元麻布春男の視点
製品ブランド戦略を変更するコンパックの勝算
元麻布春男
2001/05/25
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5月22日、コンパックは同社のビジネス向けPCのブランドを「Evo(イーヴォ)」に変更すると発表した(コンパックの「新ブランドに関するニュースリリース」)。このEvoというブランド名は、「Evolution(進化)」にちなんだもので、全世界で使われることになる。これまで同社は、ビジネス向けデスクトップPCにはDeskpro、ノートPCにはArmadaというブランド名を用いてきたが、両ブランドとも廃止され、今後はEvoに統一されることになる。同日、日本HPもワークステーションのブランドを、これまでの「Kayak(カヤック)」や「hp visualizeパーソナル・ワークステーション」から「hp workstations」に変更している(日本HPの「Xeon搭載ワークステーションに関するニュースリリース」)。日本HPの担当者によれば、「企業向けクライアントPCのブランド名も変更予定」ということなので、ブランド変更はコンパックに限ったことではないわけだ。両社とも米国の景気が落ち込みつつある中、「ブランド変更で心機一転、巻き返しを図ろう」ということなのだろう。
バリュー・ノートPCのN150に注目
Armadaというブランド名が採用されたのは比較的最近のこと(といっても1996年だから、すでに5年近い歴史がある)だが、Deskproはそれどころではない長い歴史を持つ。いってみれば、コンパック=Deskproというイメージさえある伝統のブランドだ。その伝統のブランドを捨てるのだから、相当の決断に違いない。
新ブランドの発表と同時に発表された新製品は、ノートPC2機種とIntel Xeon搭載のワークステーションが2機種、米国ではほかにシン・クライアント(Windows-based terminal)も発表されている。いずれもEvoのブランド・カラーであるカーボンとシルバーの2色をまとっている。
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コストパフォーマンスが高いEvo Notebook N150 |
14.1型のXGA表示可能なTFT液晶パネルを採用し、14万9800円を実現したコストパフォーマンスの高い機種。今回の発表で最も魅力的だったのが、このN150であるというのは、少々寂しい。
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今回発表された4機種中、筆者が注目したのはバリュー・ライン(ある程度の性能を持つ売れ筋製品)のノートPCである「Evo Notebook N150」だ。位置付けとしては、Armada 110の後継になると思われる。N150は、ほぼ同等のスペックのArmada 110に対して、本体の厚みを42mmから33mmと、1cm近く薄くすると同時に、価格の方も14%近く削減している。14万9800円からというN150の価格は、直販メーカーに十分対抗可能な水準といってよいだろう。しかも、14万9800円というエントリ・モデルの価格設定は、米国での価格(1449ドル)に対しても割安感がある。N150が日本で企画されたシステムである、ということの「意地」がうかがえる(これが、すべてのモデルに当てはまるわけではないのが残念ではあるが)。
N150は、バリュー・ラインのノートPCとはいえ、スペック的に大きく見劣りするものではない。14.1型のTFT液晶パネル(XGA)は、このクラスとしてはフル・サイズといってよい大きさだし、バッテリもバリュー・ノートPCで採用の多いニッケル水素バッテリではなくリチウムイオン・バッテリが採用されている。バリュー・ラインであることをうかがわせるのは、チップセットがIntel製ではなくVIA Technologies製であることと、グラフィックス・チップが比較的マイナーなTrident Cyber Blade i1であることだろうか。
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液晶パネルの裏側に無線LANが装備可能なEvo Notebook N400c |
N400cは、液晶パネルの裏側部分に「マルチポート」と呼ぶ独自の拡張機能を装備しており、ここにBluetoothや無線LANインターフェイスが搭載できる。
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もう1機種のノートPCである「Evo Notebook N400c」は、Armada M300の後継と思われるB5薄型ノートPC。液晶パネルの裏側に、Bluetoothもしくは無線LANモジュールが取り付け可能なマルチポートを備えている点が新機軸である。ただし、無線LANモジュールなどが標準装備されているわけではない。ほかにキーボード・ピッチが19mmまで拡大されている、といった改良はあるものの、重量や厚みという点ではM300とそれほど変わらない。プロセッサの動作クロックが引き上げられたこと、標準搭載メモリ容量が増えたこともあり、M300に対し価格的な割安感がないことも、インパクトを弱めているように思う。ちなみに、こちらのチップセットはIntel 440BX、グラフィックス・チップはATI Mobility M1となっている。
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Intel Xeon搭載のEvo Workstation W8000 |
Intel XeonにIntel 860を組み合わせたワークステーション。W8000とW6000の2機種をラインアップする。さらに下位の機種では、引き続き従来のProfessional Workstationブランドが使われているが、モデル・チェンジにともないEvoブランドに変更されていくものと思われる。
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残る2機種のワークステーションは、発表日の前日にIntelから発表されたばかりのIntel Xeonプロセッサを採用したもの。いずれもIntel 860チップセットをベースにしたものだが、上位モデルのW8000はMRH-R(メモリ・リピータ・ハブ)を併用し、8つのRIMMソケットで、最大4Gbytesのメモリを実装可能としている(同時に2枚ずつRIMMを差す必要がある)。これに対し、下位モデルのW6000は最大メモリ実装量が2Gbytesまで(4ソケット)となっている(同時に2枚ずつRIMMを差す必要があるのはW8000と同じ)。また、W8000のみが64bit/66MHz PCIバスをサポートする、といった違いがある。発表会場で内部を見ることができたW8000のマザーボードは、コンパックの自社設計ということだが、基本的にはIntelのデザイン仕様(Design Guideline)に準拠したもののようだ。
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フラッグシップ・モデルの登場に期待したい
というわけで、新しいブランドEvoを立ち上げたコンパックだが、Deskproブランドを継承するデスクトップPCの発表がなかったせいか、もう1つインパクトが弱かったような気がする。一番インパクトを感じたのが、低価格のノートPC「N150」というのが、かつてPCのBMWと称された同社を知る身には寂しい限り。もちろん、高価で高品質なPCを求めるような時代ではない、という批判は甘んじて受けるのだが、「高価でもいいから、他社では絶対に作れないフラッグシップ・モデルが1モデルでも見たかった」というのが正直な感想だ。
実は会場には、「Dual Worlds」と呼ぶ、モバイル/デスクトップ兼用型PCのプロトタイプが飾られていた。Deskpro/Armadaという老舗ブランドをやめるという一大事なのだから、ぜひこうした新しいコンセプトのPCを製品として紹介して欲しかった。どうも、売れなくなったらデザインや名前を変えてみる、という安易な戦略にも感じる(こうした小手先の変更で売れるようになった商品はほとんどないのだが)。好調なデルコンピュータの独走にならないように、ぜひともがんばっていただきたい。
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