    
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