[Hardware]

スマートメディアの取り扱いには要注意

デジタルアドバンテージ
2000/05/22

 デジタル カメラを始めとするメモリ カードを用いるデジタル機器は、ここ数年で急速に普及した。最近では、音楽データをメモリ カードに記録して利用する携帯型の半導体オーディオ プレーヤも登場し、製品の種類も増えている。メモリ カードは、フラッシュ メモリのような半導体メモリ チップを内蔵した小さなカード型の記憶メディアであり、持ち歩ける小型のデジタル機器とPCなどとの間で、手軽に数Mbytes〜数百Mbytesというサイズのデータをやり取りするのが主な用途だ。今後は携帯電話などさまざまな民生機器にもメモリ カードが搭載される予定で、その成長が大きく見込まれることから、数多くのメーカーが参入している。それに伴い、メモリ カードの種類も急速に増えてきており、今後どのメモリ カード規格が主流になるのか、まだはっきりしていないのが現状だ。ただ、普及度という点では、デジタル カメラ普及初期から存在していたスマート メディアとコンパクト フラッシュが、現時点でのメモリ カード市場では大きなシェアを占めているようだ。店頭でも、この2種類のメモリ カードは比較的入手しやすい。

 コンパクト フラッシュがPCカードに似た仕様を採用し、メモリ以外の入出力機器も実装できる柔軟性を持っているのに対し、スマート メディアはメモリに特化して軽量化・低コスト化を図ったのが特徴だ。下の写真で分かるように、スマート メディアの厚みは1mmを切る極薄である。何枚も持ち歩く場合でも場所をとらないのは便利だろう。

スマート メディアの外観

これは容量32Mbytesで電源電圧3.3Vのスマート メディアだ。表面積は37mm×45mmでコンパクト フラッシュとあまり変わらないが、写真右下のとおり、厚さは0.76mmと非常に薄い。カード表面に見える金色の部分が、電気信号と電力を伝えるための金属端子である。

 スマート メディアに内蔵されているのは基本的にメモリ チップのみで、PCなどほかの機器とデータをやり取りするための制御回路は含まれていない(コンパクト フラッシュには内蔵されている)。そのため、スマート メディアを読み書きする側の機器(カード リーダーなど)に制御回路が必要になるものの、スマート メディア自体の製造コスト低下には役立っているし、小型・薄型化にも貢献している。

 このようなメリットのあるスマート メディアだが、インターネットのWebサイトやNetNewsでは、スマート メディアに記録した内容が壊れて読み出せなくなったり、スマート メディアそのものが壊れて使えなくなったりしたユーザーの報告をよく見かける。その数は、明らかにコンパクト フラッシュより多い。

注意その1: 過度に力を加えない

 こうしたトラブル原因の1つとして、極薄というスマート メディアの特徴が弱点にもなっていることが考えられる。スマート メディアに触ってみると、意外にそのパッケージが柔らかいことに気付く。指でつまんで力を加えていくと、容易に変形させることができる。このプラスチック パッケージの中には半導体チップ(フラッシュ メモリ)が封入されているので、外部からの力がパッケージを介してチップにまで伝わったら、チップの破壊や内部の信号線の切断といった故障につながりかねない。機器のソケットからスマート メディアを取り出す際に指でつまむときには、力を加えすぎないよう注意したい。またスマート メディアをスロットから外して持ち運ぶときには、頑丈な収納ケースを用意してその中に保管する、といった対策も必要だ。

注意その2: 金属端子を汚さない

 次に注意したいのは、電気信号をやり取りする金属端子の取り扱いだ。メモリ カードは、読み書きする機器のソケットに挿入して(つまり金属端子同士を接触させて)電気信号を伝えることでデータをやり取りする。スマート メディアの場合、電気信号と電力を伝える金属端子は、その表面に露出している(上の写真を参照)。また金属端子部分の面積は、スマート メディアの全表面積にくらべて結構広い。さらに、ほかのメモリ カードのように、金属端子は凹んでおらず、周りを囲むプラスチック部分と同じ高さに配置されている。この極薄形状では、このように金属端子を配置するしかないのは、しかたのないことだろう。

 とはいえ、以上のような理由からスマート メディアをつまむ際に指で金属端子に触れてしまいやすいのは確かだ。指が触れると、人体の油脂が汚れとして金属端子に付着してしまい、最悪の場合はソケットに挿入したときに金属端子同士の接触不良が生じてしまう可能性がある。こうなると電気信号は正しく伝わらないため、データの読み書きは失敗してしまう。

 対策としては、ソケットに対する挿抜時は指で金属端子に触れないよう注意すること。スマート メディアのラベル部分をつまめばよいだろう(もちろん、傷めないように優しく軽くつまむ)。また未使用時には、スマート メディア購入時に付属しているソフト ケースに収納するように心がける。もし汚れが付着したら、眼鏡を拭く布などで端子部分を拭いて汚れを取り去るとよいだろう。ただし、後述する静電気が生じないよう、拭く前には布を放電し、また何度も強くこすったりしないほうがよい。

注意その3: 静電気を近づけない

 静電気は、スマート メディアだけではなくメモリ カード全般に共通する問題だ。静電気は半導体を故障させる原因の1つで、メモリ カードに内蔵のフラッシュ メモリも静電気で壊れることがある。現在の半導体にはさまざまな静電気対策が施されているものの、完全に静電気による破壊を防ぐことはできない。したがって対策としては、なるべくメモリ カードに静電気を近づけないことだ。人間の体にも静電気は帯電するので、ソケットからメモリ カードを取り出す際には、いったん金属製の机やラックなどに指を触れ、静電気を金属に逃がしてからメモリ カードに触れるようにする。また持ち運ぶ際には、メモリ カードとほかの物体が擦れ合うと静電気が生じやすいので、メモリ カードを固定して運ぶ。さらに静電防止加工された袋を用意して、ソケットから取り出したら必ずその袋に入れておくとよいだろう。

 なお、スマート メディアの規格を策定しているSSFDCフォーラム のWebサイトには、「SmartMediaお助け隊」というページがある。ここではボランティアでスマート メディア関連のトラブルを解決する手助けをしてくれる。もしスマート メディアが読めないなどのトラブルが生じたら、ここを訪ねてみるのもよいだろう。ただし、あくまでもボランティア活動であることを忘れないように。記事の終わり

  関連リンク
SSFDCフォーラム
SSFDC(Solid State Floppy Disk Card)フォーラムのホームページ
SSFDCフォーラム
SmartMediaお助け隊のページ

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