PC Insider 編集後記 2002年1月
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岐路に立つ無料インターネット・コンテンツ 景気が悪くなると、購買を喚起するために広告出稿が増え、出版業界は潤う、といわれてきた。確かに、これまでも不景気になっても、出版業界は無縁であるかのように振舞ってきたのだ。特にIT関連出版に関しては、日本のバブル崩壊後にWindows 95が販売されてPCブームに突入、その後もインターネット・ブームなど、業界全体を後押ししてきた。ところが、長引く不況の影響か、ついに雑誌の休刊や出版社自体の倒産が現実のものとして目の前に突きつけられつつある。 こうした雑誌の休刊などの理由が、単に広告出稿の減少だけとは考えられない。ブロードバンドの普及によって、我々のようなインターネット・コンテンツ・プロバイダが提供している無料のインターネット・コンテンツにアクセス可能になり、全体として発行部数が減ったことも、少なからず影響しているのではないだろうか。実際、@ITのページビューは、ADSLの加入者数の伸びに比例するかのように伸びているし、ほかのコンテンツ・サイトも同様だと思う。そういう意味では、雑誌を休刊へ追い込んでいるのは、我々という見方もできるかもしれない。 では、インターネット・コンテンツ・プロバイダが安泰なのかというと、必ずしもそうではない。問題は雑誌と同様、広告に依存したビジネス・モデルにある。これまでインターネットのコンテンツは一部を除いて無料が原則であった。一時、Wall Street Journalなどが有料化を試みたものの、読者の激減を招き、すぐに無料になってしまった(そういえば、asahi.comも有料化を検討し、読者アンケートを実施した)。そういった数々の失敗からか、現在のコンテンツ・サービスは、@ITも含めて、広告モデルを基本としている。しかし、このところの米国の景気減速やインターネット・バブルの崩壊から、コンテンツの有料化の動きが再び起きている。もちろん、インターネットの普及により、以前とは状況が変わってきたという面もあるだろう。逆にインターネットの普及が広告モデルだけでは、コンテンツ・サービスを維持できない環境を作り出しているともいえる。 というのも、多くの人にサービスを提供するには、サーバの増強は不可欠であり、3000万世帯が高速インターネット網に常時接続されるとなると、人気サイトでは現在の数倍から数十倍の能力が必要になってくるはずだ。ここ数年で、それだけのアクセスに耐えるサーバを、広告モデルだけで提供するのは難しい(いくらサーバやネットワークが安価になっても、ブロードバンド普及の伸びにはついていけない。その分、広告収入が増えればいいのだが、そうはうまくいかないようだ)。そのためにも、将来的には広告モデル以外に、読者から購読料を得るようなサービスが出てこなければ、インターネット上でのコンテンツ・ビジネスは広がらないだろう。ここで、誤解のないように述べておくが、@ITが有料化を考えているわけではないし、コンテンツが無料で提供できるように努力し続けるつもりである。 読者から購読料を得るのは、読者のマインド以外にも問題がある。それは、現状では数百円の課金を行うために、手数料やシステム構築などで、それ以上のお金が必要になることだ(数千円といった単位ならば、クレジット・カードを使うというのが一般的になりつつある)。つまり、ユーザーから100円の購読料を得るのに、200円の経費がかかるような状態なのである。このような状態では、やはり読者からの購読料を得ることはできないだろう。もちろん、こうした問題を解決するため、いろいろな会社が小額課金のモデルを開発しているが、いまのところ「業界標準」といえるようなものはない。 また、著作権保護も重要だ。Napsterの例を挙げるまでもなく、インターネット上で流通するコンテンツは、簡単に他者に配布できる。特に課金されるようなコンテンツの場合、それが不正にコピーされ、配布されることになると、課金モデルが無意味になってしまう。しかし、著作権保護を重視するあまり、読者(利用者)が不便になるようなものでは困る。両者のバランスをどこでとるのかが、課題となっている。 2002年は、広告収入の伸びが期待できない中、ブロードバンド・インターネットのさらなる普及が行われることから、インターネット・コンテンツの有料化と著作権保護に関して大きな動きのある年になるかもしれない。当事者でもある身としては、目が離せないし、一読者としても気になる動きだ。
(PC Insiderガイド 小林章彦) |
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