落雷などを除けば、不意に停電が起きるということは、いまの日本ではほとんどない。それでも電源の配線をいじったり、コンセントを差したりしたとたん、別のコンセントが外れてPCの電源が落ちた、といった苦い経験を持つ人も多いだろう。また、消費電力の大きな家電製品のスイッチをオンにしたとたんに、ブレーカーが落ちたりすることも多い。いずれの場合も、すぐに配線やブレーカーを戻せば電源は復旧する。そういった短い時間の電源ダウンを防止するのに役立つのが無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)だ。これまでUPSというと、サーバやネットワーク機器など、企業にとって重要なシステムに導入するものと思われていたが、最近では、クライアントPC向けに3万〜5万円程度の安価な製品もラインナップされている。こうしたクライアントPC向けのUPSを選ぶポイントを紹介しよう。UPSの選択ポイントとしては、給電方式、給電容量、バックアップ時間、自動シャットダウン機能のサポートが挙げられる。
まず、給電方式だが、これには常時商用給電方式、常時インバータ給電方式、ライン・インタラクティブ方式の3種類がある。
方式 |
仕組み |
メリット |
デメリット |
常時商用給電方式 |
平常時は入力(商用電源)の交流電力をそのまま出力し、停電時にはバッテリからの駆動電力に切り替える方式 |
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平常時は商用電源の電圧変動がそのまま出力に伝わる |
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切り替え時の瞬断時間が10msec程度と長め(ただし、最近の機器に内蔵の電源ユニットなら、ほとんど問題にはならない) |
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出力波形が通常の正弦波以外(矩形波など)の製品が多い |
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常時インバータ給電方式 |
入力の電力を常にコンバータ回路によって直流に整流してバッテリに充電しつつ、それをインバータ回路によって交流電力に変換して出力する方式 |
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入力にかかわらず出力電圧が一定 |
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無瞬断での切り替えが可能 |
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ノイズ・カット機能を装備 |
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出力波形が一般的な正弦波
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ライン・インタラクティブ方式 |
常時商用給電方式に対して、バッテリとインバータ回路を常に接続しておいてバッテリの充電/放電を行う方式 |
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比較的安価 |
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通常運転中に入力電圧が変動しても、出力電圧をある程度は補正できる |
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出力波形が一般的な正弦波
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UPSの給電方式 |
出力される電力の品質などを考えると常時インバータ給電方式が望ましいが、このタイプは高価なうえ、電源容量が大きなものしかなく、クライアントPC向きとはいえない。予算があるのならばライン・インタラクティブ方式、一般的には常時商用給電方式を選べばよい。
次に給電容量だが、これは接続するPCとディスプレイの消費電力の「W(ワット)」値から、「VA(ボルトアンペア)」値を求める必要がある。これは、
消費電力(VA) = 消費電力(W)÷力率
の式で求める。ここの「力率(りきりつ)」とは電力の使用効率のことで、コンピュータ機器の力率は通常0.6〜0.7となる。例えば、消費電力が250WのデスクトップPCと、130WのCRTディスプレイをUPSでバックアップするのに必要な電源容量を求めるには、
(250W+130W)÷0.6 = 633VA
となり、UPSのカタログを見て容量が380Wと633VAの両方を超えた製品から選ぶことになる。
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APC JapanのクライアントPC向けUPS「BK Office」 |
250VA/150Wと出力が小さいため、省スペース・デスクトップPC+液晶ディスプレイの組み合わせに適している。出力が小さい分、価格は安く1万9800円である。
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またバックアップ時間は、カタログに消費電力(VAとW)と目安の時間の関係が表示されているので、それを参考に自分の用途に合ったものを選択する(UPS製品が想定している最大出力よりも、接続している機器の消費電力が低ければ、それだけバックアップ時間は長くなる)。最低限、停電発生時にPCをシャットダウンできる時間は必要だろう。最低でも5分以上のバックアップが可能な製品を選んだ方が無難だ。もちろん、バックアップ時間が長い、つまりUPSのバッテリ容量が大きなものは、価格が高くなるので、自分のPCがシャットダウンできるまでの時間を計測して、それに数分を足す程度にしたい。
最後に自動シャットダウン機能だが、これは停電が発生した際、自動的にPC側に信号を送り、専用のユーティリティ・ソフトウェアを使ってシャットダウンを実行するもので、できればこの機能を持つ製品を選びたい。ただ、やはり価格は若干高めとなるので、予算や用途に応じて選べばよいだろう。
またUPSに内蔵されているバッテリは消耗品であり、数年で交換が必要となる。なるべくバッテリ交換が容易な製品を選んだ方がよいだろう。
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