CD-Rの信頼性を高めるテクノロジ「Just Link」を検証する

1. Just Linkはどのようにして書き込みエラーを回避するのか


デジタルアドバンテージ/澤谷琢磨
2000/11/10

バッファ・アンダーラン・エラーはなぜ起きる

 CD-Rドライブの最大の弱点といわれる、バッファ・アンダーランはなぜ起こるのか? ここで簡単におさらいしておこう。

 CD-Rは、ドライブの記録ピックアップからレーザーを照射して、データ記録層に光学的なピットを生成することでデータを記録する。このような方式を採用することで、既存のCD-ROMとの互換性を実現している。CD-Rは、光磁気ディスク(MO)やハードディスクなどと異なり、スパイラル状の1本の物理トラックにデータを記録する。そして、ひとまとまりのデータを記録するには、レーザーを連続して照射し続けなければならず、PCからのデータの到着が遅れると、書き込み作業が中断してしまい、ギャップ(= 未書き込みの部分)が発生してしまう(つまり、書き込み作業が中断すると、中断した場所から続けて書き込むということができなかった)。問題は、このようなギャップが発生すると、そのCD-Rメディア全体が読み出し不能になってしまうことだ(このようなメディアをCD-ROMドライブに挿入しても、正しいCD-ROMメディアとして認識されない)。

 CD-Rドライブでは、PCからのデータを一時的にデータ・バッファ(メモリ)に蓄えておき、ディスクの回転に合わせてデータを順次取り出して、レーザーを照射するという構造になっている。しかし、データ・バッファの容量には限りがあるため、データ転送が一定時間以上途切れると、バッファが空になってしまい、書き込みエラーが発生してしまう。これがバッファ・アンダーランと呼ばれる、これまでのCD-R/RWドライブでは避けることができなかった問題だ。

バッファ・アンダーランが発生してしまう原因
CD-Rドライブへのデータ転送が何らかの理由により遅れ、ドライブ内のバッファのデータが空になってしまうと、CD-Rメディアへの書き込みが途切れてしまう。従来のCD-Rドライブの場合、こうした状況になると、途切れたところから続きを書き込むことができず、そのCD-RメディアはCD-ROMドライブで読み出せない不良メディアとなってしまう。

 PCからのデータ転送に滞りがなければ、バッファ・アンダーランは発生しないのだが、Windowsのようなマルチタスク環境では、さまざまなプログラムが非同期的にさまざまな処理を行っており、あらゆる場面で一定のデータ転送を保証することは難しい。書き込み用データの準備とCD-Rへの書き込みを同時に行うオンザフライ書き込みでは、特に性能の低いPCでバッファ・アンダーランが発生しやすかった。このようなときにはオンザフライ書き込みをやめ、書き込み用のイメージをあらかじめハードディスクに作成してからCD-Rに書き込む必要がある。PCの処理速度の向上によって、オンザフライ書き込みでも、以前に比べればバッファ・アンダーランが発生しにくくはなったのは事実だが、一方ではCD-Rの書き込み速度も向上しており(原稿執筆時点の最速のドライブでは、12倍速書き込みが可能)、今でもバッファ・アンダーランの危険とは隣り合わせにある。

 現在、CD-Rドライブが搭載するデータ・バッファの容量は2Mbytes程度が主流だが、12倍速書き込みの場合、単純計算で毎秒約1800Kbytes(実際にはブロック単位でデータ転送するため、消費されるバッファ容量はこれより大きくなる)のデータを書き込むため、バッファには約1秒分のデータしか留保できない計算になる。つまり、何らかの問題によって、CD-Rドライブへのデータ転送が1秒以上滞ると、バッファが空になり、バッファ・アンダーランが発生することになるわけだ。

Just Linkはどのようにしてバッファ・アンダーラン・エラーを回避するのか

 リコーによって開発されたJust Linkは、このバッファ・アンダーランによるエラーを防止する技術である。Just Link搭載のCD-R/RWドライブは、バッファ・メモリの状態を常に監視し、PCからのデータの到着が遅れ、バッファ内に蓄えられたデータ量が一定水準を下回ると、そこで書き込みをいったん停止する。

 書き込みを停止する際には、停止直前の状態(アドレス位置)を維持し、書き込みの再開に備える。PCからのデータ転送が正常に戻り、データ・バッファに十分なデータが蓄えられると、書き込み停止時の情報から書き込みを開始すべき位置を割り出し、そこから書き込みを再開する。このとき、停止前のピットと再開後のピットの継ぎ目(リンク)は、12倍速書き込み時で長さ2μm以下に抑えられる。リコーによれば、この程度の継ぎ目は、読み出し品質に影響を与えないという。

CD-R上の記録ピットとJust Link
Just Linkでは、2μm以下の継ぎ目で書き込みが再開できる。この未記録状態の間隔は、CD-ROMの規格内であり、CD-ROMドライブが搭載するエラー訂正機能により、訂正可能な範囲に収まっている。

 なお、三洋電機の開発したBURN-Proofも、Just Linkと同様の手法でバッファ・アンダーランを回避する技術だ。BURN-ProofとJust Linkの動作原理は、両社の発表資料を比較する限り、ほとんど同じである。限られた資料内から読み取れる明らかな相違点は、Just Link作用時に発生するギャップ長が2μm以下なのに対し、BURN-Proofでは45μm以下(ともに12倍速時)としている点だ。CD-Rの規格上、許される未記録状態の長さは最大100μmであり、両者とも現状では、規格上なんら問題がない。しかし少なくとも現時点では、CD-Rの書き込み速度がさらに向上することを考えると、BURN-ProofよりもJust Linkの方が許容範囲が大きい。

関連リンク
リコー Just Link ホームページ
三洋電機 BURN-Proof ホームページ
オレンジフォーラム CD-R/RWの規格団体「オレンジフォーラム」のホームページ


 INDEX

  [実験]CD-Rの信頼性を大幅に高めるテクノロジ「Just Link」を検証する
  1.Just Linkはどのようにして書き込みエラーを回避するのか
    2.バッファ・アンダーランはもはや過去のものに
    3.Just Link搭載のMP9120AとはどのようなCD-R/RWドライブなのか
 
「PC Insiderの実験」


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