IT Market Trend

第7回 UNIXサーバが伸びた2000年の日本国内サーバ市場

日本ガートナー・グループ株式会社
データクエスト・アナリスト部門サーバ・システム担当アナリスト

亦賀忠明
2001/06/16


2000年の日本国内サーバ市場規模は、出荷台数で38万4665台、出荷金額で8916億円だった。対前年比では台数29.1%増、金額13.2%増と、台数/金額ともに好調に推移した。特にUNIXサーバは台数で49.5%増となり5万台を超えている。さらに金額でも37.8%増と大きく拡大し、サーバ市場全体でトップのセグメントに踊り出た。PCサーバも台数で31.8%増と拡大し初めて30万台を突破した。本稿では2000年の国内サーバ市場について、主要なセグメントの動向を簡単に解説する。

UNIXサーバが大きく伸びた2000年

 まず、サーバ・カテゴリごとに出荷台数と出荷金額を見ていこう。1999年に続き、UNIXサーバとPCサーバの伸びがどのように推移したのか気になるところだ。

日本国内のサーバ市場推移(出荷台数) 出典:ガートナー・データクエスト(2001年2月)
出荷台数でPCサーバが大きく伸びていることが分かる。
 
日本国内のサーバ市場推移(出荷金額) 出典:ガートナー・データクエスト(2001年2月)
年々減りつづけてきた出荷金額だが、1999年から2000年にかけては、インターネットの普及にともなうハイエンド・サーバ需要によって大きく伸びていることが分かる。

サーバ市場のセグメント構成の変化(出荷台数) 出典:ガートナー・データクエスト(2001年2月)
出荷台数ベースで見ると、PCサーバが全体の80%以上を占めていることが分かる。

サーバ市場のセグメント構成の変化(出荷金額) 出典:ガートナー・データクエスト(2001年2月)
出荷金額ベースとなると、出荷台数で80%以上を占めていたPCサーバは、UNIXサーバやメインフレームに逆転されてしまう。これは、PCサーバが1台当たりの価格が安いエントリ・サーバを中心に需要を伸ばしてきたためと思われる。

■スーパー・コンピュータ市場
 スーパー・コンピュータの2000年の出荷台数は、1999年から16.4%増え、433台となっている。出荷金額では、22.6%増の546億円であった。大学や研究機関などの文教関連での導入や、無停止型MPP(Massively Parallel Processing:超並列処理)システムの需要が好調であったため、台数、金額ともに堅調に推移した。

■メインフレーム市場
 メインフレームの2000年の出荷台数は16.0%減の2251台、出荷金額は0.7%増の2891億円であった。台数が減少したのに対して、金額がほぼ前年と等しくなったのは、メインフレームの中でも大型機に需要が偏ったことによる。中小型メインフレームは、RISC/UNIXサーバやPCサーバといったオープン系サーバへ需要がシフトしたため、大きく減少している。そのことが、出荷台数の減少に表れたと思われる。

 メインフレーム市場では、ベンダによって出荷傾向に差異が見られる。日本IBMやユニシスといった外資系ベンダは、出荷台数/金額ともに前年を上回っている。富士通の場合、出荷台数は減少したものの、出荷金額はほぼ同一であった。一方、日本電気や日立製作所は、出荷台数/金額ともに大きく減少している。2001年では、どのように推移するのか気になるところだ。

■オフコン市場
  オフコンは、出荷台数で37.9%減の1万1723台、出荷金額で26.8%減の448億円であった。2000年以降、日本電気はオフコンの出荷を停止している。日立製作所も2001年3月期で出荷はなくなった模様である。こうした影響が数字に現れたといえる。サーバ市場がオープン・システムへシフトするなか、オフコン市場は、急速に存在感を失いつつある。

■UNIXサーバ市場
 UNIXサーバは、出荷台数で49.5%増の5万4466台、出荷金額で37.8%増の3012億円であった。インターネットのバックエンド・サーバとしてUNIXサーバの需要が急速に伸びた結果、高い成長を見せている。PCサーバと比較すると分かるように、出荷台数ではPCサーバの1/6と、大きく水をあけられているものの、出荷金額はPCサーバの1.5倍と、むしろ高くなっている。これは、価格が高いハイエンド製品を中心に売れていることを示している。

 1999年は、製品ラインアップをいち早く強化していたサン・マイクロシステムズに需要が集中していた。2000年に入り、各社ともにUNIXサーバ製品を強化したことで、結果として日本HP、日本IBM、富士通など、主要UNIXサーバ・ベンダの出荷台数はそれぞれ好調であった。製品ラインアップを、自社製品から、日本HPからのOEM製品へシフトしつつある日本電気や、日立製作所の出荷は減少した。

■PCサーバ市場
  PCサーバは、出荷台数で31.8%増の31万5792台、出荷金額で14.7%増の2020億円であった。PCサーバでは、ラックマウント型サーバが出荷を牽引した。特に1Uサイズの薄型サーバの市場投入が進んだことで、出荷台数が伸びている。

 ベンダ別では、デルコンピュータや日本IBMが大きく成長したのが目立つ。日本電気や富士通は、すでに出荷ボリュームが大きく、成長率は10%を下回った。富士通が振るわないのは、ラックマウント型サーバの投入の遅れが響いたようだ。

2001年のサーバ市場に向けた動き

 2000年のサーバ市場は、上述のようになった。2001年の市場を考えるとき、「Linux」と「Itanium」の2つは見逃せないキーワードとなるだろう。

■シェアを伸ばすLinux
  PCサーバ市場におけるLinuxのシェアは、出荷台数ベースで1999年の0.7%から、2000年には5.2%へと拡大した。サーバ市場全体では、1999年の0.6%であったシェアは、2000年に4.3%となった。全体的に見るとまだまだ低いLinuxのシェアであるが、その中でもベンダ間でのばらつきがみられる。継続的に大規模な投資を行っている日本IBMや、サポートを強化したデルコンピュータなどでは、Linuxのシェアは他社に比べ高くなっている。現在、各ベンダともに、Linuxについてはさらに積極的な姿勢をみせてきており、今後の勢力図はまだまだ流動的である。2001年は、さらにLinuxのシェアが伸びる可能性が高い。

■やっと本格的出荷が始まったItaniumサーバ
  Itanium Processor Family(IPF)サーバは、2001年5月に本格的な出荷が開始されたため、2000年の統計には含まれていない。しかし、UNIXサーバが中心のハイエンド・サーバ市場を大きく変える可能性を秘めた製品であることは間違いない。Intel製のプロセッサとはいえ、まったく新しいアーキテクチャを採用したものであり、性能・信頼性ともに未知数の部分が多い。IPFサーバが市場で受け入れられるのか、またこの市場に将来性はあるのか、といった点については別の機会に改めて検証したい。記事の終わり 

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