[Hardware]

容量8.4Gbytes以上のIDEハードディスクを搭載しても、すべての容量が認識できない障害を直すには?

澤谷琢磨
2000/06/28

 古いPCでは、IDEハードディスクを20Gbytesといった大容量の製品と交換しても、PC起動後なぜか8.4Gbytesの容量しか認識されない場合がある。つい3〜4年前のPCでは、搭載する3.5インチIDEハードディスクの容量は、1Gbytes〜6Gbytesが主流であったため、こういった障害は表面化しなかった。しかし、現在のIDEハードディスクの主流は10Gbytes〜40Gbytesとなっており、ディスクを交換して始めて、搭載したIDEハードディスクの全容量を認識しないという問題に気付く例が増えている。場合によっては、20GbytesのIDEハードディスクを搭載したにもかかわらず、2Gbytes分しか認識しないといったこともある。

BIOSの8.4Gbytesの壁

 この問題は、PCのディスクBIOSが原因となって発生する。PCの電源が投入されてから、OSにハードウェアの制御権が与えられるまで、ハードディスクへのアクセスはディスクBIOS(たいていはPCのマザーボード上にあるBIOS ROMに含まれている)の提供するInt13H(エントリ番号13Hのソフトウェア割り込み)ファンクションを用いて行われる。

 Int13Hファンクションは、CHSというシリンダ(Cylinder)、ヘッド(Head)、セクタ(Sector)の各パラメータを用いて、ハードディスクのセクタ アドレス(記録円盤上でデータの格納されている位置)を指定する。シリンダには10ビット(最大1024)、ヘッドには8ビット(最大255)、セクタには6ビット(最大63)の値がそれぞれ割り当てられている(CHSの割り当てを変更し、シリンダを16383、ヘッドを16、セクタを63としているものもある。この場合も最大値は同じ)。ディスクBIOSは、これらの数字を使ってハードディスク上のデータの位置を指定している。1セクタは512bytesなので、1024×255×63×512≒8.4Gbytes(1Gbytes=1,000,000,000bytes)となり、ディスクBIOSを用いてアクセス可能なIDEハードディスクの最大容量が決まる。この問題は、「8.4Gbytesの壁(barrier)」として知られている。

 この問題に対処するため、1997年以降にリリースされたディスクBIOSでは、Int13Hの改良版である拡張Int 13Hファンクションをサポートするようになった。拡張Int13HファンクションはCHS方式ではなく、64bitのリニア アドレスを用いるLBA(Logical Block Addressing)方式でディスクをアクセスする。これにより、アクセス可能な領域は、2の64乗X512bytesとなり、9444732965T(テラ)bytesという非常に大きな容量のディスクまで対応できるようになった。LBA方式では、ハードディスクのセクタ アドレスを通し番号で指定するので、変則的なCHSパラメータを使わないシンプルなディスク アクセスを行えるという効果もある。拡張Int13Hファンクションの導入で、ディスクBIOS経由でアクセスできるハードディスク容量の制限は大幅に緩和された。

 1998年以降に生産されたPCならば、この拡張Int13Hファンクションを備えているので、8.4Gbytesの壁の問題は発生しない。しかし、1997年以前に製造されたPCに8.4Gbytes以上のIDEハードディスクを取り付けると、8.4Gbytesの壁の制限により、ハードディスクの全容量を使用できない可能性が高い。

マザーボードBIOSのアップデートを試みる

 8.4Gbytesの壁の問題に遭遇した場合には、まずはPCのBIOSアップデートによって解決する方法が考えられる。マザーボード ベンダがはっきりしている自作機やショップ ブランドPCを使用しているなら、マザーボード ベンダのホームページからBIOSアップデートファイルをダウンロードすることができる。アップデートされたBIOSが拡張Int13Hファンクションをサポートしていれば、8.4Gbytesの壁の問題を解決することができる。大手PCベンダ製のPCでもBIOSアップデートが提供されていることがあるので、各ベンダのサポート ホームページなどで探してみるとよい(リソースセンターのPCベンダマザーボード ベンダを参照のこと)。

 この方法の欠点は、BIOSアップデート作業に失敗すると、最悪の場合、PCを起動不可能な状態にしてしまう危険性があることだ。またPCベンダによっては、1997年製造などの旧式のPCについては、サポート ホームページを用意していないこともある。運良く8.4Gbytesの壁に対応したBIOSを入手できればよいが、そうでなければ別の方法を探す必要がある。

専用ユーティリティで8.4Gbytesの壁を回避する方法

 ソフトウェアでディスクBIOSの制限を回避する方法もある。海外のIDEハードディスク ベンダは、PCを起動してOSをロードさせる直前に、デフォルトのディスクBIOSを拡張Int13Hに対応したディスクBIOSと差し替えるユーティリティを無償配布している(Ontrack製のDiskManagerをベースとしたものが多い)。たとえば、Quantumの場合は、サポート・ホームページで「Ontrack Disk Manager」を配布している。この方法では、追加投資を必要としないうえ、BIOSアップデートをしなくてもよいというメリットがある。ただこれらのユーティリティは、DOS/Windows 9xでの使用を前提に開発されているため、それ以外のOSで使うのは、おすすめはできない。ユーティリティの入手とインストールの方法については、各ハードディスク ベンダのホームページを参照していただきたい(リソース センターのストレージ機器ベンダを参照のこと)。

IDEインターフェイス カードの導入による解決法

 マザーボードのBIOSアップデートが入手できない場合には、最新のIDEインターフェイス カードを導入することで、8.4Gbytesの壁の問題を解決することもできる。IDEインターフェイス カードとは、カード上にIDEホスト コントローラ チップと2チャンネルのIDEインターフェイス、そしてディスクBIOS ROMを備えたPCIカードだ。Promise TechnologyのUltra 100やABIT ComputerのHotRod 100Proといったカードが販売されている。IDEインターフェイス カードには、専用のディスクBIOSが搭載されており、これにハードディスクを接続すれば、PCのマザーボード側のディスクBIOSではなく、PCIカード上のディスクBIOSを用いてアクセスできるようになる。最新のIDEインターフェイス カード上のディスクBIOSは、拡張Int13Hファンクションをサポートしているので、8.4Gbytesの壁の問題を解決することができる。

 この方法は、IDEハードディスクの購入時に、IDEインターフェイス カード分の追加投資が必要となるが、BIOSアップデートなどに比べればはるかに簡単なうえ、IDEインターフェイス カード上のIDEホストコントローラは1997年以前の製品と比べると、ハードディスクの書き込み性能が優れているなど、メリットもある。 UltraDMA/100対応の製品の価格は、7000円〜1万円程度である。現在販売されているIDEハードディスクと組み合わせる限り、UltraDMA/66対応のIDEインターフェイス カードを用いても、UltraDMA/100対応カードと性能差はほとんどないので、価格が安ければUltraDMA/66対応カードを購入するのもよい。記事の終わり

Promise Ultra66

Promise Technologyは、IDEインターフェイス カード市場で特に知名度の高いベンダの1つだ。Promise Ultra66は、UltraDMA/66に対応したPCIカードだ。すでに、UltraDMA/100に対応したPromise Ultra100も発表されている。

ABIT HotRod 66

マザーボード ベンダとして有名なABIT Computerも、IDEインターフェイス カードを販売している。写真は前モデルのHotRod66だが、すでにUltraDMA/100に対応した後継製品のHotRod 100Proが発表されている。

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Ultra66の製品情報
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