キーワード無線アクセス インターネット 2000/05/22 |
無線接続のインターネット接続サービス(無線アクセス)には、加入者系無線アクセス システム(Fixed Wireless Access:FWA)と無線LAN型の大きく分けて2種類がある。このうち単に無線アクセスといった場合には、加入者系無線アクセス システムを指すことが多い。
加入者系無線アクセス システム
加入者系無線アクセス システムとは、家庭や企業と電気通信事業者の交換局や有線回線との間を無線で接続して、固定回線として使用するアクセス システムの総称である。つまり、移動体通信とは異なり、家庭や企業といった固定した場所とインターネット プロバイダのアクセス ポイント間を無線を使って接続するというものだ。
加入者系無線アクセス システムは、通信手段に無線を利用するため、インターネット接続を実現するにあたり、ケーブル敷設の必要がない。そのため、ケーブルの敷設工事費用が不要になるばかりでなく、導入までの期間を大幅に短縮できるという大きな利点がある。一方、直進性の高い波長の短い電波を使うため、無線基地局との間に大きなビルなどがあると接続できないという欠点がある。また、無線設備がまだ高価であるため、個人ユーザーが利用できるほど安価なサービスの提供は当面困難と言われている。
加入者系無線アクセス システムでは、準ミリ波帯・ミリ波帯周波数の22GHz、26GHz、38GHzを利用する。接続方式は、無線基地局に対し1つの無線アクセスしかない対向方式(Point to Point:P−P)と、無線基地局を複数の無線アクセスで共有する一対多方式(Point to MultiPoint:P−MP)の2種類がある。P−Pでは半径約4km/最大156Mbits/s、P−MPでは半径約1km/最大10Mbits/sでのデータ転送が実現可能という。つまり、P−Pの接続ならば、ファイバを利用した専用線並のサービスが受けられることになる。
加入者系無線アクセス システムの接続構成 |
加入者系無線アクセス システムには、対向方式(P−P)と一対多方式(P−MP)の2種類がある。P−Pは主に企業向け、P−MPは主にSOHO、家庭向けのサービスに位置付けられている。 |
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加入者系無線アクセス システムに割り当てられている周波数 |
さらに、PHSで利用している1.9GHz帯(準マイクロ波帯)を利用するものもあるが、上述の加入者系無線アクセス システムとは区別して、1.9GHz帯加入者系無線アクセス システムとか、PHS-WLL(PHS Wireless Local Loop)とか呼ばれる。
加入者系無線アクセス システムは、すでに日本テレコムやケーディディ・ウィンスター(KDDWinStar)などが企業向けにサービスを開始している。また、ソニーも「bit-drive」というサービス名で加入者系無線アクセス システムを2000年5月より東京、横浜、名古屋、大阪、京都、福岡で開始しており、順次サービス エリアを拡大する予定だという。各社とも、1.5Mbits/sのアクセス速度で月額10万円から15万円程度の接続料金である。この金額は、同じ1.5Mbits/sのアクセス速度を提供するNTTコミュニケーションズのOCNスタンダード(35万円/月)の半分以下の料金だ。
東京通信ネットワーク(TTNet)も1999年5月に無線免許を取得し、2000年初頭から実験サービスを提供する予定であったが、残念ながら5月時点でサービス開始のアナウンスはない。また、発表当初は個人ユーザーもターゲットにしていたが、その後の報道によれば他社と同様、主に企業向けのサービスとなるようだ。
無線LAN
無線LANは、2.4GHz帯(2471〜2497MHz)の周波数を使う主に家庭/オフィス内向けの通信用として開発された規格である。現在、11Mbits/sのデータ転送速度を実現するIEEE 802.11bが規格化されている。すでに、ネットワーク機器ベンダ各社から無線LAN用のアクセス ポイントとクライアント用の無線カードが販売されており、面倒な配線のいらない手軽な家庭/オフィス内の通信手段として注目を集めている。
東京電力、ソフトバンク、マイクロソフトの3社が中心となって設立し、「米国並みの低料金」を実現するということで話題を呼んだ「スピードネット」が採用するのでは、と言われているのが無線LANを応用した無線アクセスだ。
無線LANを無線アクセスに応用するメリットは、無線局の免許が不要であること、無線機器が比較的低価格なこと、11Mbits/sでの通信プロトコルが規格化されており、比較的高速な接続が可能なことなどが挙げられる。その一方で、2.4GHzという周波数帯は電子レンジなども使用しており、これらのノイズによって実効データ転送性能が発揮できないという問題もある。そのため、加入者系無線アクセス システムのような安定したサービスを提供するのは難しいと言われている。
また、無線LANに使用可能な周波数としては、2.4GHz帯とともに、19GHz帯(19.485〜19.565GHz)も割り当てられており、ビル間をまたぐ企業内LANなどに利用されている。ただし、19GHz帯は無線免許が必要なことや、無線機器がまだ高価なことから普及には至っていない。
さらに、2000年中ごろには60GHz(ミリ波帯)の、2000年末には5GHz(マイクロ波帯:5.15〜5.25GHz帯)の、それぞれの周波数の割り当てが開始されることが決まっている。60GHzの場合、小電力での無線システムでは免許が不要だが、無線インターネット アクセスを実現するには免許が必要になるようだ。また、60GHzという周波数は、酸素によって電波が減衰し、鋭い指向性を持つという特徴があるため、狭い範囲を指定したサービスの展開が行える。逆に言えば、広範囲な無線インターネット アクセス サービスを提供するには、多くの無線基地局が必要になることを意味する。もう一方の5GHz帯は、20Mbits/s以上のデータ転送速度を実現した、屋内で使用される無線LAN向けに割り当てられる。そのため、屋外の無線基地局との接続については考慮されておらず、無線アクセスには利用できないようだ。
2.4GHz帯の無線LANを応用した無線アクセスは、現在のところ大阪府富田林市でマリナネットがすでにサービスを行っているほか、ネットワークスが全国でサービス展開を行うことを予定している。
今後、2.4GHz帯以外の周波数帯を利用した無線LANによる無線アクセスについても、無線機器が低価格化することで普及が進むことが予想される。加入者系無線アクセス システムと合わせて、次世代のインターネット アクセス システムとして注目しておく必要があるだろう。
「PC Insider キーワード」 |
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